高級腕時計は経費にできる?リスクや経費にできるケースとは

高級腕時計は経費にできる?リスクや経費にできるケースとは経費で節税する
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経営者となると高級出時計を身に着ける機会もあり、経費にならないかと考える人もいるのではないでしょうか。どうやら、ロレックスやオメガなどの時計は、基本的に損金不算入であり、認められるケースはごく限られるようです。今回は高級腕時計を経費計上するリスクや、どんな場合なら計上できるのかなどについてご紹介します。

高級腕時計は経費計上可能?

高級腕時計の経費化は例外を除き困難

高級腕時計の購入費用は、原則として経費にはなりません。法人も個人事業主も経費として認められませんし、仮に経費として処理しても法人は損金不算入、個人事業主は必要経費として認められないでしょう。

そもそも経費として認められるには、事業に必要な支出であることが前提です。高級腕時計を着用することで印象や見た目はよくなるかもしれません。ですが、基本的に腕時計はメガネやカバンなどと同じく、個人的に身に着けるアイテムです。仕事に必要と証明できない限りは、趣味嗜好品とみなされ、経費にはできないでしょう。

芸能人、ホステス・ホストなどでも経費に認められないケースがほとんど

なお、高級腕時計を経費にできないのは、芸能人やモデル、ホステスやホストなどでも同じです。高年収の人であれば、高級腕時計を身に着けるのも仕事のうちであり、経費にできるのではないかと考えるかもしれません。しかし、どんな職業の人も、年収が高いといって経費にできるわけではありません。

例えば芸能人の場合、高級腕時計をつけているから仕事を依頼するとは考えにくいです。時計メーカーの宣伝の仕事をする場合、メーカーから贈与されることはあるかもしれませんが、一般的には一時的に借りるだけです。

また、舞台用に特殊な腕時計が必要であれば、その腕時計は経費として認められますが、通常舞台で高級腕時計を身に着けることはないでしょう。やはり高級腕時計は経費としては認められないのがほとんどと考えられます。

ホステスやホストも、高級腕時計を身に着けているからといって売上が通常の何倍にもなることはないでしょう。ホステスやホストの場合、ドレスやスーツは職業柄必要であり経費になることがありますが、腕時計はあくまで装飾品であり、経費としては認められません。

美術品としての減価償却も難しい

経営者の中には、高級出時計を美術品として飾れば経費にできるのではないか、と考える人もいるかもしれませんが、難しいでしょう。

確かに会社が美術品を購入する場合、100万円未満であれば減価償却することが認められています。加えて腕時計は美術品としての価値も高いです。

ただ、本当に美術品として高級腕時計を購入する場合は、エントランスや応接室など、誰でも見られるところに飾る必要があります。多くの人は、高級腕時計を飾るだけでなく、多少なりとも身に着けるでしょう。自分が身に着ける以上は、美術品にはなりません。

税務調査のときだけ飾って、普段は身に着けようと考える人もいるかもしれませんが、税務調査では隠し通せない可能性が高いです。高級腕時計については、美術品として減価償却することもできないと考えておくほうがよいでしょう。

高級腕時計を経費にできるケース

「事業に必要」な高級腕時計なら経費にできる

高級腕時計を経費にするのは難しいですが、事業内容によっては経費にできることがあります。ビジネスとして売上をあげるために必要なら、経費にできるからです。実店舗やネットショップなどでビジネスとして高級腕時計を仕入れ、販売している事業者であれば経費として認められる可能性があるでしょう。

実店舗やネットショップで高級腕時計を仕入れる事業としては、時計ショップやアパレル業、オークションなど転売ビジネスの場合が考えられます。

ただし、あくまで販売を目的とし、商品として仕入れる場合です。個人的に身に着ける腕時計については、いくら事業で時計を仕入れるからといって、経費にするのは避けたほうが無難です。

また、最近はSNSやブログ、アフィリエイトサイト等で高級腕時計を紹介し、紹介料や広告費を得るケースもあります。高級腕時計を紹介することで売上につながっているといえなくもないですが、非常にグレーです。税務調査で否認されるリスクを考えると、経費として計上するのは避けたほうがよいでしょう。

経費にできる・できないのポイントは「売上につながるかどうか」

高級腕時計を経費にできるか、できないかの判断は、業務に関係があるか、売上につながるかどうかがポイントです。

経費は業務に関する費用であることが大前提です。単純に見た目や印象のためだけに高級腕時計を購入した場合は、業務にも売上アップにも必要なものとはいえないため、経費として計上できません。

一方、高級腕時計を扱う事業を行っていて、仕入れた高級腕時計により売上の上昇につながるものであれば、経費として認めてもらいやすいです。

高級腕時計を無理やり経費にするリスク

税務調査で否認される

高級腕時計が経費として認められるケースは限られており、通常は難しいのが現実です。だからといって無理やり経費にするのもおすすめできません。無理に経費に入れても、個人事業主・法人ともに、税務調査が入ればほぼ間違いなく否認されるからです。

会社経営をしていると、知り合いの経営者の中に高級腕時計を経費にしているケースを聞くこともあるでしょう。その経営者は税務調査が入ったとき、「仕事の時しか身に着けずプライベートでは一切使っていない」と言い訳をするかもしれません。「プライベート用の時計は別で持っているので仕事用と私用を分けている」というのは、高級腕時計を経費にする場合のよくある言い訳のひとつです。

しかし、税務調査官は、個人的に身に着けるもの、趣味嗜好性の高いものは、基本的に認めない傾向があります。通常、事業の売上に高級腕時計が貢献する理由について、論理的で明確な事情を説明することは難しいでしょう。仮に経費計上したとしても、経営者個人の私物とみなされ、否認される可能性が非常に高いと考えられます。

支払った税金を納め直すことになる

高級腕時計の費用を経費に計上し、税務調査で否認された場合は、損金不算入となり、会社が支払う法人税の税額が変わってきます。経費として申告していた高級腕時計の金額は、本来は利益だったことになるため、法人税額を納め直すことになるでしょう。

高級腕時計の持ち主個人の税金が増える

税務調査で否認されると、会社の法人税だけでなく、個人の税金も納め直す必要が出てきます。否認された高級時計の金額分、個人の収入が多くなったことになるため、納める税額も増えるからです。

例えば経営者が高級腕時計を購入し、経費計上したものの税務調査で否認されたとします。否認された高級腕時計は経営者個人の所有とみなされ、会社側は損金不算入になります。且つ、否認された高級腕時計の金額分は、経営者個人の収入(役員賞与)として扱われ、経営者の所得税や社会保険料は増えることになります。

なお、個人の収入は役員賞与として扱われることが多いです。給与としての役員報酬は、毎月同金額がルールで、高級腕時計の分上回った役員報酬は、経費に認められないからです。

経営者としては高級腕時計を買っただけで、実際に収入(役員賞与)を得るわけではないのに、余分な税金を支払うことになります。節税目的で経費計上しても、税金を支払うことになれば本末転倒です。リスクを冒すより、最初から経費に入れないほうが無難でしょう。

悪質と判断されるとペナルティも

税務調査では、悪質と判断されると否認されるだけでなく追徴課税などのペナルティを与えられる可能性もあります。リスクを考えれば、安易に経費を増やそうと、高級腕時計の費用を計上するのは避けるべきです。

もちろん、税務調査は自分の会社には入らないだろう、と考えるのもやめましょう。確かに調査が入らなければ経費として処理できるかもしれませんが、どんな会社でも調査が入る可能性はあります。バレなければ大丈夫、という考えで会社を経営していると、いざというとき立ち行かなくなるかもしれません。適切な会計処理をすることが結果的に会社を守ることにもなるでしょう。

時計を扱う事業でない限り高級腕時計を経費にするのは困難

リスクが高い高級腕時計より他の経費で節税対策を

品物によって、数十万から数百万までさまざまな高級腕時計ですが、経費にするのは難しいのが実情です。経費は事業に必要な支出であり、売上アップに貢献することが前提だからです。高級腕時計を仕入れ、販売する一部の事業を除き、自分自身が身に着けるための高級腕時計は、経費として認められないでしょう。

仮に経費計上しても税務調査が入れば否認されるのがほぼ確実です。否認されれば、税金の納め直しが必要です。最悪はペナルティを課せられるリスクもあるため、安易な経費化は避けたいところです。もし、節税目的であれば、リスクが高い高級腕時計を経費にするより効果的な対策法はあるはずです。顧問税理士とも相談しながら、無理な経費化はせず、適正な会計処理を心掛けましょう。

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