健康診断で節税する!経費にするポイントと注意点

健康診断で節税する!経費にするポイントと注意点経費で節税する
この記事は約8分で読めます。

多くの会社で実施されている健康診断は、経費にして節税に活用することが可能です。ただ、経費として認めてもらうには、いくつか要件があり注意点もあります。今回はこの記事で、健康診断で節税するための要件や、経費にするポイントなどについてご紹介します。

健康診断で節税!経費に認められる要件とは

健康診断は本来、個人で受けるものであり、経費にすることはできません。しかし、いくつかの要件を満たすと、福利厚生費として経費計上でき、節税にも活用できます。まずは健康診断を経費として計上するための要件について押さえておきましょう。

社員全員が健康診断を受ければ福利厚生費として計上可能

健康診断で節税をするための要件の1つ目は、健康診断の対象者が全社員であることです。社長や役員を含め社員全員が等しく健康診断を受ける状態であれば、福利厚生費として計上できるでしょう。

年齢制限を設けて受診する人数を限定するのはOK

社員全員といっても、年齢によって制限を設けることは認められています。例えば35歳以上の社員は全員健康診断を受けることにしてもかまいません。

健康診断にかかる費用が常識的な範囲であること

健康診断で節税をするには、費用が高額にならないようにする必要もあります。「健診の内容が社員の健康管理上において必要とされる程度のものであり、常識的な範囲内のものであること」とする要件もあるからです。

健康診断の費用を会社が直接医療機関に支払うこと

健康診断にかかる費用は、会社が医療機関に対し、直接支払うことも節税につなげる要件のひとつです。例えば会社が、健康診断を受ける社員に現金を渡し、社員がその現金を支払った場合は福利厚生費として認められません。

健康診断で節税をする場合の注意点

健康診断を経費とするには、いくつか注意点があります。ポイントを押さえて、節税に活用しましょう。

特定の社員だけ健康診断を受けても経費にならない

特定の社員のみが健康診断を受けた場合は、経費計上できず、節税にもなりません。例えば、社長だけ、あるいは役員だけ受診する場合や、一部の社員だけが受診する場合などです。健康診断を経費にするには、全社員、もしくは一定年齢以上の社員全員を対象にしなければならないからです。

役員のみが健康診断を受けた場合は課税対象に

社長や役員など、社内で特定の地位にある人だけが健康診断を受診し、さらに健康診断の費用を会社が負担した場合は、個人の所得税・住民税の課税対象となります。給与もしくは賞与(役員賞与)としてみなされるからです。経費に計上して節税するどころか、課税対象となるので気を付けましょう

社員が健康診断の費用を支払うと経費には認められない

健康診断費用の支払いについても、社員が費用を支払うと経費として認められず、かえって課税対象となるので注意が必要です。例えば社員が健診費用を立て替え、会社があとで社員に現金を支給した場合です。

また、会社から社員に現金を渡し、社員がその現金で健康診断費用を支払った場合な場合も、経費として認められないでしょう。もちろん、社員個人が自主的に受けた健康診断費用についても、経費にはできません。

就業規則に健康診断の項目を設ける

健康診断を経費として認められやすくするには、就業規則に項目を設けるのが効果的です。

例えば「採用の際、あるいは年〇回の健康診断を受診しなければならない」などとします。35歳以上や40歳以上など年齢によって区分を設ける場合も、就業規則に記載するようにしましょう。

具体的な書き方については、厚生労働省が「モデル就業規則」を公開しています。参考にするとよいでしょう。
参考サイト:厚生労働省ホームページ:モデル就業規則について「第10章 安全衛生及び災害補償」

就業規則に項目を設ける以外に、健康診断の申し込み用紙や領収書、健診結果の種類なども、5年間保管するようにしましょう。

基準を明確にすることで経費として認められやすくする

就業規則については、社員が10人未満の会社の場合、作成が義務付けられているわけではありません。社員が10人以上の会社でも、就業規則を作成しなければ労働基準法が適用されるため、絶対に必要というわけではありません。

しかし、作成しておくほうが、税務調査が入った際に、健康診断について社内に明確なルールがあることを示しやすくなるでしょう。税務調査では、健康診断について就業規則等に記載があるかどうかをチェックすることが多いからです。

年齢で区分を設ける場合も、就業規則に記載することで基準が明確になります。就業規則に記載しない場合に比べて、税務調査で否認や給与課税対象とみなされるリスクを減らせるでしょう。

ただちに作成するのが難しい場合は、取り急ぎ健康診断についての規定をまとめたり、安全衛生管理に関する規定の一部に記載したりするのもひとつの手段です。

例えば、健康診断の種類や年齢区分、金額などの基本的な事項、健康診断受診時の有給休暇取得の有無、会社指定の診療機関などの内容についてまとめましょう。健康診断の種類については、一般的に「雇入れ時健康診断」、「定期健康診断」のほか、深夜業従事者に対する「特定健康診断」などがあります。

健康診断のルール整備は会社にとってもプラスとなるはず

健康診断制度を整備することは、会社にとってもプラスの効果が期待できます。健康診断制度があることで、社員に「会社に大事にされている」と感じてもらえれば、仕事のモチベーションにつながることもあると考えられるからです。

そもそも健康診断は、労働安全衛生法第66条において、会社には健康診断を実施する義務、社員には健康診断を受診する義務があると定められています。さらに、社会保険に加入する法人の場合、一般的な健康診断であれば健診費用が3割負担ですみます。

社員の健康を守り、会社の成長につなげるためにも、福利厚生の一環として健康診断制度を設けるメリットはあるでしょう。

一人会社の社長の健康診断は経費として認められないこともある

一人会社の場合は、健康診断にかかる費用を福利厚生費として認められないことがあります。基本的に経営者や役員など事業主については、福利厚生費の概念がないからです。必ずしも認められないわけではありませんが、社長一人の会社や、社長と妻の二人だけで会社を経営している場合は、健康診断費用を経費にすることは難しいこともあるでしょう。

一人会社でも、就業規則や健康診断に関する規定を作成しておくと、健康診断費用を福利厚生費として認めてもらいやすくなります。将来的に社員を雇うことを想定し、客観的に妥当と思われる健康診断に関するルールを作成しましょう。

作成した就業規則等については、税務署の窓口に持参し、相談するのもひとつです。相談したからといって100%経費として認められるようになるかは分かりません。ですが、記載内容に問題があれば指摘してもらえる可能性もあるので、一度問い合わせてみるのもいいかもしれません。

人間ドッグも健康診断同様、節税に活用できる?

社員全員対象・常識の範囲なら認められる可能性も

健康診断には、一般的な病気を大まかにチェックする健康診断以外に、より精密な検査を行う人間ドッグを受診する方法もあります。健康診断に比べ人間ドッグのほうが割高ですが、基本的には人間ドッグも、社員全員が対象であり、常識の範囲の額であれば経費として認められ、節税につなげることも可能と考えられます。

対象者については、40歳以上は人間ドッグによる健康診断、40歳未満は一般的な健康診断を受けると年齢に応じた区分を設けてもOKです。

金額の目安としては、2~3日程度の人間ドッグの費用であれば、福利厚生費として認められることが多い傾向にあります。一方、著しく高額の場合は、経費として認められない可能性が高いです。例えばPET検査のように、費用が10万円程度必要になることが多い検査については、「高額」とみなされ、経費として認められない可能性があります。

役員と従業員の格差で経費として認められなかった判例も

人間ドッグの費用については、過去に経費として認められなかったケースもあります。例えば下記の事例において、国税不服審判所は会社の主張を退ける裁決を出しています。

役員の人間ドック費用が給与になるか争われた事例(平成28年9月20日)
  • 役員のみが人間ドッグを受診し、従業員は通常の健康診断のみを受診した
  • 役員は1人につき約35万円の費用だったのに対し、従業員は1人につき約18,000円の費用だった

経費として認められなかった理由は、役員と従業員とで受診内容や費用に格差があったことなどとされています。

また、福利厚生費の原則は公平性であり、特定の人物を対象にするものは、その人に給与を与えたものとみなされます。
このケースでは、役員のみに支払われた人間ドックの費用が、役員賞与に該当するという、税務当局の主張が認められています。

ただ、同じ福利厚生でも旅費日当のように、従業員と役員に格差を設けることが認められるケースもあります。
健康診断についても、役員と従業員とで格差があっても認められた事例もあるようなので、100%税務調査で否認されるというわけではないようですが。ですが、基本的には、社員全員同じ内容、費用の健康診断を受けるほうがいいのではないかと考えられます。

健康診断を福利厚生費にして節税と健康管理を両立

健康診断は社員全員が対象であり、健診にかかる費用が常識的な範囲であれば、経費(福利厚生費)として認められやすく、節税することも可能です。ただし、年齢で区切ることはできても、特定の社員のみを対象とする場合や、費用が高額の場合などは経費として認められないので注意しましょう。

健康診断を経費とするには、就業規則に項目を設けたり、健康診断に関する規定を作成したりするほうが無難と考えられます。制度を設けて実施するほうが、実施の基準はぶれにくくなり、税務調査が入った際も、明確なルールがあると示しやすくなるからです。

節税面だけでなく、健康診断の実施は社員の健康を維持し、モチベーションをアップさせる効果も期待できます。会社の発展にもプラスに働く可能性があるでしょう。節税対策のひとつとして、また会社の円滑な運営のためにも、健康診断を上手に活用してみてはいかがでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました