商品券や金券は節税対策に使える?経費にする注意点

商品券や金券は節税対策に使える?経費にする注意点経費で節税する
この記事は約8分で読めます。

ちょっとしたお礼に使うこともある商品券や金券ですが、事業の経費として節税に活用することはできるのでしょうか。調べてみると、手軽さと裏腹に、商品券や金券の経費化はリスクや注意点も多いようです。今回は、節税対策に使うのが難しい理由や、会計処理をするときに気を付けたいポイントなどについてご紹介します

商品券や金券は経費化しても節税には不向き

結論から言うと、商品券や金券を節税対策に活用するのは不向きと考えられます。経費にできるケースがないわけではありませんが、経費計上するには注意点も多いです。事業とプライベートとの区別をしっかりつけておかないと、税務調査で指摘される可能性は非常に高く、最悪は罪に問われるリスクもあります。

商品券や金券の経費活用が節税に不向きな理由

実質的な「お金」として見られやすい

商品券や金券が節税対策として不向きな理由は、換金性があることです。買い物をするときにお金と同じように使えますし、金券ショップに行けば現金に交換することも可能です。

そもそも経費は事業に関係する費用、売上向上につながるような支出であることが前提です。しかし商品券や金券は実質的に「現金」と同じものとしてみなされます。購入したからといって経費化し、節税に活用することはできないでしょう。

最悪、脱税とみなされるリスクも

商品券や金券は、大量に購入すると脱税を疑われる危険性もあります。二重経費による脱税が可能だからです。二重経費とは、実際に支払っていないお金を経費にすることです。

二重経費による脱税の例

  1. 1万円の商品券を購入し、領収書をもらって経費計上する
  2. 購入した商品券を使って、1万円分の買い物をし、領収書をもらって経費計上する

ほかにも、贈答品として商品券を購入し、相手に渡さず金券ショップで換金して、別の支払いに充てて経費計上することも二重経費になります。

商品券や金券が厳しい目で見られるのは、実際に脱税が行われるケースがあるからです。購入金額が大きくなるほど、税務調査で否認される確率も高くなるでしょう。

私的使用や転売による現金化がしやすい

商品券や金券が脱税を疑われる一因には、私的使用や転売によって現金化がしやすいことも影響しています。贈答品として購入し、経費計上をした上で、相手に渡さずそのまま換金し、個人の財布に入れて脱税することもできるからです。

事業に関係ない人へ商品券・金券を渡すのもNG

事業と関係がない人に対して渡した場合や、プライベートの贈り物として使用した商品券・金券も、経費計上するのは危険です。ビジネス上でプラスに働かなければ、経費には認められないからです。

景品として渡す場合も「給料」とみなされる可能性が高い

会社によっては商品券や金券を、忘年会や飲み会を開いた際の景品として配布することもあるかもしれません。ですが、社員に渡す商品券や金券の購入費用は経費計上できません。商品券や金券は換金性があるため、「現物支給(給与、賞与)」に該当するとみなされるからです。ちなみに、商品券や金券以外に、カタログギフトも同様です。

さらに、現物支給に該当するということは、課税対象になります。商品券や金券の金額分、個人の給与や賞与が増えたことになり、所得税や住民税が課せられることになるでしょう。節税どころか、納税額が増える可能性も出てくるでしょう。

なお、社員をねぎらうために、忘年会や飲み会、社員旅行を開くこと自体は、福利厚生費として経費にできる可能性があります。ただ、商品券や金券は、「実質的に現金として取り扱えるもの」になるため、経費にできないので注意しましょう。

商品券や金券が経費として認められるケース

取引先への贈答品として渡す場合

節税対策には難しい商品券や金券ですが、経費に計上できるケースもあります。ひとつは取引先への贈答品として渡す場合です。例えば、新規顧客を紹介してもらったお礼として渡す場合や、日ごろの感謝を表す目的であれば、経費として活用できるでしょう。名目は「交際費」とするのが一般的です。

商品券・金券の購入費用が経費として認められる例

  • 取引先や顧客へお礼の品物として渡す場合
  • 取引先や顧客へお中元やお歳暮として贈る場合

ただし、いくらお中元やお歳暮が経費として認められやすいからといって、取引先以外への贈答分を経費に紛れ込ませるのはNGです。

前述の通り、プライベートで渡す商品券や金券は、経費として認められません。1件くらい分からないだろうと思われるかもしれませんが、一般的に会社でお中元やお歳暮を贈るときは業者を利用することが多く、送付先リストも残ります。税務調査が入ればすぐにわかってしまうので、取引先以外の贈答品まで「交際費」として経費にするのは非常に危険です。

キャンペーンで配布する場合

サービス業では販売促進を目的として、キャンペーンをすることもあるでしょう。商品券や金券は、キャンペーンの一環で顧客にプレゼントする場合も経費計上が可能です。例えば新規契約者に商品券のプレゼントをする場合や、購入者に金券のプレゼントをするなどです。商品券や金券が、商品やサービスの販売促進に必要と証明できれば、経費として認められやすいでしょう。

商品券や金券を経費に計上するタイミング

商品券・金券を使用した時

商品券や金券は、使用したときに初めて経費に計上できます。購入しただけでは経費計上できないので注意しましょう。

ただし、当然ながら、商品券や金券を使って何か購入する場合も、プライベートで商品券や金券を使用した場合は経費に計上することができません。あくまで経費として認められるには、売上に関係する支出でなければならないからです。

商品券・金券を相手に渡した時

贈答品やキャンペーンで商品券や金券を購入した場合は、相手に渡したときが経費に計上できるタイミングです。渡さず社内に保管している分については経費になりません。

渡した相手により、交際費や広告宣伝費など費目が変わる

商品券や金券は、渡す相手によって会計処理が異なります。取引先や顧客への贈答品であれば、交際費として計上することが多いです。一方、キャンペーンのように不特定多数の人が対象の場合は、少額であれば広告宣伝費、消耗品費などで処理することもあります。判断に迷う場合は顧問税理士とも相談して処理するほうがよいでしょう。

購入した時点では貯蔵品(資産)として計上する

購入した時点で経費にできない商品券や金券ですが、資産にはなります。現金と同じ扱いになるからです。一般的には購入した時点は貯蔵品として会計処理を行い、その後使用するか、誰かに渡したかによって、それぞれ経費計上を行います。

商品券や金券をもらった場合は収入として処理する

自社に対し商品券や金券をもらった場合は、現金と同じ扱いになるため、会社の収入として会計処理を行いましょう。その後、使用した時点で経費として計上します。

商品券や金券を経費にする場合の注意点

渡した人の記録や証拠を残す

商品券や金券を経費にするには、いくつか注意したいポイントがあります。ひとつは、商品券を渡した人の記録や証拠を残しておくことです。具体的には、名前や住所、電話番号などの連絡先と、何の目的でいくら分の商品券・金券を渡したかなどです。お中元やお歳暮など贈る相手が多い場合は送付先リストを作るなど、丁寧に整理し、帳簿へ記載しておきましょう。

さらに、相手先からも受領証や領収書などを受け取っておくことも大切です。社内データだけでは「本当に渡したか」を証明するのは不十分だからです。なるべく相手からも「受け取りました」という旨の一筆や印鑑をもらっておきましょう。証拠が残りやすくするように、メールで証拠が残る商品券や、贈った相手しか使用できないAmazonギフト券などを活用するのもひとつです。

もし受領証をもらえない場合は支払明細書を残し、何の目的があって商品券や金券を渡したか、理由を記載しておきましょう。

税務調査が入った場合、ほぼ確実に商品券や金券を渡した相手先のリストを見せるよう求められます。単に渡すだけでは、誰に渡したのか、本当に渡したかなど、後から証明することができません。証拠がなければ個人使用だとみなされますし、大量に経費計上していると脱税を疑われるリスクもあります。税務調査が入っても、事業に関係する費用だと説明できるよう必ず記録を残しましょう。

高額な商品券・金券の贈答は避ける

商品券や金券を贈る際は、常識的な範囲の金額にすることもポイントです。目安は1件あたり1万円以下といわれています。

とはいえ、1万円以下でも大量に経費計上している場合は、税務調査でも怪しまれることがあります。また、5万円など高額な費用を計上している場合も、理由を調べられやすいです。経費にするときは、まずは記録や証拠をしっかりと残すことが大切になるでしょう。

商品券や金券の経費化による節税は注意が必要

「お金」とみなされないよう対策を

商品券や金券は、現金と同等とみなされるため、節税対策には不向きと考えられます。購入するだけでは経費にならないので、決算前の節税対策として活用するのも難しいでしょう。そもそも大量に商品券や金券を購入することは、脱税と疑われるリスクもあり危険です。

なお、商品券や金券を、まったく経費に計上できないわけでもありません。取引先や顧客へ贈答品として渡す、あるいは販売促進のために配布する場合は、経費としても認められやすいでしょう。商品券や金券は相手方にも喜ばれることが多いため、事業によっては将来の売上につながることもあるでしょう。

経費として認められるには、事業に関係する費用であることを証明することが大切です。金額は常識の範囲に留め、税務調査が入っても説明ができるように、相手先の記録や受領証などの証拠は丁寧に残しておきましょう。

タイトルとURLをコピーしました