個人型確定拠出年金のデメリットは?iDeCo加入の注意点を再確認しよう!

個人型確定拠出年金のデメリットは?iDeCo加入の注意点を再確認しよう!個人事業主に必要な知識
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個人型確定拠出年金(iDeCo)にもデメリットがある

個人型確定拠出年金に加入をすれば、100%「メリットが享受できる」という訳ではありません。実際に、個人型確定拠出年金にもデメリットはあり、運用の仕方を間違えると積み立てた資金が「元本割れ」する場合もあります。

節税対策として、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入を勧める意見も多いのですが、一般的な「積み立て」とは違うということを理解しておく必要があります。

本記事では、個人型確定拠出年金のデメリットと「注意したいポイント」について解説します。

個人型確定拠出年金のデメリットは5つ!

個人型確定拠出年金(iDeCo)のデメリットは大きく分けて5つあります。

デメリット① 加入できる年齢に制限がある

個人型確定拠出年金には、加入できる年齢に制限があります。

iDeCoは、平成13年に施行された確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度です。平成29年1月から、基本的に20歳以上60歳未満の全ての方(※)が加入できるようになり、多くの国民の皆様に、より豊かな老後の生活を送っていただくための資産形成方法の一つとして位置づけられています。

出典元:制度の概要(iDeCo公式サイト)

60歳以上の方は、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入ができないので注意しましょう。

デメリット② 掛け金に限度額がある

個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛け金は無制限ではありません。個人型確定拠出年金の掛け金には「限度額」があります。

また限度額は一律ではありません。国民年金保険の加入状況によって、掛け金の拠出額の上限が異なります。

個人型確定拠出年金(iDeCo)の上限

国民年金の加入状況詳細年間の上限
第一号被保険者自営業者など81.6万円(月額68,000円)
第二号被保険者企業型DCに加入24.0万円(月額20,000円)
企業型DC非加入27.6万円(月額23,000円)
公務員、DB加入者など14.4万円(月額12,000円)
第三号被保険者専業主婦、専業主夫27.6万円(月額23,000円)

上の表からも分かるとおり、個人事業主の方は「掛金の上限」が大きく設定されています。月額68,000円、年間にすると81万6,000円が税額控除の対象となり積立できます。

個人型確定拠出年金の上限はいくら?限度額の引き上げ方&掛金の設定方法を解説!

デメリット③ 60歳になるまで引き出せない

積立貯金の場合、途中で解約をしたり貯金を引き出すことができます。しかし、個人型確定拠出年金(iDeCo)の場合、途中で資金を引き出すことはできません。

最短でも60歳までは、資金が引き出せないので注意しましょう。

デメリット④ 手数料が必要

個人型確定拠出年金の口座開設、口座の維持には一定の手数料が掛かります(例:2020年1月現在、積立手数料は171円〜492円程度かかる)。

また国民年金基金連合会への加入費用として「一律2,829円」の手数料が必要なほか、企業型拠出年金からの加入や口座移管にも「一律2,829円」の手数料が掛かります。

個人型確定拠出年金(iDeCo)の手数料詳細は、以下の記事を参照してください。

個人型確定拠出年金の手数料を徹底比較!iDeCoはどこがおすすめ?

デメリット⑤ 受けとる金額によっては税金が掛かる

個人型確定拠出年金は、受けとる金額によって税金が掛かります。次項で詳しく解説しますが、受けとるタイミングや方法によって税金が掛かります。

「iDeCo=税金が掛からない」というイメージを持つ方も多いのですが、一定の控除額を超えた所得については税金が掛かるので注意しましょう。

支払いが厳しい場合には、掛金の変更を検討しよう

60歳までに資金不足になり「解約したい」と思っても資金が引き出せないのは辛いところです。月々の掛金を大きく設定した方は、年に一度だけ掛け金を変更するチャンスがあります(年に1回まで変更可)。 掛け金額の変更を希望される方は、iDeCoを利用する証券会社や金融機関で「掛金額変更手続き」を申請してください。

また支払いが厳しい場合、加入者資格喪失届(様式K-015号)を提出すれば、一時的に掛け金の拠出がストップできます。加入者資格喪失の申請については、iDeCoを利用する証券会社や金融機関に問い合わせてください。

個人型確定拠出年金で控除できる税金の額

受け取りの方法によって、税制優遇措置は異なります。受け取り方と適用される税制優遇措置を表にまとめてみました。

個人型確定拠出年金・掛け金の受取方法と税制優遇措置

受取方法詳細適用される税制優遇措置
一時金積み立てた資金を一括で受けとる方法・退職所得控除
年金積み立てた資金を年金として受けとる方法・公的年金等控除
一時金+年金積み立てた資金の一部を一括で受けとり残りを年金として分割で受けとる方法・退職所得控除
・公的年金等控除

上記のうち、いずれの方法で受けとっても「税制優遇措置」の適用となり一定額までは税金が掛かりません。

退職所得控除額の計算方法

一時金で受けとった場合の所得は「退職所得」とみなされます。計算方法ですが、収入から退職所得控除額を差し引いたものを半分にすると「退職所得」が求められます。

以下に、勤続年数と退職所得控除額を表にまとめてみました。

勤続年数と退職所得控除額

勤続年数退職所得控除額(計算式)
① 20年以下40万円 × 勤続年数
② 20年以上800万円+70万円 ×(勤続年数 − 20年 )

なお、①で求めた金額が80万円に満たない場合は「控除額は80万円」となります。

例えば、30年積み立てを行った場合の計算式は【800万円+70万円】を【勤続年数25年−20年】で求めた数を掛けるので、控除できる金額は1,500万円となります。

年金として受けとった場合の控除額計算方法

年金として受けとった場合の所得は「雑所得」として扱われます。

公的年金の雑所得は、原則「収入金額」から公的年金等控除額を差し引きして求めます。

下に、年齢と年金の額で「公的年金に掛かる雑所得がいくらになるのか」表にまとめてみました。

個人型確定拠出年金(iDeCo)公的年金に掛かる雑所得

加入者の年齢公的年金からの収入公的年金からの収入に掛かる雑所得の計算式
65歳未満70万円以下0円
70万円以上、130万円以下収入 − 70万円
130万円以上、410万円以下収入 × 0.75 − 37.5万円
410万円以上、770万円以下収入 × 0.85 − 78.5万円
770万円以上収入 × 0.95 − 155.5万円
65歳以上120万円以下0円
120万円以上、330万円以下収入 − 120万円
330万円以上、410万円以下収入 × 0.75 − 37.5万円
410万円以上、770万円以下収入 × 0.85 − 78.5万円
770万円以上収入 × 0.95 − 155.5万円

上の表の通り、65歳未満の方で個人型確定拠出年金(iDeCo)など公的年金からの所得が70万円以下の方は、所得金額は0円と見なされます。

また65歳以上の方で個人型確定拠出年金(iDeCo)など公的年金からの所得が120万円以下の方についても、所得金額は0円と見なされるので覚えておきましょう。

個人型確定拠出年金のメリットは税控除にあり

ここまでデメリットを紹介しましたが、個人型確定拠出年金(iDeCo)のメリットは大きいです。個人型確定拠出年金(iDeCo)のメリットで最も大きいのは、税制優遇措置(税控除)と言えるでしょう。

もちろん(iDeCoには)税制優遇措置以外にもメリットはあるのですが(例:年金、退職金の代わりになるなど)、掛け金や運用益、受取時の金額も税制優遇措置の対象となるので、一生を通して得られる「税控除のメリット」は非常に大きな金額になります。

メリット① 掛金が全額、控除される

限度額はあるものの、個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金は全額、所得税・住民税の控除対象となります。個人型確定拠出年金(iDeCo)の上限で掛金を設定した方は、年間で大きな金額が控除されます。

老後の資金を積み立てながら、税金も安くなるとは、まさに「一石二鳥」ですね。

メリット② 運用益が非課税になる

個人型確定拠出年金(iDeCo)では、資産運用によって得た利益が非課税になります。個人で投資や資産運用をした場合、利益の約20%を税金として納める必要がありますが、個人型確定拠出年金(iDeCo)の場合、税金が一切掛からないのでお得です。

メリット③ 受け取りにも税金の控除(税制優遇措置)がある

個人型確定拠出年金は、①で説明をした掛け金が控除されるだけでなく、②の運用益の非課税に加え、積立金の受け取りにも一定の税金控除(税制優遇措置)が適用されます。

メリット④ 個人事業主は限度額が大きい

本項の前半でも紹介をしましたが、個人事業主の方は年間81.6万円(月額68,000円)まで、個人型確定拠出年金(iDeCo)の積み立てができます。

メリット⑤ 個人事業主は退職金代わりに活用できる

④で説明をした通り、個人事業主の方は年間81.6万円(月額68,000円)までiDeCoの積み立てができます。個人事業主の方には、退職金はありませんが、iDeCoを退職金や年金の代わりにすれば、老後の生活に備えられます。

本項の①〜⑤で紹介した、個人型確定拠出年金(iDeCo)のデメリット、加入条件については、以下の記事で詳しく解説しています。どのような条件で加入できるのか、改めて確認をしておきましょう。

関連記事:個人型確定拠出年金(iDeCo)とは?個人事業主の加入資格を徹底解説!

個人型確定拠出年金のデメリットをメリットには配分変更とスイッチングが重要

個人型確定拠出年金のデメリットをメリットに変えるには、個人型確定拠出年金(iDeCo)の配分をこまめに確認し、状況に応じて配分変更やスイッチングをすることです。

配分変更とは?

配分変更とは、個人型確定拠出年金(iDeCo)で購入をする、運用商品の種類や配分を変更することです。iDeCoの掛け金は年一回しか変更できませんが、配分変更については手数料が掛かりません。

また配分変更後も、これまで積み立てた資金や資産の割合は変更されないので安心です。資産の運用状況を細かくチェックし、リスクとリターンのバランスを見ながら配分を調整しましょう。

スイッチングとは?

スイッチングとは、これまでにiDeCoで積み立てた商品構成を変更することです。例えば、Aという商品を売却し、BとCという商品を購入して運用するといった方法をスイッチングと言います。

利益を確保するのか、それとも大きなリターンを狙うのかで「どのような商品で運用するのか」調整をする必要があります。

こうした資産配分の調整は『リバランス』と言い、個人型確定拠出年金(iDeCo)は配分変更、スイッチング、リバランスによって、全体のリスクを抑えリターンを大きくする必要があります。

もちろん「元本が割れるのが嫌だ」という方は、元本保証の商品もあるので、全体のバランスを見ながら運用をしてください。

運用を見直すタイミング

運用を見直すタイミングですが、一定のサイクルで状況を確認するようスケジュールを決めましょう。運用状況、年齢や環境の変化などに応じて、配分変更やスイッチングのほか、必要であれば掛金の見直しが必要です。

以下は、iDeCo公式サイトで紹介をしている「資産運用」で必要なポイントです。

運用商品の仕組みや特徴を把握するリスクの種類と内容(金利リスク、為替リスク、信用リスク、価格変動リスク、インフレリスクなど)リスクとリターンの関係長期運用の考え方とその効果分散投資の考え方とその効果

出典元:加入者の方へ(iDeCo公式サイト)

個人型確定拠出年金(iDeCo)で大きなリターンを得るには、上の資産運用の知識と、運用状況の確認、リバランスを取ることが何より重要です。

老後の資金が「豊かなもの」になるよう、加入するだけでなくiDeCoの運用状況はこまめに確認をしましょう。

まとめ|個人型確定拠出年金のデメリットは運用の見直しで解決できる

ここまで紹介した通り、個人型確定拠出年金(iDeCo)には、年齢や掛金に上限があるなど、一定のデメリットがありました。最後に本記事の内容をまとめておきます。

  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)加入は60歳まで
  • 掛け金には上限がある、個人事業主は月68,000円まで
  • 60歳までiDeCoの掛金は引き出せない
  • 口座開設、運用に手数料が掛かる
  • 受けとる金額によって税金が掛かる

個人型確定拠出年金(iDeCo)のデメリットをメリットに変えるには、運用の状況をこまめに確認し、配分変更やスイッチングを行い、リバランスによってリスクを回避することです。

実際にiDeCoのデメリットを理解しておけば、iDeCoのリスクはコントロールできます。老後に備えて、節税効果&資産運用が行える個人型確定拠出年金(iDeCo)を活用しましょう。

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