中小企業が年末年始の費用を経費にする方法

中小企業が年末年始の費用を経費にする方法経費で節税する
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年末年始には何かと中小企業の費用もかさむものです。この年末年始にかかった費用はしっかりと経費として落としておきたいですよね?年末年始に発生した費用を経費として処理するためにはいくつか注意しなければならない点があります。今回の記事ではそんな年末年始にかかった費用を経費にする方法についてご紹介していきます。

中小企業の年末年始に発生する費用一覧

まず、年末年始にはどのような費用が発生するのでしょうか。中小企業の形態にもよりますが、多くの中小企業では年末年始に以下のような費用が発生しています。

  • 忘年会
  • お歳暮
  • 新年会
  • カレンダー
  • 年賀状
  • 年賀タオル

では、それぞれにかかった費用はどの会計科目で処理すれば良いのでしょうか。また経費として落とす際のポイントはどのような点なのでしょうか。一つ一つの処理について確認していきましょう。

忘年会の経費区分

年末には多くの中小企業で忘年会が行われます。自社内のみで行われるものもあれば、取引先も含めて行われる場合もあります。この忘年会にかかった費用に関しては、

  • 福利厚生費
  • 接待交際費

として経費処理をします。

忘年会に関しては福利厚生費として処理する方法と接待交際費として処理する方法があり、全従業員を対象としているような忘年会の場合には福利厚生費として、役員だけで行われるような場合には交際費として経理処理します。
福利厚生費として経費処理する際には全従業員に告知した証拠として忘年会の案内などの文面を残しておくと良いでしょう。取引先と行う忘年会に関しては福利厚生費ではなく交際費として処理します。

忘年会の景品は福利厚生費!給与課税されないように注意

また忘年会の席では景品などもつきものです。この景品に関しては、福利厚生費として処理することが一般的です。

ただし、

  • 現金や商品券など金銭に類するもの
  • 高額な物品
  • あらかじめ選出されていた人が景品を受け取る

などの場合には「給与」として課税されることもあるので注意しましょう。例えば今期の業績が良かったなどの理由で支給されるような景品に関しては税務上「給与」として扱われます。

お歳暮の経費区分

夏にはお中元、年末にはお歳暮を発送している中小企業も多くあります。これらの支出は一般的に交際費として処理します。ただし、送料部分のみに関しては通信費として処理することもできます。
中小企業の交際費には損金にできる上限額が定められていますので、お歳暮にかかる交際費と通信費で科目を分けておくことが後々節税に繋がる場合もあります。
またお歳暮を経費として処理する際にはどこの得意先に送ったのかが分かるように送付先を一覧としてまとめた書類を保管しておきましょう。

新年会の経費区分

年が明けると新年会を行なっている中小企業も多くあります。この新年会に関しても忘年会と同様、

  • 全社員対象であること
  • 金額が一般的な常識の範囲内であること
  • 現金支給ではないこと

などの条件を満たしている場合、福利厚生費として処理することができます。

希望者のみ参加の2次会・3次会、取引先との新年会は交際費

ただしこのような会の2次会や3次会などに関して大抵の場合は希望者のみの参加になることが多いため、福利厚生費ではなく交際費として処理する必要がありますので注意しましょう。全社員対象ではなく一部の人のみ参加となる飲食は交際費となります。

またこの新年会に関しても取引先と行うような場合には交際費として処理します。通常の経費と同様、領収書を保管し取引先と行った場合にはどこ会社の誰と行ったのかを記録として残しておきましょう。

カレンダーの経費区分

企業によっては年末に翌年のカレンダーをお渡ししているところもあります。このカレンダーにかかる費用ももちろん経費として処理することができます。

カレンダーに関しては自社利用ではなく配布用として購入したものは広告宣伝費として処理することができます。
特にそのカレンダーについて宣伝用ではなく得意先に配布するという場合だとしても「贈与するために通常要する費用」の場合には広告宣伝費として落とすことができますので覚えておきましょう。

この場合も先ほどと同様、中小企業には交際費の上限額があるため後々科目を分けておくことが節税につながる場合があります。

年賀状の経費区分

新年に送付する年賀状の経費に関しては通信費または広告宣伝費として処理します。

両者の違いですが、広告宣伝費に関しては不特定多数の相手に対して自社の宣伝を行うような場合に適用され、それ以外のケースに関しては通信費として処理します。

広告宣伝費と通信費では税務上大きな違いはありませんが、前期比較などをする際に法人として科目が統一されている方が比較しやすいため、会計科目は広告費か通信費のどちらかで統一させておくと良いでしょう。

年賀タオルの経費区分

また年始に配る年賀タオルに関してはどの科目で経費処理すれば良いのでしょうか。この場合の支出は広告宣伝費または交際費として処理します。

こちらのケースも不特定多数の相手に対し宣伝目的で行う場合には広告宣伝費に、得意先の企業に対してのあいさつ回りで配ったような場合には交際費として処理します。

忘年会や新年会の経費の上限

年末年始には忘年会や新年会で経費がかさみますが、いくらまでなら経費として落とすことができるのでしょうか。忘年会や新年会の支出を経費とすることができる「上限額」はあるのでしょうか。

結論としては、この忘年会や新年会の金額部分の上限に関しては「常識の範囲内」とされており、特にいくらまでと定められているわけではありません。以下にご紹介するのは飲食代の上限についてよくある間違いと交際費についての注意点です。

5,000円は上限ではない

新年会や忘年会について、よく1人あたり5,000円までと勘違いされている方もいるのですが、この1人あたり5,000円までというのは交際費の除外要件ですので新年会や忘年会について一人当たり5,000円でなければならないというわけではありません。

ちなみに、以下の記録を全て残している場合、5,000円までの飲食代に関して交際費として処理しなくて良いとされています。

  1. その飲食等のあった年月日
  2. その飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
  3. その飲食等に参加した者の数
  4. その費用の金額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地

つまり新年会や忘年会に関して5,000円を超えたら経費にできないというわけではなく、5,000円を超える場合には会議費などとして処理できず交際費としなければならないというのが正しい認識となります。

交際費800万円の上限

中小企業の場合、800万円を越える交際費支出は経費としてみなされない

資本金が1億円以下の中小企業の場合、一事業年度内で800万円を超える交際費支出があった場合には、その超える部分について損金算入されないこととされています。
損金算入されないとはどういうことかというと、会計上は経費として処理していても、法人税の税金計算上は経費としてみなされないこととなります。

つまり忘年会や新年会での金額の上限はありませんが、期中で800万円を超える交際費の支払いをしていた場合、それを超えている交際費部分に関しては経費とすることがでず、法人税が課税されてしまいます。

法人としては交際費が全体として800万円を超えていないか、超える可能性がないかどうかは気をつけていなければなりません。

年末年始の費用を経費にする際の注意点

年末年始の費用を経費にする際、以下の点には注意しましょう。

  • 期ズレ
  • 会計科目の振り分け
  • 身内での飲食代

それでは一つずつ解説していきます。

期ズレには注意

個人事業の場合、または法人でも12月を決算月としている場合、年末年始の支出は期をまたぐことが多くなります。税金計算する上で交際費を経費としたい場合、実際に接待行為があった日が事業年度内である必要があります。
例えば以下のようなケースではいつ費用計上するべきなのでしょうか。

  • 期中に接待行為があったがまだ支払はしていない場合
  • 支払はしているが接待行為が行われるのは翌期の場合

期中に接待行為があったがまだ支払はしていない場合

まず、期中に接待が行われいるがまだ支払いはしていないという場合、このような場合に今期の交際費として会計処理を行うことができます。まだ支払いはしていないので仕訳処理としては

交際費 / 未払金

として処理します。

支払はしているが接待行為が行われるのは翌期の場合

一方、後者の支払いはしているが接待行為が行われるのは翌期という場合には翌期の交際費として処理します。支払いはしているので仕訳処理としては

前払金 / 普通預金

として処理します。翌期、実際に接待を行なった際に

交際費 / 前払金

として費用計上することができます。

この期ズレに関しては税務調査でも指摘されやすい部分です。個人事業や中小企業でも12月を決算月としている法人については、年末年始に係る支払について今期分の経費と翌期分の経費が混同されないように注意しましょう。

会計科目を振り分ける

中小企業の交際費には損金とできる上限が定められています。先ほどもご紹介しましたが資本金1億円以下の中小企業の場合、期中に800万円を超える交際費を支出した場合、その超えた部分について損金とすることができません。
つまり1年で800万円を超える交際費を計上するような中小企業は、可能な限り会計科目を交際費から振り分ける工夫が必要となります。場合によっては交際費ではなく広告宣伝費、福利厚生費、通信費とすることができるものもありますので支出の内容をよく確認しましょう。

例えば、以下の支払いに対して税務署では交際費に算入させなくてよいとしています。

  1. 1.カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
  2. 2.会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
  3. 3.新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用

もしこれらの支払いが会計処理上交際費として処理されているような場合には適正な科目に振り返ることで損金計上額を増やすことができます。

身内での飲食代を福利厚生費にしていた場合

年末年始に行われた身内だけでの接待飲食費を会計上「福利厚生費」として処理していた場合、これらの飲食が業務とは全く無関係だと判断されると飲食代部分に関しては役員に対する給与だと判断されることがあります。

身内での飲食費が大きなペナルティを呼ぶことも

役員に対する給与に関しては、法人税法上毎月定額でなければならず、それ以外の定額でない部分に関しては損金として認められません。
つまりここで給与と判断された福利厚生費は法人税の計算上の経費として認められず法人税が追加で課税されることとなります。
更に役員に対する給与となると所得税および復興特別所得税の源泉徴収がもれているということにもなりますので追加で支払わなくてはなりません。

また福利厚生費として消費税の申告では仮受消費税等の額から控除していますので、消費税も過少申告していることとなるので追加の支払いが発生してしまいます。
身内での飲食代を福利厚生費として経費計上していたことが税務署から否認された場合、

  • 法人税
  • 源泉所得税
  • 消費税

が追加で発生する可能性があり、更に本税だけでなくペナルティが課されることになり法人としては大きな痛手となりますので注意しましょう。

まとめ:中小企業が年末年始の費用を経費にする方法

今回の記事では中小企業が年末年始の費用を経費にする方法についてご紹介しました。年末年始に支払うそれぞれの科目を適正に処理することで漏れなく経費とすることができます。特に交際費に関しては中小企業の場合上限額が800万円と定められているため、科目選択をする際には注意しましょう。
また期ズレや身内での飲食代などにも調査の際に指摘されやすい部分となりますので注意しましょう。

今回の年末年始の費用を経費にする方法についてのご質問や個別のご相談は専門の税理士や節税コンサルティングサービスをご利用ください。

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