相続税の節税対策として税理士に依頼するメリットとデメリット

相続税の節税対策として税理士に依頼するメリットとデメリット節税対策ノウハウ
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相続の節税対策として税理士に依頼するメリット

相続税の節税対策として税理士に依頼することで、贈与や法人設立、評価での部分など幅広い選択肢の中で節税対策をしてもらうことができます。税理士に相談すると以下の5つのメリットがあります。

  1. 節税対策として贈与税の申告を依頼
  2. 節税対策として法人を設立
  3. 税理士が力を発揮するのは土地評価での節税
  4. 税理士に相続での調査対応を任せられる
  5. 二次相続も考慮した節税対策

節税対策として贈与税の申告を依頼

節税対策として長期的に時間を取ることができる場合、「贈与」をうまく活用することで大きな節税効果が発揮されます。

贈与を使った節税対策の注意点

しかし節税対策として贈与を活用する場合にはいくつかの注意点があります。それは「贈与財産」が「相続財産」に加算されないようにすることです。

被相続人が(亡くなった方)が贈与しているつもりであるにもかかわらずそれが贈与とみなされなかった場合、その財産は被相続人のものとみなされ、相続財産となり最終的には相続税が課税されます。

具体的にどのような場合に贈与とみなされないかと言うと、

  • このような贈与は注意が必要
  • 被相続人が贈与財産を通帳や印鑑を管理していた
  • 贈与を受けるものがその存在を知らない

このような場合には「贈与は行われていなかった」と判断されるケースがあります。

正式な贈与とみなされるために確実な方法は税理士に依頼し、適切な「贈与税申告」をしておくことです。

110万円を超える贈与を受けた場合には贈与税の申告・支払義務が発生します。この贈与税の申告を適切に行っておくことで、贈与が行われていたという事実を記録として残しておくことができます。

※その他相続開始前3年以内の贈与も相続財産に加算されますので、相続開始直前の贈与は注意しましょう。

贈与の特例や控除を使い大幅に節税

また贈与には毎年変わる様々な特例があります。それらの特例を上手に使うことによって相続税の節税へとつなげることができます。

以下の特例や控除は相続財産に加算されません。

  • 贈与税の配偶者控除の特例を受けている又は受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
  • 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額

しかしこれらの特例や控除を使いたい場合には必ず贈与税の申告が必要となりますので税理士の助けが必要となります。

もちろんご自身での贈与税申告も可能ですが、それぞれの特例によって必要な添付資料も異なり、また期間限定の特例などもあり毎年若干の変更があるため、税理士に相談する方が確実です。

現在贈与税の特例や控除には以下のような種類があります。

特例の種類控除額
配偶者控除2000万円
住宅取得資金の贈与の特例1200万円
教育資金の一括贈与の特例 1500万円
結婚・子育て資金の一括贈与の特例1000万円
障害者への贈与の非課税6000万円

節税対策として法人を設立

報酬や退職金で財産を移行

法人を設立することによって相続税の節税の選択肢は大幅に増えます。

例えば法人を作り「役員報酬」として財産を移行していくこともできますし、また「退職金」は税金面では非常に優遇されているため、退職金を使うことによって場合によっては税金が全くかけずに財産を移行させるというケースもあります。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数
(80万円未満の場合は、80万円)
20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)

注意しなければいけないのは会社の財産=個人の財産ではありません。ですが、これらの方法を上手に活用することで相続税をかけずに財産を移行させることもできます。

相続財産を株式にすることで相続評価を下げる

また相続人が株主となることによって、相続財産を「現金」から「株式」とすることができます。現預金として財産を持っている場合、相続評価は変わりませんが、現預金から株式にしておくことで、役員報酬などで利益を調整することで「株の価値」を下げることも可能となり、結果的に将来の相続財産を減らすことができます。

不動産の管理会社を作り節税

不動産等の収益を生み出す財産を持っている場合、何もしなければ将来の相続財産は増え続けていきます。しかし、不動産の管理会社として法人を設立することで収益を分散させることもできます。この場合には被相続人(将来相続財産を受け取る方)が管理会社を設立し、一括借り上げや管理料を受け取ることにより、徐々に財産を移していくとう方法があります。その他、相続人の財産増加を防ぐという効果や、小規模宅地の特例などが使えるというメリットもあります。

しかし法人を設立する場合、株主を誰にするか、資本金をいくらにするか、毎年法人としての確定申告など専門の税理士の助けが必ず必要となるため、税理士報酬などを含めた諸費用が発生することとなります。

税理士が力を発揮するのは土地評価での節税

税理士に依頼することで補正率を漏れなく活用する

相続税の節税対策として税理士が特に力を発揮するのは相続財産の「土地評価」の部分です。

相続税の土地評価には評価方法や解釈などで、ある程度申告者に任されている部分があります。つまり知っていなければそれらの節税はすることができません。特に土地部分は金額が大きいため、その評価方法や解釈の仕方によって、大幅な節税につながる部分となります。

 相続税の土地評価は「路線価方式」によって評価します。路線価とは7月1日に全国の国税局、税務署で公示されるものです。

土地を評価する場合にはこの路線価に「補正率」をかけて1㎡あたりの評価額を算出します。この1㎡当たりの評価額に宅地面積をかけることによって土地の評価額を出すことができます。

「補正率」には具体的に、

  • 奥行価格補正
  • 間口狭小補正
  • 奥行長大補正
  • がけ地補正
  • 不整形地補正
  • 地積規模の大きな宅地補正

などがあり、それらの補正を行うことにより土地の評価を最大で「2割」下げることができます。仮に1億円の土地の場合2割減だと2000万円評価が下がることになるので非常に大きな節税となります。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

また相続税の税率は課税価格に応じて変わるため、土地の評価額を下げることにより「税率」自体も下げることができます。

この補正に関しては完全に自己申告制ですので知らなければ使うことができません。相続に強い税理士に依頼することでこの補正を漏れなく活用し、相続税を大幅に節税することが可能になります。

税理士に依頼して土地の評価を8割下げる

土地の評価で節税効果が最も大きいものは「小規模宅地等の特例」です。この小規模宅地等の特例を使うことにより土地の評価を最大で「8割」も下げることができます。

適用対象の宅地減額割合限度面積
特定の居住用の宅地80%330㎡
特定の事業用の宅地80%400㎡
貸付事業を行う宅地50%200㎡

この小規模宅地等の特例を使うことにより、相続税として最終的に支払う税額がゼロになることも少なくありません。

しかしこの特例を使うためには「必ず」相続税の申告を行わなければなりません。小規模宅地等の特例を使う場合、どの種類に該当するかにより、添付する書類も異なるため、大抵の場合相続に強い税理士の協力が必要となります。

税理士に相続での調査対応を任せられる

広い意味での「節税」としては、税理士に税務調査の同席を頼むことで、調査により追加で発生する相続税額を最低限に抑えることができます。

平成29年事務年度でも相続での調査は12,576件。調査が行われた場合には8割の割合で申告漏れが発生しています。相続税申告に関しては税務署としても力を入れて調査を行う分野ですので、調査官と被相続人の間に税理士を間に挟み適切な対応をしてもらうことが必要となります。

相続の税務調査では何気ない質問の中にも税務署員の意図が隠れていることもあります。相続に強い税理士に税務調査に同伴してもらうことにより、適切な準備をして税務調査を迎えることができます。また税務調査後の対等や交渉も税理士を通して行うことができます。

二次相続も考慮した節税対策

経験豊富な税理士に相談することで、二次相続も考慮した対策を考えてもらうことができます。

二次相続とは親が両方とも亡くなった後の相続のことを言い、これに対して片方の親が亡くなった際の相続のことを一次相続と言います。

一次相続では「配偶者控除」を使うことができます。また夫婦で同居されているケースがほとんどですので「小規模宅地等の特例」を使うことができます。そのような理由から一次相続での税金はかからないというケースも多いのですが、問題は二次相続です。

二次相続では配偶者控除はもちろん、小規模宅地の特例も使えないケースがあります。また二次相続では相続人の人数も減っています。

相続人となる夫婦の年齢が近く、一次相続と二次相続との期間があまり空いていない場合、そのような場合には二次相続において相続税の支払い額が大幅に増えるということになりかねません。

個人での節税対策ではなかなか二次相続も踏まえて対策することは難しいですが、税理士に相談することで二次相続の際にどれくらいの税金が発生するのかをシミュレーションしてもらうこともできます。

相続の節税対策として税理士に依頼するデメリット

税理士報酬費用が発生する

税理士に節税相談や申告を依頼することで税金を抑えることが可能ですが、もちろん費用も発生します。

相続における報酬額は税理士事務所によって異なりますが、多くの場合「相続財産」と比例させる形で報酬を決定します。税理士への報酬はおおよそ相続財産の0.5%~1%の間で推移することが多いです。但し土地の数や相続人の数によって計算が複雑になる部分に関しては、その部分が加算金として報酬額に上乗せされる場合もあります。

税理士でも予測できない部分がある

税理士に依頼しても確実に予測できない部分があります。それは「相続がいつ発生するか」です。一次相続、二次相続がいつ発生するのかは税理士にも分かりません。つまりある程度の予測を立ててシミュレーションすることはできますが、相続が発生するタイミングで資産の額も変わっています。例えば予想よりも長生きされた場合、節税対策を時間をかけて行っていたとしても介護施設などの利用料で実際には相続財産がほとんど無くなっているというケースもあります。

また毎年贈与や相続に関しての法律や特例も変わりますので、相続がどのタイミングで発生するかにより使える控除や特例も変わります。節税対策として考えていた方法も相続発生のタイミングにより使えないというケースもあります。

相続専門でない可能性も

税理士であれば誰でも相続について詳しく節税に精通しているというわけではありません。税理士事務所によっては会計業務のみ行っていて、相続の案件を扱っていない事務所もあります。(実際多くの税理士事務所は会計業務をメインとして活動されています。)

相続の節税対策として相談をする場合には、その税理士が相続に精通しているのかどうかをよく確認しましょう。相続税の申告は行えるという場合でも豊富な経験が無ければ「節税」の提案まではしてくれない場合もあります。相続の節税対策として税理士を探す場合にはよく注意して探しましょう。

相続税の申告後に税理士に相談することも可能

相続税の税務申告を行った後でも、「その申告で良かったのか」「もっと税額が少なくなる方法はなかったのか」と色々と考えることが出てくるかもしれません。そのような場合、再度税理士に相談することも可能です。セカンドオピニオンとして税理士に相談し「更正の請求」を提出することができます。更正の請求の申告期限は「法定申告期限から5年以内」となっているのでその期限内であれば再度申告を行うことができます。

税理士事務所によっては更正の請求による税金の還付額の〇%といった形で報酬を受け取るところが多いようです。実際「土地の評価額」が変わる場合には多くの還付金が戻るというケースもあります。

まとめ:相続の節税対策として税理士に依頼するメリット・デメリット

今回の記事では相続の節税対策として税理士に依頼するメリットとデメリットについてご紹介しました。税理士に相談するメリットは大きく分けて5つあります。

  • 税理士に相談するメリット
  • 贈与税による節税対策
  • 土地評価による節税対策
  • 法人設立による節税対策
  • 調査での節税対応
  • 二次相続も考慮した節税対策

時間をかけての節税対策としては贈与を使うことや法人を設立することなどが考えられます。その他実際の申告の際に節税効果があるのは土地の評価に関する部分で、この計算は複雑なので税理士に依頼する必要があります。

税理士に相談するデメリットとしては3つあります。

  • 税理士に相談するデメリット
  • 費用が発生すること
  • 相続のタイミングは分からない
  • 相続専門ではないケース

良い税理士に巡りあい相続税の節税対策をしてもらう場合、相続税額をかなり抑えられるケースもあります。ただし、税理士に相談する場合にはデメリットもあります。税理士に依頼する際にはメリット・デメリットを総合的に見て判断しましょう。

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