社用車による節税方法はよく行われますが、高級外車のスポーツカーも経費化できるのでしょうか。今回はこの記事で、高級外車のスポーツカーが経費化できるかどうかと、節税につなげるためのポイントや注意点についてご紹介します。
法人なら高級外車のスポーツカーでも経費化して節税可能
スポーツカーでも「社用車」にするのがポイント
法人の場合、社用車であれば高級外車のスポーツカーでも経費化し、節税につなげられます。ただ、あくまで社用車、つまり「事業用の車」と認められることがポイントです。特にスポーツカーの場合、嗜好性が高いと判断されやすいので、経費化するためには、社用車として使っていることを証明することが大切でしょう。
社用車にする高級外車の種類は問わない
高級外車にもベンツやBMW、ポルシェ、フェラーリ、ランボルギーニ、ベントレー、マセラティ、レクサスなど、さまざまなメーカーがあります。社用車にするにあたり、スポーツカーを含めて高級外車の種類は問いません。会社の事業用として使用されている車であれば、経費化による節税が可能です。ただ、税務調査に絶対的な決まりはありません。顧問税理士とも相談の上、購入する車種やタイプを決めるほうがよいでしょう。
フェラーリが認められた判例もある
高級外車のスポーツカーについては、過去に実際、国税不服審判所の非公開裁決(平成7年10月12日)の判例において、フェラーリが社用車として認められたケースがあります。国税不服審判所とは、裁判で争う前段階の審判機関です。
本事例は、フェラーリが趣味性の高い車であることから事業性が認められず、税務調査で否認されたことを不服とし、国税不服審判所に異議申し立てを行ったものです。
当初、税務調査では「本件車両は事業の用に供された実績が明らかでなく、イタリア製の高級スポーツカーで一般社会常識から見ても個人的趣味の範囲内のものであり、同族会社ゆえにできる行為である」と否認されました。
しかし、判決では「現実に請求人の事業の用に使用されていることが推認できる」とし、処分取り下げの指示がなされました。フェラーリが「事業性のある車(社用車)」と認められたのは、下記の理由によるものです。
- 本件車両については、代表取締役社長が通勤及び支店へ出張する際の交通手段として使用する旨主張するので、社長の出張旅費の支給実績を検討したところ、交通費は支給されていない事実が認められる
- 代表取締役社長が請求人とは別に外国製の車両3台を個人的に所有しており、請求人の減価償却資産としていない
判決のポイントから、社長が通勤や支店へ出張する際の交通手段だという主張が認められたということは、ビジネスでの利用を裏付ける運転記録が明確だったことが考えられます。また、異議申し立てを起こした会社では出張旅費規程が作成されており、フェラーリでの出張時は交通費の支給がされていなかったことも、事業用と推認された理由といえるでしょう。さらに、社長がフェラーリと別に個人的に所有する車が3台あって、それらを経費にせず公私の区別ができていることも、社用車と認められる理由になったようです。
もちろん、すべてのケースで高級外車のスポーツカーが事業用と認められるとは限らないため、安易に経費計上するのはリスクがあります。とはいえ、過去に事業用と認められた判例があることは、経費化を考える上で、ある程度の目安となるでしょう。
高級外車で効率的に節税するポイント
購入するなら4年落ちの中古車が狙い目
高級外車を経費化するなら、新車より中古車のほうが節税に効果的です。社用車は減価償却にて経費計上を行い、新車の場合は6年(軽自動車は4年)の法定耐用年数に合わせ償却していきます。
一方、中古車は新車より耐用年数が短くなるため、1年あたりの償却費も多くなります。特に4年落ちの中古車が狙い目です。4年落ちの自動車の場合、1年でほぼ全額を経費化できるからです。
資産や投資の面でも高級外車の価値は高め
スポーツカーを含め高級外車の場合、時間が経過しても車自体の資産価値が比較的落ちにくい傾向にあります。安定感があり疲れにくいデザインや、強固な素材が採用されていることも多いからです。
ランクの高い高級外車の中古車で、2~3年程度の使用であれば、売却時も購入時と同じくらいの価格で売却できることも多いでしょう。売却したお金で新たな中古高級外車を購入することや、資金繰りが厳しくなったときの資金調達に活用できることもあると考えられます。
高級外車・スポーツカーを経費化する際の注意点
どの経費にもいえることですが、高級外車のスポーツカーも必ずしも100%経費として認められ、節税につながるとは限りません。判例で経費と認められたケースがあるとはいえ、高級外車のスポーツカーは嗜好性が高いと判断され、否認される可能性があるからです。
経費化するには「事業用」と認められることが大切
高級外車のスポーツカーを社用車として経費化するには、「事業用」だと認められなければなりません。社用車として経費計上しても、ビジネスで利用していなければ、税務調査で否認される可能性があるからです。
事業用と認められるには、公私の区別を明確にすることが重要です。例えば、経営者や役員が社用車を頻繁に利用していることが分かる状態にすることや、プライベート用の車は別に所有し、乗り分けている証拠を残すなどです。プライベート用の車を所有しないまま、高級外車のスポーツカーを社用車として頻繁に使用すると、「社用車といいながら実際はプライベート用の車ではないか」と疑われる原因になるからです。
スポーツカーでなければならない理由も明確に
スポーツカーを社用車にする場合、経営者の個人的な趣味で購入したのではないかと疑われやすいです。なぜスポーツカーでなければならないか、社用車にする理由も明確にしておきましょう。例えば安全性の高さや資産価値の安定性などです。会社によっては、イメージアップにつながる場合もあるかもしれません。
運転日報や走行記録をきちんと残す
税務調査で高級外車のスポーツカーを社用車として認めてもらいやすくするためには、運転日報や走行記録をきちんと残すことも大切です。業務で使った証拠のひとつになるからです。運転日報や走行記録はメモ程度でかまいませんが、下記のようなポイントを記録しておくのが一般的です。
- 車を使用した日時
- 使用目的
- 訪問先
- 走行区間や走行前後のメーター距離数
- 燃料購入履歴
- 利用した社員名
出張旅費規程がある場合は規定通りに
社用車として認めてもらいやすくするために、出張旅費規程を作るのも効果的です。ただし、規定を作成した場合は、規定通りの運用を行うことが大切です。例えば「日帰り出張の際は交通費を支給しない」と定めているのに、実際には交通費を支払ってしまうと、税務調査で疑問を持たれる原因になりかねないからです。
個人事業主は自家用車の全額経費化ができない
社用車が全額経費として認められるのは、法人であることが前提です。法人であれば、株式会社以外に合同会社、医療法人などでも経費化できる可能性がありますが、個人事業主の場合はたとえ同じ事業用の自動車であっても、全額経費化することができません。個人のお金と会社のお金との区別があいまいになりやすいためです。経費計上できても半分程度になることが一般的です。
スポーツカーでもOK!高級外車を経費化し効率的な節税を
高級外車の種類を問わず社用車にすれば購入費用を経費化できる
高級外車のスポーツカーも、事業用として適正に利用していれば経費化でき、節税も可能です。実際、過去にフェラーリが社用車として認められた判例もあり、ひとつの目安になるでしょう。
とはいえ、安易にスポーツカーを社用車として経費計上するのは危険です。経費として認めてもらうには、事業用の車であると明確でなければならないからです。で日ごろから運転記録や走行記録をしっかりと残すことや、社用車とプライベートの車とは、公私の区別をつけることが重要です。
単純な節税効果を期待して、高級外車のスポーツカーを購入したわけではないことが明らかになれば、税務調査で否認されるリスクも減らせるはずです。さらに、高級外車は購入費用も高額なので、節税だけでなく投資効果も期待できるでしょう。
ただ、税務調査に絶対的な法則はありません。高級外車のスポーツカーを社用車にしたい場合は、使用方法や車種やランクなど、顧問税理士と相談の上検討することをおすすめします。会社の経営状況にとって適切な方法で経費化を目指しましょう。