飲食代で節税!社外飲食費、福利厚生費、会議費を有効活用して経費計上

飲食代で節税!社外飲食費、福利厚生費、会議費を有効活用して経費計上経費で節税する
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経営者にとって飲食代は節税に活用できる経費のひとつです。とはいえ、経費に計上するにはいくつかの要件を満たす必要があり、すべての食事が経費に計上できるわけではありません。今回はこの記事で、経費にできる飲食代の種類や節税に活用する方法、注意点などについてご紹介します。

飲食代は節税に活用できる

税務上の基準を満たせば経費算入可能

食事は必ず発生するものなので、原則として飲食代は経費になりません。ただし、税務上の基準を満たすものについては、経費計上が可能であり、節税効果も期待できます。個人事業者やフリーランスの場合は必要経費として、法人の場合は損金算入が可能です。

また、飲食を提供された側の役員や従業員に対しても、通常は現物給与であり給与の課税対象となるところ、福利厚生費や業務に関連する支出など一定の条件を満たせば、所得税がかかることはありません。ただし、残業食事代として現金を渡すことや、食事手当として毎月の給料に上乗せするのは給与とみなされるため課税対象になるので注意しましょう。

経費にみなされる飲食代、みなされない飲食代

飲食代の中でも、経費に計上できるものと、できないものがあります。一般的に経費とみなされる飲食費の範囲は下記のような費用が考えられます。

  • 取引先を接待する際の飲食代
  • 取引先に渡すお土産代
  • 会議や打ち合わせに使用した会場費(ランチ代、夕食代)
  • 会議や打ち合わせの弁当代
  • 忘年会費用
  • お中元、お歳暮の費用

節税につながる飲食代の種類

節税に活用できる飲食代にはいくつか種類があります。
代表的なものを大きく分けると下記の3つとなります。

  • 交際費(社外飲食費に該当するもの)
  • 福利厚生費
  • 会議費

交際費のうち社外飲食費に該当するもの

特例として一人当たり5,000円以下はすべて経費計上可能

ひとつは一人当たり5,000円以下の交際費です。交際費は接待交際費とも呼ばれ、接待や供応、慰安、贈答など、事業にかかる飲食代をいいます。交際費を支出する相手は、得意先や仕入れ先など取引先をはじめ、株主や役員、従業員と、事業に関係ある人が対象です。

平成18年に行われた税制改正によって、交際費のうち、1人当たりの金額が5,000円以下の飲食代は社外飲食費とし、特例として交際費の範囲から除外され、経費計上できるようになりました。改正による変更で、目的が役員や従業員、親族への接待だったとしても、金額が一人当たり5,000円以下であれば、すべて損金算入が可能です。

社外飲食費に計上できる費用は幅広い傾向にあります。例えば、取引先との打ち上げや接待で豪華な食事やお土産を用意した場合の費用や、友人との情報交換や仕事の紹介を伴う食事などです。

カフェで作業をした場合でも、相手先の食事代を負担した場合は社外飲食費として認められることが多いでしょう。もしカフェを利用したのが一人であっても、仕事場所を確保するための支出であり、事業との関連性を説明できるのであれば、経費計上は可能です。さらに、ゴルフのプレー代金や忘年会、お中元やお歳暮など、飲食以外の費用を計上しても認められやすいです。

社外飲食費への計上には、社内飲食費でないことの証明が必要

ただし、適用されるには下記の条件を満たす必要があります。

社外飲食費の適用条件
  • 相手先が社外の人物であること
  • 社内飲食費ではないことを証明する帳簿書類の記録があること

社外の人物とは、取引先、株主、親会社やグループ会社の役員、従業員や、これから取引を始める可能性がある人も含める外部の人をいいます。自社役員や従業員、親族のみの場合は社内飲食費になるため、交際費では計上できません。

「社内飲食費」でないことを証明するには、飲食した日付、参加者氏名や相手先の名称及び関係性、参加人数、飲食場所の名称・所在地などの事項を記録します。

社外飲食費は個人事業主なら無制限、法人には上限あり

注意したいのは、社外飲食費は、個人事業主の場合無制限ですが、法人の場合損金算入できる金額に上限があることです。

また、明らかに贈答目的と分かる飲食物の購入費用については、社外飲食費ではなく、贈答費用になります。判断はすぐ消費できるかどうかが基準です。例えば接待の帰りに渡す折詰の料理は交際費(社外飲食費)として計上することが多いですが、調味料の場合は贈答費用にするのが一般的です。その他、タクシー代など、接待する会場の送迎費用についても計上できません。

社外飲食費の判断基準となる一人当たり5,000円以下は、消費税の経理処理によっても異なります。税込経理は税込で5,000円以下、税抜経理であれば税込5,500円以下となります。ただし消費税が免除される事業者の場合は税込経理になります。

一人当たりの飲食代については、飲食代の総額を参加人数で割って計算しますが、一次会、二次会など連続して飲食代を支払った場合は、原則として異なる店ごとに判定します。また、参加人数の数え方も、同じ会場で行う場合は合算して計算しますが、別々の会場で行った場合は別々に計算します。

5,000円以上は通常の交際費になる

一人当たり5,000円以上の場合は、社外飲食費ではなく通常の交際費となります。損金に算入し、経費として計上します。

福利厚生費

福利厚生費は社員の慰労や接待のために支出した飲食代です。例えばランチ代や弁当代、夜食代、忘年会の飲食代などは福利厚生費として経費計上し、節税につなげることが可能です。その他、休憩時に従業員のために提供する茶菓子代や、従業員全員で慰安旅行に行く場合の旅行代も福利厚生にできる場合があります。

プライベートか社用か、出費の区分には注意

ただし、原則として家族との飲食代は経費にできません。したがって、個人事業主、法人どちらも従業員が親族など身内だけで構成されている場合は、忘年会費用を経費計上するのは困難でしょう。明確な説明ができない限り、プライベートな支出か、社内行事かを区分しづらいからです。経営者の個人的な忘年会と判断されると、役員賞与として、法人と個人とに二重課税されることもあるので注意しましょう。

会議費

時間・社内外問わず、常識的な範囲で全額損金算入可能

会議費は会議や打ち合わせのために支出した弁当代や、来客のために用意する茶菓子代、残業食事代などです。一般的に、一人当たり3,000円~5,000円程度を限度に計上することが多いです。ただ、あくまで目安であり、会議費についての決まりはありません。会議費は交際費と違って、全額損金計上できるのが特徴です。

会議費は時間を問わず、社外で支出した費用も計上可能です。例えばランチミーティングをしたときのレストランやカフェの費用だけでなく、居酒屋、スナックなどの費用もOKです。残業食事代の場合、出前やファーストフード、コンビニ弁当、ファミレスなど一般常識として考えられる範囲の価格、商品であれば計上して問題ないでしょう。日本の場合、深夜まで仕事をする場合や、夜間に会議や打ち合わせを行うこともあるからです。

会議を行う相手も社内外問わず対象になります。社内の人間以外に社外の人が含まれる会議を行った場合も、会議費として問題ありません。

会議費は一人でも経費計上可能

会議費は、一人でも行っても経費計上が可能です。一人でも電話やスカイプなどのテレビ電話を通じて会議やランチミーティングなどの打ち合わせをすることもあるからです。打ち合わせの場所も、外出先のカフェやレストランで行うケースは考えられるため、一人で食事をした分も会議費として計上できます。

ただし、会議費用として認められるには、実際会議が行われたことを示す議事録の保管や、だれが参加しどこで行ったかをきちんと分かるようにしないといけません。また、会議の参加人数や金額によっては、交際費として扱われることもあります。

高級店や高級品、大量の飲酒は会議費に認められない

さらに、あくまで会議費なので、高級レストラン、高級仕出し弁当などは、会議費として認められない可能性が高いので注意しましょう。アルコールも多少は問題ないケースもあるようですが、大量に飲食した場合は否認されるのが基本です。支払いについても、個人事業主や企業側が食事を用意する、もしくは提供しなければ会議費としては認められません。

企業規模で異なる交際費と飲食代での節税割合

大企業:接待飲食費の50%

大企業の場合、交際費の限度額は接待飲食費の50%です。一人当たり5,000円以下の社外飲食費については、全額経費に計上可能と考えられます。大企業に分類されるのは、資本金1億円超の法人です。

中小企業:年間800万円または社外飲食費の50%

中小企業の交際費の限度額は、年間800万円(定額控除限度額)または社外飲食費の50%で、いずれか多い方を損金算入できます。限度額の範囲内であれば、飲食代を全額経費計上できるので、節税に活用できるでしょう。中小企業とは、資本金または出資金が1億円以下の法人をいいます。ただし大企業の100%子会社などは除外されます。

社外飲食費が1,600万円を超えるなら50%損金算入が有利

一般的に、社外飲食費が1,600万円を超える場合は社外飲食費の50%を損金算入するほうが有利です。800万円に明らかに満たなければ定額控除限度額を選択したほうがよいでしょう。

個人事業主:制限なし

フリーランスや自営業など個人事業主の場合は、交際費に制限がありません。飲食代は必要経費として全額認められます。

交際費に認められる範囲 企業規模別まとめ
交際費に認められる範囲経費計上
大企業接待飲食費の50%
(一人当たり5,000円以下の社外飲食費)
中小企業年間800万円または社外飲食費の50% いずれか多い方
個人事業主制限なし

飲食代を経費計上し、節税する方法

領収書の裏にメモをしておく

節税のため飲食代を経費に計上するには、まず領収書をもらい、保管するのが第一です。とはいえ、領収書だけでは単なる食事代との違いが明確になりません。証拠能力を持たせるためにも、領収書の裏に下記の項目をメモしておきましょう。領収書にメモしたあとはスケジュール表にも同じようにメモを残しておきます。

  • 支払い内容の名目(打ち合わせなど)
  • 会議や打ち合わせをした人の氏名(名字だけでもOK)
  • 支払い方法(現金やカード払いなど)

相手の会社名や氏名は原則正式名称が必要ですが、不明な場合や多数の参加者がある場合は、参加者が真正である場合に限って、「○○会社・□□部・△△部長他5名、仕入れ先」などとしてもかまいません。

割り勘のときは領収書を人数分で分けてもらう

飲食代を割り勘した場合も、自分が負担した分の費用は経費に計上し、節税に活用できます。店側に領収書を人数分で分けてもらいましょう。

領収書やクレジットカード売上票を保管しておく

飲食代の経費計上には、領収書以外にクレジットカード売上票(お客様控え)やレシートを保管しておきましょう。

飲食代を節税に活用する場合の注意点

適切な手続きを取らないと飲食代を経費にできない

飲食代を節税に活用するには、いくつかポイントを抑える必要があります。ここまでご紹介した通り、企業規模によって経費に認められる項目や金額の上限が異なりますし、高級な食事代については経費として認められないこともあるからです。

また、損金算入する際は、社外飲食費を会議費として計上するなど、別の勘定科目で処理するようなミスにも注意しましょう。

もちろん、飲食に参加した人数を水増し計上するのもNGです。一人で外食をしたり弁当を買ったりしただけなのに、一人会議をしたようにカモフラージュするのも避けましょう。もし税務調査が入った場合、意図的であれ、ケアレスミスだった場合であれ、不正経理ととられる恐れがあるからです。最悪重加算税という重いペナルティが課せられるかもしれません。

一度不正をして発覚すれば、隠ぺいしたという履歴が残り、その後も税務調査の対象になりやすくなります。手続きや処理は適切に行いましょう。

福利厚生費は全社員を対象にしないといけない

飲食代を福利厚生費に計上するには、全社員を対象にする必要があります。あまり多く計上すると会社の経営を圧迫する危険があるので注意が必要です。経営者や役員だけ、あるいは一部の従業員のみに提供した食事代は、福利厚生費として認められないだけでなく、給与として課税対象になる可能性もあるので気を付けましょう。

また、一人会社や家族経営の法人、個人事業主の場合、残業食事代を福利厚生費で計上した場合も、否認される可能性が高いです。個人的な食事代として明確であると区分されやすいからです。

すべての飲食代を経費計上すると否認される可能性も

取引先や従業員との食事代や一人分の弁当代など、企業規模に応じ適切な処理をすれば飲食代を経費に計上できますが、すべてを社外飲食費として計上するのはおすすめできません。税務調査が入った場合、否認される可能性がありますし、追徴課税のリスクもあるからです。ただし、すべての支出が明確に、「事業に関係がある人に対する支出である」と証明できる場合は、経費計上しても認められるでしょう。

自宅近くの飲食代は疑われやすい

もし税務調査が入った場合、自宅近くの飲食代も個人的な食事ではないかと、疑われやすい傾向にあります。自宅兼事務所の場合は問題ないこともありますが、事務所や会社が離れた場所にある場合は、自宅近くの飲食代は経費計上しすぎないほうがよいでしょう。

ただし、自宅近くの飲食代であっても、明確に事業に必要な支出だと証明できる場合は、経費として計上しても問題ないと考えられます。

会議費の使い過ぎに注意

食事代や弁当代を会議費として経費にすること自体は問題なく、夜食の場合も、会議費として計上すること自体は問題ありません。明確に事業に必要な支出であると証明できる場合は、すべて経費計上しても認められるでしょう。

しかし、はっきりと事業に関係がある人に対する支出であると証明するものがない場合は、頻繁に使いすぎると疑われる可能性も考えられるので注意しましょう。毎日のようにランチ時間に一人分の会議費が計上されていると不自然ですし、個人的なご飯代だろうと疑われることもあるからです。

出張時の飲食代は毎回の経費計上を避ける

会議費については、出張時の飲食代を計上するときも注意が必要です。出張先で打ち合わせや、電話やテレビ電話を使って会議をすることもあるでしょうが、毎回とは考えられないからです。税務調査では指摘されやすいので、明らかに一人分と分かるような朝食代やランチ代を頻繁に計上するのは避けたほうが無難です。ただし本当に打ち合わせした場合や、一人分でも打ち合わせをして割り勘をした場合などは、社外飲食費で経費に計上可能です。

領収書の不備がないか確認しておく

飲食代を節税に活用するには、領収書の不備があってはいけません。店側から受け取った領収書は必ず、記載漏れや間違いがないか確認しましょう。店名や住所、電話番号が漏れていることや、ハンコが押されず渡されることはよくあることなので、漏れがないか毎回チェックすることが大切です。

領収書に記載が必要な項目
  • 飲食をした日付
  • 店名や会社名
  • 飲食した店舗の住所
  • 飲食した店舗の電話番号
  • 支払った金額
  • 商品やサービスの内容を示す但し書き
  • 領収書に押印があること

飲食代を経費として節税に活用しよう

飲食代の費用や内容ごとに適切な経費計上を

飲食代のうち会議や打ち合わせ、接待などであれば、社外飲食費や福利厚生費、会議費などで経費計上が可能です。上手に活用すれば、節税にも効果が期待できるでしょう。

ただ、通常、食事は経費としてみなされないものなので、経費計上には一定の要件があります。項目や金額の上限についても、企業の規模によって異なります。経費として認められるためにも、領収書の保存やメモをするなど、証拠となるよう記録を残すことが大切です。

経費に計上できれば大きな節税効果も見込める飲食代ですが、細かいルールがあり、正しい知識がないと税務調査で疑われる可能性があります。もし税務調査で否認され、悪質と判断されてしまえば、追徴課税や重加算税のリスクもあることを考慮したいところです。少しでも処理に不安がある場合は、顧問税理士に相談しながら処理を行い、節税につなげることをおすすめします。

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