資金繰りの失敗でよくあるパターン〜倒産回避のための見直しのポイント

資金繰りの失敗でよくあるパターン〜倒産回避のための見直しのポイント資金繰り・資金調達
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資金繰りの失敗は、会社経営にとって倒産にもつながる致命傷です。資金がなければ、事業を円滑に進められなくなるからです。手元の資金が少なくなると、会計上は黒字でも倒産のリスクが生まれます。今回はこの記事で、資金繰りを失敗しやすい例や、倒産を防ぐためのポイントなどについてご紹介します。

資金繰りの失敗は倒産に直結する

お金の流れが悪くなり倒産の危機に

資金繰りの失敗は倒産に直結する、会社経営の根幹にかかわる問題といえます。資金は人間でいうところの血液のようなものであり、資金繰りは会社のお金の流れだからです。人間の血液が不足したり滞ったりすると命が危うくなるのと同じで、資金も循環しなくなると会社の経営自体が回らなくなります。

例えば不渡りを出すとほとんどの場合会社は倒産します。不渡りとは手形決済の資金調達ができなかったときに発生するものであり、資金繰りの失敗によって起こるからです。

資金繰りは「このままだと資金繰りが苦しく、倒産するかもしれない」と慎重に考え、早めに手を打つことが大切です。問題が起こっても、早めに行動すれば対処できることも多いですが、時間が経てばたつほどできることも少なくなっていくからです。「なんとかなるだろう」と考えていると、取り返しのつかないところまで経営が悪化するかもしれません。

黒字で倒産の可能性も

資金繰りの失敗は、会計上の数字だけ追いかけていても起こる可能性があります。いわゆる黒字倒産です。

黒字倒産とは、損益計算書上は黒字でも、手元の資金(現金)がなくなることで起こります。会計上は一見儲かっているように見える状態でも、資金繰りによって会社の資金(現金)の循環を健全な状態に保たなければ、急に倒産することになるかもしれません。

資金繰りを失敗しやすいパターン

資金繰りを失敗するケースは、売上の減少や保証人を引き受けたことによる過失など、さまざまなケースがあります。
中でも失敗につながりやすいパターンを、いくつか見ていきましょう。

キャッシュフローが把握できていない

資金繰りを失敗しやすいパターンのひとつには、キャッシュフローの把握ができていないケースが考えられます。

キャッシュフローとは、会社のお金の流れを意味します。キャッシュフローが把握できていないと資金繰りに失敗しやすいのは、会社にいくらお金が入ってきて、いくらお金が出て行ったか、今いくら会社に使えるお金があるかが分からず、資金繰りの悪化にも気づきにくくなるからです。

経営者の中には、売上ばかりに目が行く人もいます。ですが、いくら売上が多くても、仕入れ代や人件費などの経費を差し引いていくら残るかを把握することが重要です。
売上より経費のほうが多くなると、利益は残らないどころかマイナスになるからです。

もちろん、ある程度資金や利益が残っていれば、すぐに倒産につながることはないでしょう。
しかし、売上だけで会社の状態を把握していると、いつか資金不足に陥り、いつのまにか経営が苦しくなるリスクがあると考えられます。

資金の留保ができていない

資金繰りの失敗には、運転資金が確保できていないケースも考えられます。
業種によって多少の差はあるものの、運転資金は、1か月に必要な資金(現金)の3か月分を目安に確保するべきといわれています。
当面の運転資金が確保できていれば、経営を立て直す時間やチャンスを得ることもできるでしょう。
一方で、運転資金をしっかり留保できていないと、手元の現金が底を尽いた途端、倒産に直結することもあるでしょう。

一時的な赤字解消のために資金調達を繰り返している

資金繰り改善のため、資金調達を行うのは手段のひとつです。たとえ目的が赤字補填のためであっても、会社の運営を続けるために融資を受ける必要もあるでしょう。
しかし、一時的な赤字補填のために資金調達を繰り返すことは、資金繰りの失敗を引き起こす可能性があります。
資金調達によって資金繰りが楽になっても、対策を取らず赤字体質のままでいる限り、根本的な解決にはならないからです。
一時的に現金が増えても、その現金がなくなれば再び資金繰りは苦しくなるでしょう。

特に融資等で借入をする場合は、いくらマイナス分を補うための資金調達であっても、借入は借入であり、返済しなければなりません。
場合によっては、赤字解消のために借入をして、さらに借入金を返すために新たな借入を行うことになり、どんどん借金が増え、資金繰りは悪化するリスクもあるでしょう。

資金繰りで失敗しないためにできること

資金繰り失敗の原因はさまざまなケースが考えられますが、まずは失敗しないための対策を取ることが大切です。資金繰りを円滑化し、少しでも変化があればすぐに気づき対処できるように、ポイントを押さえておきましょう。

キャッシュフローを見直す

資金繰り失敗を防ぐためにできることのひとつが、キャッシュフローの見直しです。キャッシュフローを見直すことで、会社の現預金の増減を把握しやすくなるからです。

キャッシュフローの見直しには、キッシュフロー計算書を活用しましょう。キャッシュフロー計算書とは、一定期間に入ってくるお金(キャッシュイン)、出ていくお金(キャッシュアウト)をまとめ、会社のお金の流れをチェックする計画書です。

キャッシュフロー計算書は、金融機関に融資を申し込む場合も必要になることが多いです。
金融機関が融資をするかどうか決めるポイントは、返済能力の有無を判断する指標になるからです。

請求・支払いのタイミングを確認

キャッシュフローでは、得意先への請求、仕入れ先への支払いのタイミングも確認しましょう。

得意先への請求は、できる限り前払い制となるよう交渉することで、資金確保がしやすくなります。
全額前払いが難しい場合も、分割や着手金だけでも前払いしてもらうなど、少しでも資金確保につながる方法を検討しましょう。

売掛債権の回収についても、入金予定をしっかり把握する必要があります。
期限を超えた分については、早い段階で連絡をして、確実に回収できるようにしましょう。時間とともに回収が難しくなるからです。

一方、仕入れ先等への支払いも、滞りなく行うことが大切です。遅れると会社の信用にも関わるからです。
仕入れ先への支払いについては、交渉できるようであればできるだけ後払いにするほうがよいでしょう。例えば月末締めの翌月末払いなどです。翌月以降の支払いとなるクレジットカードを活用するのもひとつです。
その他、従業員に対する給与の支払いも、他の支払い日を考慮するなど検討が必要です。一般的には、月末に近い25日払いに設定するケースが多いです。

削減できる経費がないか見直す

キャッシュフローで会社から出ていくお金を確認する際は、経費の見直しも必要です。
会社には、人件費や家賃など毎月の必要となる固定費がありますが、見直すことで今より支出を抑えられるケースもあるからです。コストを抑える方法がないか模索することや、何か購入する場合は複数見積もりを取って、少しでも安く購入する方法を探すなどして経費削減に努めましょう。

一つひとつは大きな経費削減にならないかもしれませんが、毎月積み重なることで年間を通じて大きなコストカットにつながる可能性もあります。少しでも会社に残るお金を増やせれば、資金留保の効果も期待できるでしょう。

数か月先まで資金繰り表を作成し、確認する

資金繰りの失敗をしないためにできることには、資金繰り表を作成する方法も有効です。資金繰り表は、資金の出入りを予測、確認するものです。具体的には、前月の現金の預金残高と、今月の収入・支出をまとめ、翌月に繰り越せる金額や現金の残高をチェックします。

資金繰り表を作成することによって、売掛金の回収予測、支払い計画の確認などができ、収入が支出を上回るよう調整をすることも可能です。さらに、運転資金は余裕があり、適正な額を留保できているかなど、経営が順調かどうかを確認することができます。順調であれば設備投資を検討することや、借入金の繰り上げ返済を検討することなども可能です。

一方、資金が不足気味であれば、売上減少や債権の未回収など原因の特定につながり、必要であれば資金調達など改善方法を模索することもできるはずです。

資金繰り表はできれば1年を見通せるものを

資金繰り表を作成する場合は、3か月以上、できれば1年を通して見通せるように作成するのがよいでしょう。
金融機関に融資を申し込む場合、資料として提出することも多いからです。

また、資金繰り表は社長が一人で作成し、確認するのではなく、経理や実務担当者とも協力して行うほうがいいでしょう。
社長には取引銀行との交渉や資金調達先の開拓、仕入れ先との交渉などさまざまな役割があり、資金繰りまで行うと一人で負担を抱えこむことになるからです。

貸し倒れを回避するための対策をとる

資金繰り失敗を防ぐには、貸し倒れの回避も重要です。

貸し倒れとは倒産等の事情により、売掛金が回収できなくなることです。取引先から売掛金が正常に回収できないと、自分の会社の資金繰りにも影響します。資金不足はもちろん、売掛金の回収したお金で仕入れ先への支払いや借入金の返済に充てる予定の場合、できなくなるでしょう。つまり、貸し倒れが起こると自社も資金不足になり、連鎖倒産が起こるリスクがあるということです。

貸し倒れを防ぐには、取引先や取引が順調か、リスクはないか与信管理を徹底し、万が一貸し倒れが起こっても最小限の影響に抑えるため、対策する必要があります。例えば、1つの得意先だけに過度な依存をするのを避けたり、早い段階で資金調達を行ってゆとりを持ったりする対処法などが考えられます。資金調達の方法には、自己資金や融資以外に、出資を募ることや補助金、助成金を活用する方法などもあります。

取引する銀行についても、複数行と関係を築いておくほうがよいでしょう。1行取引だと、万が一緊急で融資が必要な場合、断られるとどうしようもないからです。金融機関も、融資のスタンスを突然変えることがあるので、どんなに良好な関係を築いていても、他の金融機関との取引も選択肢に入れておくほうが、資金調達面での安全性は高まるでしょう。

資金繰りの失敗は事業運営の危機に直結

キャッシュフローや資金繰り表を活用して適切な管理を

会社を経営し続けるために資金の確保は重要であり、資金繰りを失敗すると倒産にも直結する致命傷にもなりかねません。
キャッシュフローの把握ができていなかったり、適正な運転資金の確保ができていなかったりすると、資金繰りを失敗しやすいです。
また、一時的に赤字解消をするため資金調達を繰り返すことも、かえって悪循環に陥り、経営危機につながる場合があるでしょう。

資金繰りの失敗から倒産を引き起こさないようにするには、キャッシュフローを見直し、資金繰り表を作成してお金の流れを把握することが大切です。
請求や支払いのタイミングを確認し、コストカットできるところは対応していきましょう。

さらに、貸し倒れから連鎖倒産しないためにも、複数の取引先を持ったり、資金調達手段を確保したりして、リスクマネジメントをすることも重要です。
常に適正な資金が会社にある状態を保てるよう、こまめにチェックしていきましょう。

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