資金繰り悪化8つの原因!会社のお金不足に取るべき対処法

資金繰り悪化8つの原因!会社のお金不足に取るべき対処法資金繰り・資金調達
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会社経営者のほとんどは、資金繰りが悪化するとお金が不足し、最悪は倒産リスクも生まれることを理解しているでしょう。ただ、会社経営の場合、たとえ黒字経営の場合や、売上が増えている会社でも、いつの間にか資金繰りが悪くなっていることもあるのが難しいところです。今回は資金繰りが悪化につながりやすい原因や、会社のお金が不足したときにできる対処法についてご紹介します。

なぜお金が不足する?会社の資金繰り悪化の主な原因

売掛金回収までの期間が長い

会社のお金が不足し、資金繰りが悪化する原因のひとつには、売掛金回収までの期間が長いことが考えられます。法人間の取引は、仕入れの際その都度代金を支払う現金取引ではなく、月に一度まとめて代金を支払う「掛取引」を行うことが多いです。

掛取引は支払いが一度ですむのがメリットですが、商品を販売した分は、納品後に代金を受け取るまで時間がかかることになります。売上代金(売掛金)の入金までの期間が長く、その間に支払いが発生すると、会社のお金は少なくなり、資金繰りにも影響します。

在庫管理ができていない

在庫の状況も会社の資金繰り悪化の原因になることがあります。例えば売上以上に不良在庫が多いと、仕入れにかかった費用や人件費の回収ができず、支出ばかりの状態になります。在庫の分、保管コストも発生するでしょう。会社によっては、まとめて仕入れを行っているかもしれません。ですが、まとめて仕入れたほうが安くなるからと、売上につながる見込みがないまま仕入れ過ぎて不良在庫を抱えるケースも少なくありません。

売上のチャンスを逃さないために、ある程度の在庫は必要です。かといって、せっかく利益が上がっても、それ以上に不良在庫が多ければ、資金繰りを悪くする可能性があるので注意が必要です。

採算のとれない事業の増加

会社のお金不足や資金繰り悪化は、赤字事業のように、採算が取れない事業の増加が影響しているケースもあります。利益が出ていない商品やサービスなどを放置していると、その分無駄なコストがかかります。大きな赤字でなければ、放置していてもすぐに会社のお金を圧迫するほどの問題にならないかもしれません。

しかし、どんな事業でも、継続するには維持管理費用が必要です。長期間赤字が続いたり、複数の事業で採算が取れない状態になったりすれば、知らない間に必要以上のお金を失い、いつの間にか資金繰りが悪くなる可能性があります。

赤字受注や人材流出などによる売上の減少

採算の取れない赤字の仕事を請け負うことや、大口受注の消失、優秀な人材の退職などによる売上減少も、資金繰り悪化の原因になります。

なお、売上の減少については、利益率の低さが影響することもあります。一見、売上が好調に見えても利益率が低ければ、思うような利益を得られなくなるからです。

大口受注や先行投資によるコスト拡大

大口受注などで売上が大きく増加する場合や、事業拡大に伴う先行投資でも、会社のお金が不足し、資金繰り悪化につながるケースがあります。

例えば大口受注や事業拡大のため、設備や仕入れ、新たな人材雇用などに先行投資することはよくあります。ですが、先行投資した分の返済原資を売上で賄うつもりだった場合、売上が増えなければ返済に回すお金がなくなります。無理な資金調達を行うほど、資金繰りも悪くなるでしょう。

また、売上が増えても、資金繰りは苦しくなることも考えられます。例えば商品を製造・販売している会社で、急激に商品の販売数が増加したとします。商品が売れれば売上も上がりますが、その分製造量を増やすため、原料の仕入れ代も増えるはずです。

仕入れを増やした分、同じように商品が売れれば、最終的に仕入れにかかった費用は回収できるかもしれません。ですが、在庫が残っている間はお金が入ってこないので、回収まで資金繰りは苦しくなることがあるでしょう。

借入金返済額の増加

売上や利益に対し、金融機関からの借入金返済額が増えることも、会社のお金不足の原因になります。1年間の返済限度額は、「減価償却費+税引き後当期純利益」といわれています。つまり、年間の返済額が、「減価償却費+税引き後当期純利益」を超過した状態が続くと、資金繰り悪化することになります。

なお、借入金が入金されると、一時的に会社のお金は増えますが、将来的に返済するお金であることを忘れないようにしましょう。経営者の中には、借入金と純粋に会社が売り上げたお金とを混同し、お金を使いすぎて資金繰りが悪化するケースもあるからです。

過剰な配分・配当

会社の利益が十分に出ていない状態で、過剰な役員報酬や株主配当を出すことも、会社のお金不足や資金繰り悪化の一因となります。

せっかく利益が出ても、適正な役員報酬を配分しなければ、利益を減らしてしまいます。過剰な役員報酬の配分ゆえに赤字決算になるケースは少なくありません。役員報酬は1年ごとに見直すことができるので、前年の利益率に応じ、適正な額を検討しましょう。

また、株主への配当は、利益剰余金から支払うのが一般的です。当然ですが、利益が出ていないのに配当を渡せば、その分会社のお金は減ることになります。利益が出ていない年は配当をしないのはもちろん、配当をする場合でも適正な額にすることが大切です。

資金繰りが把握できていない

資金繰りの悪化は、資金繰り状況を把握していないために起こることも多いです。売上だけ把握し、実際のところ何に利益や赤字が出ているか、会社にどの程度お金があるかを把握していなければ、資金不足に陥ることも少なくありません。部門ごとの採算性を確認したり、資金繰り表を作成したりと、常にお金の動きをチェックしていなければ、いつの間にか会社のお金がなくなり、資金繰りが悪くなる可能性があるでしょう。

会社の資金繰りが悪化すると経営状況はどうなる?

赤字経営

会社の資金繰りが悪化すれば、赤字経営に陥りやすくなります。資金繰りは、利益が出るだけでなく、適正な入金や在庫があり、適正な支払いや借入を行ってこそ、円滑に回っていくものです。会社のお金が不足した状態が続けば資金繰りが回らず、長期的に赤字経営が続く可能性も出てくるでしょう

売掛債権の貸し倒れによる連鎖倒産のリスク

売掛金の回収期間が長いと、資金繰りが悪くなるだけでなく、取引先の倒産による貸し倒れのリスクも生まれます。もし、取引先が急に倒産し、将来的に会社に入るはずだった売掛金を回収できなくなれば、会社自体も連鎖倒産の危機に陥るかもしれません。

黒字倒産

会社によっては、売上が伸びていても会社のお金が不足し、倒産するケースもあります。いわゆる黒字倒産とよばれるものです。

帳簿上利益が出ていても、売掛金を回収できずにいたり、回収の遅れが重なったりすると会社にお金がない状態になります。手元に現金がないことで、金融機関への支払いや手形の決済などに遅れが生じると、倒産の危険も高まります。

黒字倒産は、帳簿上は利益が出て、一見業績がよく見えることから、資金繰りの悪化に気づくのが遅れやすいので、注意が必要です。資金繰りが悪化していると気づいた場合は、すぐに原因を特定して対策を行いましょう。

資金不足に陥りやすい業種

建築・建設業

資金不足はどの業種でも起こりうることですが、売掛金の回収期間が長い業種では起こりやすいといわれています。例えば建築・建設業です。住宅やビルなどの建築や、道路工事などは、工事にかかる期間が数か月ほどかかることもよくあります。完成するまで入金がなければ、資金繰りが悪化することもあるでしょう。

アパレルメーカー

アパレルメーカーも資金不足に陥りやすい業種のひとつといわれています。アパレル業界では夏の間に冬物を生産し、冬に向けて販売するなど、季節を先取りするのが一般的です。ですが、売れることを予測して先に材料の仕入れを行うため、商品が売れてお金が入ってくるまでの期間が長くなります。

さらに、売れると思っていた商品が売れない可能性もあるでしょう。一方、売上代金が入ってくるまでの間に、材料代や給与の支払いは必要となることから、資金繰りが悪化することが少なくないようです。

貴金属店

資金不足が起こりやすい業種には、宝飾店のような貴金属店なども挙げられます。毎日必ず商品が売れるとは限らない上に、流行の移り変わりにより仕入れた商品が売れにくくなることもあるからです。営業力や販売力が弱いと、資金繰りの悪化に陥りやすくなるでしょう。

会社の資金繰り悪化から脱却する方法

売掛金の回収サイトを早める

会社のお金が不足し、資金繰りが悪化していることに気づいたら、速やかに対策を取る必要があります。改善策のひとつは、売掛金の回収サイトを早めることです。売掛金は回収してはじめて会社のお金になります。いかに売掛金を早く回収するか、回収期間を短くして売掛金の残高を減らせれば、資金繰り改善にもつながるでしょう。

売掛金の回収サイトを早める方法としては、スピーディな請求書の送付や、入金が遅れている取引先への早めの督促など、売掛金の管理を徹底することがあげられます。

可能であれば、取引先へ回収サイトを短くする条件交渉を行うのも効果的です。交渉は難しいことも多いですが、信頼関係がある取引先であれば、話をしてみる価値はあるでしょう。あるいは、取引先から値下げの要求があった場合は、値下げを受け入れるのと引き換えに、売掛金の回収条件を変更し、回収サイトを早める交渉をするのも方法のひとつです。

支払いサイトを長くする

売掛金の回収サイトを短くする一方で、外注先や仕入れ先などに対し、支払い期間を延ばせないか交渉してみましょう。お金の入ってくる時期と、支払い時期とを近づけることで、資金不足解消のきっかけや、さらなる資金繰りの悪化を防げるはずです。

さらに、支払いサイトが伸びれば、所用運転資金を減らすことができ、手元にお金が残りやすくなります。手元にお金が残りやすくなれば、現金払いを掛払いに変更するなど、支払い計画の見直しもできるでしょう。

会社の余分な経費や固定資産の削減

会社のお金不足を解消するには、余分な経費がないか見直し、無駄なコストを削減する必要もあります。例えば仕入れ先を見直す、無駄な残業がないかチェックするなどです。

可能であれば、家賃の安いオフィスへ移転するなど固定費も見直し、人員整理やアウトソーシングの活用も検討しましょう。その他、役員貸付金や仮払金などの名目で、経営者が私的な用途でお金を使っている場合は、会社に返済することも大切です。

経費以外に固定資産も見直しましょう。使っていない不動産があれば、売却して現金化することで、余分な固定資産税や電気代の支払いをなくすことができます。

不動産以外に、予想した収益を得られなかった株式もあれば、処分を検討しましょう。収益が得られなかった株式は、売却することで損失を最小限にとどめることができますし、売却金を借入金の返済に充てることも可能です。

余剰在庫を減らす

余剰在庫を減らすことも、資金繰りが悪化したときの対処法のひとつです。一定期間以上を経過した在庫や、売れにくくなった商品在庫については、早めに処分するほうが保管コストもかからず、資金繰りの面ではプラス効果が見込めます。売れ残りとして処分するか、セールなど値下げをして在庫を一掃しましょう。

余剰在庫を処分するには、何が売れているか、あるいは売れにくくなったかなど、日ごろから管理を徹底することも大切です。さらに、在庫を保有するのは売れ筋商品に限るなど、売れ残りを防ぐ取り組みも行いましょう。可能であれば受発注制にするなど、在庫を持たないシステムを構築するのも効果的です。

事業内容や採算性の見直し

会社のお金が不足しているときは、事業内容や採算性も見直すことも大切です。例えば、大口受注の依頼があった場合には、受注前に資金繰り計画を確認し、資金繰りが回るか検討しましょう。

設備投資が必要な場合も、確実な売上が見込めるか、マーケティング等を行い慎重に判断することが大切です。複数の事業を手掛ける会社であれば、赤字事業の縮小や、場合によっては撤退を検討し、資金繰りの健全化を図りましょう。

資金繰り表の作成・管理

資金繰りの悪化は早めに気づいて対処する必要があります。少しでも早く気づくためには、資金繰り表を作成・管理することが有効な手段です。

資金繰り表は現金の動きに焦点を当てた資料なので、入金予定や支払予定の管理や、会社のお金にどの程度余裕があるか、あるいはどの時点でいくら不足することになるかを把握することができます。特に、お金が不足するタイミングを把握できれば、借入など対応策を早めに打ち出し、資金繰りの悪化を未然に防ぐこともできるでしょう。

銀行融資等による資金調達

資金繰りが苦しい場合には銀行融資やビジネスローンの借入などによる資金調達を検討する選択肢もあります。建設業のような、入金までの期間が長い業種によっては、つなぎ融資を受けられるかもしれません。

新規の借入に限らず、既存の借入金についても、現状より低金利で借りられる他の金融機関があれば、借り換えをするのもひとつです。事業実績があれば、交渉次第で借入金利を下げることもできるでしょう。金利が下がれば総返済額も減るので、返済負担も軽くなるはずです。

借入金返済のリスケジュール

すでに金融機関から借入をしている状態で、資金繰りが苦しい場合は、金融機関に対しリスケジュールを依頼するのもひとつです。

リスケジュールが認められ、返済期間を当初より長くすることができれば、毎月の返済負担を減らすことができ、資金繰りの悪化も食い止められるでしょう。ただしリスケジュールは銀行の信用を損なうリスクもあるため、慎重な判断が必要です。

販路開拓や価格見直しで利益を増やす

当然のことですが、営業や販売を強化して利益を増やすことも、会社の資金繰り改善には効果的です。営業や販売の強化方法としては、例えば、販売ルートを増やす、新規顧客や大口顧客を開拓する、リピート率を引き上げるなどが考えられます。あるいは、価格の見直しや新商品の追加による客単価の引き上げることで利益を増やす方法もあるでしょう。

資金繰りを把握して会社のお金不足や経営悪化を防止

資金繰り悪化の原因ごとに見合った対処を

会社の資金繰り悪化には、売上が減っているだけでなく、さまざまな原因が関係している可能性があります。売上が上がっていても、未回収の売掛金や過剰在庫を抱えていれば、手元のお金は不足し、資金繰りは悪くなるでしょう。資金繰りが悪いのに気づかず経営を続けると、赤字経営はもちろん、最悪は黒字倒産する危険もあり注意が必要です。

少しでも早く資金繰りの悪化に気づくには、日ごろから資金繰り表を作成・管理し、会社のお金の状況を把握しておくことが重要です。また、資金不足になりそうな場合は、入金と支払いのタイミングや、会社の事業内容や在庫状況を見直すなど、改善策を見つけて実行していきましょう。

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