事業計画書の書き方~日本政策金融公庫「創業計画書」融資審査通過のポイント

事業計画書の書き方~日本政策金融公庫「創業計画書」融資審査通過のポイント資金繰り・資金調達
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日本政策金融公庫の創業計画書の書き方は、覚えておくと、ほかの事業計画書を書く際のヒントにもなることが多いです。事業を始めるにあたって資金調達を検討する場合、日本政策金融公庫を利用することを考える人も多いでしょう。今回はこの記事で、融資の審査に通りやすくするために、書き方のポイントについてご紹介します

日本政策金融公庫の創業計画書を書く前に

事業計画書と日本政策金融公庫に提出する創業計画書との違い

日本政策金融公庫に提出する創業計画書は、大きく分類すると事業計画書のひとつといえます。ただ、創業計画書は、新しく事業を始めた人などが、初めて融資を受ける場合に提出する書類です。事業計画書は初めて融資を受ける場合だけでなく、追加融資を受ける際も提出することになるのが異なる点のひとつといえます。

創業計画書は「今後、順調に進み、きちんと返済できる事業プランがあること」を伝えるもの

創業計画書を提出する目的は、借入金をきちんと返済できる根拠を伝えることです。借入をすることで今後事業が順調に進む見込みがあることを示します。

創業したばかりの会社は、事業実績や借入の返済実績もありません。日本政策金融公庫側としては、本当に事業で利益が出るのか、借入金を返済してもらえるのかが不安であり、安易に融資ができない状態といえます。「融資しても返済の見込みがある、将来性のある会社」と判断してもらえるような創業計画書を作成することが大切です。

新創業融資を受けられるのは創業~2期以内の企業>

日本政策公庫で創業計画書を作成する場合、新創業融資を申し込むことになります。新創業融資は、新たに事業を始める、または事業開始後税務申告を2期終えていない場合に設備資金や運転資金の融資が受けられる制度です。つまり、創業~創業2期以内の企業のみ、融資を申し込むことができます。

事業計画書の書き方は?日本政策金融公庫の創業計画書の作成手順

日本政策金融公庫の創業計画書は、公式サイトからダウンロードが可能です。創業計画書を見ると、9つの項目から成り立っています。

創業計画書には決まった書き方や正解があるわけではないので、熱意や具体的な予測を自分自身の言葉で伝えることが大切です。とはいえ、熱意だけでも必ず融資が通るとは限りません。融資が通りやすくなるようなポイントを押さえて作成する必要もあります。

創業計画書の書き方を知っておけば、ほかの事業計画書を作成するときにも役立つことが多いので、項目ごとに書き方のポイントを押さえておきましょう。

創業の動機

日本政策金融公庫の創業計画書では、まず創業の動機を記入します。「なぜこの事業を始めたいと思ったのか」、「誰に、どんな役に立つか」などを書きましょう。

注意したいのは、漠然とした動機にならないようにすることです。どんな業種でも創業にはリスクがつきものです。「なんとなくやってみたかった」、「ただお店を開きたかった」など漠然としたものではなく、リスクを負ってまで創業する理由について示すようにしましょう。

また、熱意ややる気だけでなく、事業を運営できるだけの能力や背景があることを示すことも大切です。例えば、創業するビジネスが、今までの経験と関連があったり、経験を活かせたりするものだとよいでしょう。

あるいは、ビジネスを軌道に乗せる準備があり、創業したことを伝えるのも効果的です。例えば顧客をすでに確保していて創業するに至った場合、具体的な数字を使って継続的な集客が見込めるなどを示すとよいでしょう。

ポイント

  1. 事業を始めたいと思った理由、考えられるニーズ
  2. 事業を通じて実現したいこと
  3. 事業を運営するだけの能力や背景があること

経営者の略歴等

創業計画書における経営者の略歴等の項目は、卒業した学校や勤務した会社についてまとめる部分です。履歴書や職務経歴書を作るイメージに近いでしょう。

略歴については、創業計画書の中でも注目されやすい部分です。どんな勉強や業務を何年してきたか、得られた経験や実績など、数字を使って具体的に記入し、創業に至った背景を示すとともに、経営者としての資質をアピールしましょう。記入欄に収まらなければ、別紙にまとめて添付してもかまいません。

「年月」の欄は和暦で記入します。記入する時点でまだ会社に勤務している場合は、退職予定の月と日を書きます。

「内容」欄には勤務先の名称、配属された部署、主な業務内容、勤続年数などについて記入します。学歴については、事業に関連する情報があれば学んだことや、得られた経験などを書きましょう。

直近の勤務先については、給料の額面金額も記入します。直近の収入を書くのは、融資担当者が「必要な資金と調達方法」欄に記入する自己資金との整合性を見るためです。年収の高い・低いで判断されるわけではないため、正直に記入しましょう。まだ勤務先に在籍している場合は、「退職予定」とし、退職金の予定があれば額面も記載します。

ポイント

  1. 年月は和暦を使用する
  2. 卒業した学校や勤務してきた会社の正式名称
  3. どのような勉強をしてきたか、得られた経験(例:語学留学してTOEICで〇点獲得、資格取得、培った人脈等)
  4. どのような業務に就き、何年勤務したか
  5. 勤務する中でどのような実績ができたか(例:売上が〇%アップした、新規顧客を〇人獲得した等)
  6. 直近の収入

過去の事業経験

「過去の事業経験」欄は、事業経営の経験の有無について回答する項目です。該当するものがあればチェックを入れましょう。さらに、過去に事業経験があり、継続している場合は事業内容を記入します。また、事業経験があってもすでに辞めている場合はやめた時期を書き込みましょう。

過去の事業経験について記入するのは、融資担当者が「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」の対象になるかどうかを判断するためです。再挑戦支援資金とは、過去に行っていた事業において廃業したり倒産したりした人物が、再び起業するときに利用できる融資制度です。

過去の事業経験を記入することで、創業のつもりだったのが、融資基準によって「継続事業」と判断されることもあります。継続事業と判断された場合は、日本政策金融公庫の別の融資制度を案内されることになるでしょう。

取得資格

取得資格欄は創業に関連する資格があれば「有」にチェックを入れ、記入します。保有資格に番号がある場合は、合わせて書き込みましょう。

取得資格については、事業として資格が必須になる場合はもちろん、取得した資格があれば国家資格・民間資格問わず記載するとよいでしょう。資格は正式名称を書くのが基本です。

  • 資格の正式名称
  • 資格取得日

知的財産権等

「知的財産権等」の欄は創業する事業に関連する特許権や実用新案権などを保有する場合、記載します。保有する知的財産権等の技術、ノウハウに新規性があると判断されれば、通常より低金利で融資が受けられる可能性があります。当てはまる場合は「有」にチェックを入れ、名称を記入し、「申請中」もしくは「登録済」のいずれかにチェックを入れましょう。

取扱商品・サービス

取扱商品・サービスの項目では、事業の内容(提供する主力商品やサービス)について詳細を記入します。提供する商品やサービスは、日本政策金融公庫の創業計画書や事業計画書の中でも、核となる項目です。

主力となる商品・サービスの上位3つを説明し、売上シェアの見込みを記入します。それぞれの商品は販売価格や単価、1か月の売上予測など、具体的な要素を書くことがポイントです。なぜ売れると思うのか、根拠を書くことで、融資担当者が理解できるようにしましょう。

ポイント

  1. 自社の主力商品やサービスは何か
  2. 主力商品・サービスになると思われる根拠(商品やサービスの価値)

セールスポイント

取扱商品・サービスの項目では、セールスポイントも記入します。セールスポイントは、自社の商品やサービスが持つ強みや、同業他社との違いを明確にし、魅力的に伝えることが重要です。以前の勤務先等により、すでに顧客が確保できているなど、創業者の過去の事業経験と関連する部分があれば、アピールのひとつとなるでしょう。

独自の強みがなければ、消費者に正しく伝わらず、売上につながらないことも考えられます。売上につながらなければ、日本政策金融公庫側も融資をしづらくなるでしょう。セールスポイントをしっかりと書くことで、融資担当者の印象もアップしやすいはずです。

ポイント

  1. 自社の商品、サービスの強み(顧客の確保等)
  2. 同業他社との違い(価格や仕入れ値、こだわり、新規性、ニーズ)

販売ターゲット・販売戦略

自社の主力商品・サービスが、「売れる」と見込まれる根拠のひとつとして、販売ターゲットや販売戦略も記入しましょう。価格や技術、営業手法などをまとめ、採算が取れるビジネスであることをアピールしましょう。

販売価格や客単価、見込まれる売上などは、できるだけ数字を用いて伝えることも大切です。事業内容の具体的なイメージがつかめるよう記載することで、融資の通りやすさにも影響してくるはずです。

ポイント

  1. 販売ターゲット、価格や客単価、提供方法、製造技術、営業手法
  2. 主力商品・サービスが見込まれる1か月あたりの売上数量

競合・市場など企業を取り巻く状況

取扱商品・サービスを日本政策金融公庫側にアピールする上で、自社を取り巻く状況について説明することも大切です。競合の分析やマーケティング調査などを行い、客観的に見て事業が成功する見込みのあるものだと示しましょう。

取引先・取引関係等>

日本政策金融公庫の創業計画書では、事業を成立させる取引先について伝える必要があります。事業の進め方や具体的な販売先、仕入れ先、外注先については、「取引先・取引先関係等」の項目で記入します。記入する時点で明確な販売先、仕入れ先、外注先が決まっていれば、会社名や所在地などを書き入れましょう。

合わせて、予測される「シェア」の割合や、掛け取引の割合を記入します。「シェア」の目安は、総売上に対し30%以上の売上が発生する見込みがあるところといわれています。また、売上金の回収などの面で、販売の条件がある場合も書き込みましょう。

詳細を記入するためにも、早めに取引先等は決定し、それぞれ取引方法についてすり合わせておくほうがベターです。ただし、取引先等に関しては、販売先や仕入れ先が本当に信用できるか、仕入れ商品の質に問題ないかなどを探っておくことも大切です。融資では取引先等の信用情報もチェックされるからです。

ポイント

  1. 取引先等を記入し、事業が実現可能であることを示す
  2. 仕入れ先や販売先、外注先が信用できる相手であることを示す
  3. 仕入れる商品の質が安定していること、継続的にスムーズな取引が可能であることを示す

販売先

取引先関係の中でも「販売先」は、直接売上に直結することから、日本政策金融公庫の融資でも注目されやすいポイントです。「販売先」の項目には、必要な情報を記入し、契約書や注文書があればコピーして創業計画書に添付します。

販売先については、現時点で決まっていない場合でも、実現する可能性が高い見込みの会社があれば記載します。また、もし決まった販売先ではなく、消費者全般を販売先とする場合は「一般個人」とします。ただし、一般個人を対象とする場合は、ターゲットとなる業種や職種、年代、性別、対象エリアなども具体的に示しましょう。

ポイント

  1. 販売先、あるいは販売先になる見込みの会社名を記入する
  2. 販売先について販売条件がある場合は記入する
  3. 販売先になる見込みがあると判断した会社については、理由を説明できるようにしておく
  4. 決まった販売先を持たない場合は「一般個人」とする
  5. 一般個人とする場合はターゲットを明確にする(業種、職種、年代、性別、最寄り駅や人通り、交通量などの対象エリア)

仕入れ先

仕入れ先が決まっていれば、創業計画書の「仕入れ先」欄に会社名や所在地などを記入しましょう。仕入れ先と契約書、注文書がある場合はコピーし、創業計画書に添付し提出しましょう。

外注先

仕事の一部を外部に発注する予定がある場合は、創業計画書の「外注先」欄に記入します。外注先に関する資料も用意し、創業計画書と一緒に提出するようにしましょう。

融資の申し込みをする場合、外注先があるほうが融資金額の減額をされにくいケースもあるようです。融資した金額の一部を、「外注費」として使うことが明確になるからです。

ただ、いくら資金使途の一部が明確になっても、外注費として固定費が発生することに変わりはありません。外注費がかかっても安定した経営ができることや、外注するからこそ事業の成長につながるなどアピールすることが大切です。

人件費の支払い

雇用する人がいる場合は、創業計画書の「人件費の支払」欄にも記入が必要です。記入する項目は給与計算の締め日と支払日、ボーナスを支給する場合は支払い月についてです。一般的には、締め日は末締めにすることが多いです。支払日については、翌月15日か25日、もしくは月末払いにするケースがよくみられます。

従業員

日本政策金融公庫の創業計画書では、「従業員」についても記入する部分があります。項目は、「常勤役員」と「従業員」、従業員は「家族従業員」と「パート従業員」とに分かれています。それぞれ、すでに雇う人が決まっているか見込みがある場合で、3か月以上の継続雇用を予定している人数を書き入れましょう。

「従業員」欄を書く理由は、事業を推進する上で必要な従業員が確保できているか、融資担当者がチェックするためです。事業開始後に人員不足だとわかって急遽募集をかけても、すぐに応募があるとは限りませんし、採用まで余分な時間やコストがかかります。

また、融資担当者は事業で見込まれる売上や利益に対し、人件費が多すぎないかどうかもチェックしています。人件費は毎月発生するコストです。事業内容に対し従業員数が多すぎると、会社にとっては負担が重くなりすぎて、円滑な経営に悪影響を及ぼす可能性があるからです。

さらに、従業員は一旦雇用すると、法的にも精神的にも解雇するのは難しく、労力も必要です。創業計画書作成のことだけでなく、事業を運営する上で無駄な負担を増やさないよう、事業規模にあった適切な人数を確保することは大切です。

お借入れの状況

「お借入れの状況」欄は、日本政策金融公庫や金融機関の融資等ではなく、プライベートで借入をしているものについて記入する項目です。融資担当者が創業者の負債を確認するための項目といえます。

住宅ローンや自動車ローン、教育ローン、カードローンなど、借入がある場合は記入しましょう。

  • 「お借入先名」:金融機関と支店の正式名称を書く
  • 「お使い道」:該当するものにチェックを入れる
  • 「お借入れ残高」:創業計画書を記入した時点の残高
  • 「年間返済額」:記入する時点で1年間に返済した金額の合計額(金額が不明な場合は次の1年間に返済する予定金額の合計額)

創業計画書に限らず、事業計画書を作成する場合も注意したいのは、借入状況について無理に隠そうとしないことです。金融機関は信用情報機関を通じて借入情報を調べられるからです。もし調べられて、創業計画書に記載したものと実際の借入とで差異があれば、金融機関からの信用を失いかねないでしょう。

できれば借入は、融資を受ける前に返済しておくのが無難です。特にカードローンは金利が高いため、返済負担が大きくビジネスに影響するのではないかと思われる可能性があります。もし、借入があったとしても、返済が事業に影響ない場合は、「影響がない」ことを明確に説明できることも重要です。

必要な資金と調達方法

創業計画書における「必要な資金と調達方法」欄は、創業に必要な資金の内訳を記載する部分です。記載することにより、融資担当者は「どの程度の融資が必要か、融資限度額はいくらか」を判断します。

「必要な資金と調達方法」欄は、「設備資金」と「運転資金」とに分かれており、それぞれ「必要な資金」には事業で何にお金を使うかを記入し、「見積先」や「金額」を記入します。

さらに「調達の方法」欄で、事業資金をどこから用意するか、金額はいくらかを記載します。調達方法は自分で用意する以外に、身内等から借入をする方法、金融機関からの借入などに区別します。それぞれの数字を算出したら、「必要な資金」の合計額と「調達の方法」の合計額が一致するようにしましょう。

  • 自己資金
  • 親、兄弟、知人、友人等からの借入
  • 日本政策金融公庫国民生活事業からの借入
  • 他の金融機関等からの借入

「自己資金」欄は、自分が保有する現預金、株式等から事業に使う予定の金額を記入します。自己資金は創業に必要な合計資金の3分の1程度用意するのが、融資を通りやすくする目安といわれています。

「親、兄弟、知人、友人から借入をする場合は、毎月返済する元金と利息の有無、利率、返済する回数を記入します。ただし、親族以外にお金を借りる場合は、融資担当者に借入をした経緯を説明する必要があります。

日本政策金融公庫の国民生活事業からの借入欄には、日本政策金融公庫の借入申込書に記載した金額や、毎月返済する元金、返済回数、利息の有無を記載します。を利息が分からない場合は、2.0%とするのが一般的です。

日本政策金融公庫以外の機関から借入をする際も、借入金額や返済回数等の内訳、返済方法等を記入しましょう。

設備資金

「設備資金」欄は、固定資産の購入・投資をするための資金です。店舗や工場、機械、車両などの有形固定資産以外に、ソフトウェアや実用新案権などの無形固定資産なども含まれます。該当するものがあれば下記のポイントを参考に記載しましょう。

ポイント

  1. 必要な設備の種類
  2. 投資が必要な理由、投資によって期待される効果の説明
  3. 購入するためにかかる費用(賃貸の場合発生する保証金の額)
  4. 工事が必要か、必要であれば工事の種類とかかる費用

注意したいポイントは、設備資金は事業開始直後に投資する必要がある設備だけを記載することです。創業計画書に記載した設備資金については、起業前・直後に購入することが前提だからです。

融資担当者に妥当な投資内容と判断してもらうためにも、必要な設備はひとつずつ見積もりを添付しましょう。事業規模や内容に見合わない投資は、「必要ないのでは?」と融資担当者に疑問を持たせる可能性があるからです。無目的の高額投資は控え、きちんと説明できることを投資内容にまとめましょう。

ちなみに、飲食業で設備資金が300万円を超える場合は、都道府県知事の推薦書等が必要になることがあります。管轄の融資相談窓口に電話をして確認しておくほうがよいでしょう。

運転資金

「運転資金」欄には、事業を継続する上で必要な費用とその金額を記入します。運転資金とは、商品を仕入れて生産・販売し、売上金を回収するまでの時間差を埋めるために活用する資金です。

運転資金に必要な主な出費は、下記のようなものがあげられます。

  • 商品の仕入れ代
  • 人件費(給与、社会保険、交通費等)
  • 外注先等への支払い費用
  • 弁護士、社会保険労務士、税理士などへの顧問料

事業の見通し(月平均)

創業計画書において、「事業の見通し」欄は、創業後に会社の売上がどう変化する見込みかを記載する項目です。「創業当初」と「1年後又は軌道に乗った後」とに分け、売上高に対し、仕入れ代や経費がいくらかかるか、差し引いた場合残る利益について1か月あたりの予測を立てます。

目安として、「創業当初」欄は創業直後~3か月目くらいまで、「軌道に乗った後」欄は半年~1年以内に軌道に乗ることを目標にするとよいでしょう。

「事業の見通し」欄を記入する上でのポイントは、利益がきちんと出るように予測を立てることです。さらに、夢物語ではなく、質問されてもきちんと説明できるよう、根拠に基づいた数字であることも大切です。商品の価格や販売ターゲットなど、記入した一つひとつの項目を再度見直し、作りこみましょう。

売上高

「売上高」欄は1ヶ月の売上高の予測を記入する部分です。創業時と軌道に乗った後とで客単価や回転数など、売上の構成要素が変化するかをチェックする項目といえます。

一般的に売上高は「客単価×客数」で計算します。ただ、創業計画書や事業計画書では、なるべく細かい部分まで想定し、予測を立てるほうがベターです。例えばサービス業の場合はさらに1か月の営業日数や平日、週末とのパターンも考慮したり、飲食業の場合ランチやディナーなど時間帯ごとで区切って計算したりしてみても良いでしょう。

売上原価

「売上原価」欄は1か月あたりにかかる、商品の仕入れや製造費用の予測を記載する項目です。計算したら売上高から原価率を計算し、右の「根拠」欄に記入します。

売上原価については、創業当初と軌道に乗った後とで、原価や原価率の変化が起こるかどうかがチェックされます。できれば原価率に幅を持たせるため、原価が低い場合と高い場合など、いくつかパターンを想定し、それぞれ計算できるとよいでしょう。

経費

「経費」欄は、創業時と軌道に乗った後とで経費に変化があるかをチェックするための項目で、例えば事業が軌道に乗った場合、正社員やパートの人数が増えるか、売上に連動して増える経費は何かなどです。

経費欄は「人件費」、「家賃」、「支払利息」、「その他」に分かれています。それぞれ1か月にかかる費用を計算し、まとめます。それぞれ内訳は、右側の「根拠」欄に記入しましょう。「その他」の費用はあらゆる可能性を想定し、少し多めに計上しておくほうが無難です。

  • 人件費:正社員、パート、アルバイトの人数及び支払う給与等の金額、軌道に乗った後で人員の増減があるか、増加する場合の人数
  • 家賃:賃貸の場合、毎月支払う金額
  • 支払利息:1か月分の利息は「借入金額×年利率 ÷ 12」で算出する(※最終的な利率は審査通過後に決定するため、2.0% 〜2.1%で計算するのが一般的)
  • その他:外注費、水道光熱費、広告宣伝費、消耗品費など

利益

「利益」欄は、最終的に会社に残る利益を記載する項目です。「売上高 – 売上原価 – 経費」として計算します。注意したいのは、利益を算出した際は、毎月返済する借入金の元本を支払えるかどうかも確認しておくことです。利益が出なければ借入金の返済ができないということなので、事業内容について一から検討しなおす必要があるからです。

また、実際には利益から、さらに税金も引かれることと、利益から返済額を引いた額が給料としてもらえる金額になります。利益がまるまる自由に使えるわけではないことも留意しておきましょう。

自由記述欄

創業計画書の最後には、「自由記述欄」も設けられています。記載した内容以外にアピールしたいこと、融資担当者と相談したいことなどがあれば記入しましょう。

事業計画書(創業計画書)印象・評価アップのポイント

日本政策金融公庫の創業計画書や、ほかの事業計画書を作成する際には、計画書を作成する以外にプラスアルファでアピールすることで、高評価につながることがあります。なるべく融資が通りやすくなるように、印象アップにつながりやすいポイントを押さえておきましょう。

必ず資料は添付する

資金繰り予定表や視覚的な資料が説得力に

創業計画書や事業計画書には、資料の添付について明確に規定があるわけではありません。ですが、添付するほうが、印象や評価のアップにつながることは多いです。

例えば資金繰り予定表を添付すれば、融資の資金使途や返済財源、資金繰りの課程をより明確にでき、「事業の見通し」欄の説得力も増すでしょう。融資担当者に、きちんと計画を立てている創業者だと評価されれば、「返済してもらえるだろう」という印象にもつながるはずです。

ITなど口頭で説明するだけでは伝わりづらい業種の場合は、視覚的な資料を添付するのもよいでしょう。図や写真などを使った資料を使うことで、伝えた事業内容やセールスポイントについて、より理解してもらいやすいでしょう。

経営者の勤務経験は重視される

過去の事業・勤務で培った経験は能力・強みとしてアピール

創業に際し、経営者の過去の事業経験は重要視されやすいです。培った経験、能力などは強みとして存分にアピールしましょう。過去の事業経験が創業する事業に直結している場合は、詳細をまとめて資料として添付するのも効果的でしょう。

取扱商品やサービスの強み・弱みはしっかり書く

ターゲットを絞り、セールスポイントを伝えよう

取扱商品・サービスの記述は、創業計画書や事業計画書の中でも中心となる部分です。強みや弱みは、しっかり書くようにしましょう。販売ターゲットを絞り、セールスポイントが明確であれば、評価も得られやすいです。

市場分析資料で好印象につなげる

添付することで業界内でのポジショニングがハッキリ伝わる

印象や評価を高めるには、同業他社や、市場を取り巻く環境などについての分析も、できるだけ丁寧に行うことが大切です。綿密に計画を練っている印象を与えやすいからです。市場調査、競合分析を行った結果は創業計画書に記載する以外に資料にまとめ、添付しましょう。資料にまとめることで、創業計画書の説得力アップにもつながるはずです。

創業計画書の書き方で迷ったときは税理士や専門家にも相談を>

創業計画書の書き方で困ったときは、専門家に相談するのもひとつです。顧問税理士や、コンサルタントなどに書き方のアドバイスや、資料作成のサポートを受けることも検討するとよいでしょう。

事業計画書の書き方を押さえて日本政策金融公庫「創業計画書」で融資通過を

事業計画書や創業計画書には資料も添付してアピールを

日本政策金融公庫の創業計画書では、創業者の経験や実績、商品やサービスの持つ強み、独自性など、一つひとつの項目を具体的に記入することがポイントのひとつです。

さらに、見込み客があることや、売上や利益が出る予定であること、仕入れ先や外注先など安定した取引先を持っていることなどもアピールしましょう。融資担当者は「借りたお金をきちんと返済してもらえるか」をチェックしているからです。できるだけ分かりやすく伝えるために、視覚的な資料や分析資料などを添付するのも効果的です。

創業計画書の書き方を押さえれば、別の機会に事業計画書を作成する際のヒントにもなりやすいです。書き方に困ったときは税理士や専門家にも相談しながら、創業計画書や事業計画書を完成させましょう。

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