経費処理をする上で、交際費と会議費同とは違いが分かりにくく、混同しやすい勘定科目のひとつです。会社を経営していると、取引先や社員との食事や、社員との会議など何かとイベントが多く、時には判断に迷うこともあるでしょう。今回は、曖昧になりやすい交際費と会議費との違いをおさえ、適正な処理をするための判断基準や注意点について見ていきましょう
交際費と会議費の定義
交際費
交際費(接待交際費)とは、事業で関わりがある相手に対して行った接待や贈答費用をいいます。
税務上、
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出する費用。
引用:国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
とされています
「接待」というと、社外の人との飲食代をイメージするかもしれません。しかし、税務上は支出の対象者が取引先や得意先など社外の人だけでなく、役員や社員など事業に関係のある全ての人が含まれます。
例えば、取引先に対する接待に、社員が一人でも参加して食事をした場合は、社員の分の飲食代も交際費として計上できます。
会議費
会議費は文字通り、会議や打ち合わせで支払った費用のことをいいます。対象者は交際費と同じく、取引先や取引先だけでなく、社員や役員も含まれます。
税務上では、
会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
引用:国税庁「第1款 交際費等の範囲(会議に関連して通常要する費用の例示)」
は会議費に該当するとされています。
法人は交際費に制限あり
気を付けたいのは、法人の場合交際費のうち、経費(損金)にできる金額の制限があることです。制限を超えないよう、把握しておく必要があります。
中小企業の交際費
中小企業の場合、
- 社外の人との飲食代のうち50%までの金額(金額の大小は問わないが社内飲食費は除く)
- (飲食代を含む)年間800万円までの交際費
のいずれか一方を選択して経費にすることができます。
飲食代には、料理以外に会場代、テーブルチャージ料など、飲食をするために必要な費用が含まれます。
参考:国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
なお、ここでいう中小企業とは、「資本金額等が1億円以下の法人で、且つ資本金額等が5億円以上の法人等の完全子会社でない法人」をいいます。
大企業の交際費
大企業(資本金が1億円を超える法人)の場合、平成26年4月1日以降の事業年度については、交際費のうち飲食代(役員や社員、親族への接待費用を除く)の50%までを損金算入できるようになっています。
以前は交際費の経費計上ができませんでしたが、平成26年の税制改正により交際費が認められるようになりました。
参考:国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
個人事業主(フリーランス)なら交際費・会議費は全額経費にできる
なお、個人事業主(フリーランス)の場合は、事業に必要な費用であれば上限がありません。交際費・会議費ともに全額経費計上が可能です。
交際費として経費処理する費用の例
取引先との飲食代や、来客用の弁当代
交際費になる主な費用は、取引先や得意先等との飲食代、来客への弁当代、出前、ケータリング、お茶代などです。打ち合わせや親睦を深めるための宴会代も交際費として処理できるでしょう。接待する場所は料理店以外に、スナックやカラオケなども含みます。
交際費は、業務に必要な接待費用であれば、金額の大小に問わず経費にできます。
したがって、1人10万円のコース料理で接待しても、その食事により契約が決まり、売上に結び付けば、「事業に必要な接待」として経費に認められます。
なお、取引先や得意先も、現時点でビジネス関係にない場合としても、接待によりこれから取引をすることが決まれば、「事業の利益に貢献した」として経費になります。
社員も参加する取引先との食事代
1人5,000円以上の食事代が対象
取引先との食事代は、社員が参加した場合でも交際費として経費計上が可能です。金額は1人あたり5,000円以上が対象です。
主な参加者が社員や役員の場合も、1人でも社外の人が混じっていれば交際費の対象になります。なおグループ会社や子会社、関連会社など、別会社の社員・役員は「社外」扱いとなります。
会議や慰安以外の社員に対する飲食代
交際費は社員や役員の飲食代も該当する場合があります。例えば社員や役員に対する飲食代のうち、「通常の会議や慰安等ではない場合」です。つまり、会議費や福利厚生費に該当しない飲食代です。
ただし、経費に該当するのは、あくまで業務上必要な費用です。会議費や福利厚生費にも該当せず、あまりに費用が高額な場合は、給与として処理するほうが適正な場合や、個人的な支出として否認される可能性もあります。
取引先への贈答品
取引先や得意先へ訪問する際に持参する手土産や、お中元、お歳暮などの贈答品も交際費に計上します。新規顧客を紹介してもらった場合など、お礼や感謝の気持ちで贈る謝礼品も対象となります。
取引先との観劇、旅行等の費用
取引先との観劇や旅行などにかかった経費も、交際費の範囲として認められています。例えばスポーツ観戦や、取引先が関わるイベントなどに支払ったチケット代の費用などです。
取引先に対する慶弔費用
取引先や得意先等の結婚式や葬儀に参列する場合、持参するご祝儀や香典の費用も交際費として認められます。その他、引っ越し祝いや開店祝い、移転祝いなどのお祝い事があり、贈答品やお花を贈る際にかかった費用も、交際費として経費処理できるでしょう。
取引先とのゴルフにかかる費用
会社では、接待の一環としてゴルフを行うこともあるでしょう。ゴルフにかかる費用も交際費に含まれます。
なお、ゴルフ接待を行う際は、飲食代もすべてゴルフ接待の一環として、交際費に該当します。一連の流れの中で、飲食費だけ別にすることは認められないので注意しましょう。
接待時の車代
タクシー代やタクシーチケットなど、接待で取引先を送迎する際の車代も、接待に必要な支出として交際費に含まれます。ただし、あまりにも高額だと、否認される恐れがあります。あくまで一般的な交通費の範囲の金額が前提です。
交際費から除外される費用の例
交際費の範囲は広いですが、除外される費用もあります。国税庁のサイトでは、下記の通り記載されています。
- 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
- 飲食その他これに類する行為(以下「飲食等」といいます。)のために要する費用(専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除きます。)であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が5,000円以下である費用
- その他の費用
イ カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
ロ 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
ハ 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用
引用:国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
福利厚生費に計上されるべき費用
交際費から除外される費用は、(1)にある通り、社員の慰安を目的とした支出です。福利厚生費に計上されるべき費用として、除外されます。
1人あたり5,000円以下の飲食代
交際費から除外される例として、(2)は取引先や得意先との接待費用(役員や社員、親族への接待は除く)で、1人あたり5,000円以下の飲食費用が該当します。5,000円以下というのは、法人の規模は関係なく適用されます。
ただし、5,000円以下の場合は、飲食費等交際費として経費にできます。飲食をした店舗で提供されている料理を持ち帰る場合も、1人あたり5,000円以下であれば同様です。
1人あたり5,000円以下かどうかは、支払金額の総額を、参加人数で割って判定します。
例えば2人分の飲食代で、1人はビールを10杯飲んで5,000円、1人は4杯だけで2,000円だったとしても、2人で総額を割り、3,500円と判断します。
また、一次会と二次会など会をまたいで接待を行った場合の費用も、それぞれ別店舗で行った場合は領収書ごとに金額を判定します。
例えば、一次会と二次会との費用合計が、1人あたり5,000円を超えていても、各店舗での支払いが1人当たり5000円以下の場合は、飲食等交際費で計上できます。
反対に、同じ店舗で1次会と2次会を行った場合は、一つの領収書とみなされます。
なお、社長と役員、従業員だけで飲食をする「社内接待」については除外の例に該当しません。交際費から除外されるのは、参加者の中に社外の人が含まれる場合だからです。その他、5,000円以下かどうかの基準は「飲食等」が対象です。お中元やお歳暮など、贈答品は基準に含まれません。
広告宣伝費や会議費、取材費に該当するもの
交際費から除外される費用として、(3)のその他の費用は、広告宣伝費や会議費、取材費に該当するものと考えられます。
カレンダーや手帳などノベルティにかかる費用は広告宣伝費、会議や打ち合わせでかかった飲食代は会議費に該当します。新聞や雑誌などマスコミの取材費も、交際費から除外されます。
会議費として経費処理する費用の例
1人あたり5,000円以下の飲食代
取引先や得意先との飲食代が、1人あたり5000円以下の場合は、飲食費等交際費以外に、会議費としても経費計上が可能です。1人あたり5,000円以下かどうかは、参加人数で割った金額で判断します。会議費は交際費と違い、法人も制限がありません。全額経費として計上できます。
会議に用意した飲食代、使用料等
会議費は、文字通り会議に関する費用も、経費として認められます。業務上必要な会議や打ち合わせで発生した費用であれば、金額の大小を問わず会議費にすることができます。
会議に必要な費用とは、取引先との会議や打ち合わせで使用する会場の使用料、会議書類の作成費用などです。会議のために用意したお茶やコーヒー、お菓子、お弁当などの飲食物なども含まれます。
なお、会議や打ち合わせの場所についても、具体的な定めがありません。喫茶店や飲食店で行った場合でも経費にできると考えられます。お酒についても明記がないため、あくまで実際に会議を行ったかどうかが判断の基準になるでしょう。
社員と社内外で打ち合わせを行った際の飲食代
会議費は、社員との会議や打ち合わせで発生した飲食代も、経費として認められます。通常の会議や打ち合わせであれば、場所も社内外を問いません。
ただし、会議や打ち合わせの後に、会議に参加したメンバーで食事をした場合の費用は、会議費には該当しないのが一般的です。会議費は、会議中の飲食が対象だからです。会議後の飲食は、懇親会や慰労会などの意味合いが強く、会議費にするのは難しいでしょう。
交際費と会議費を経費計上する際の判断基準
支払った金額すべて経費にできるかどうか
交際費と会議費との違いのひとつは、会議費は企業規模や社内外問わず、会議で通常要する費用は全て経費計上できるのに対し、交際費には制限があることです。前述の通り、個人事業主(フリーランス)は交際費に上限がありませんが、法人には制限があります。
1人5,000円以下の飲食代は会議費とするのが一般的
会議費と交際費との違いや、経理上の使い分けに迷ったときは、「1人あたり5,000円以下の飲食代」を基準に判断することが多いです。1人あたり5,000円を超えるものは交際費、5,000円以下なら会議費に計上するなどです。
会議に必要な飲食なら5,000円以上でも会議費計上できる
ただし、会議費の場合は、一人あたり5,000円以上であっても、会議に必要な飲食であれば、会議費として計上できます。5,000円以上で会議費を計上する際のポイントは、「業務に関係する相手で、実際に会議を行った」ことです。
なお、社内で行う会議については明確な基準はありませんが、社会通念上1人あたり3,000円くらいまでが妥当とされています。
中小企業は交際費として処理することも可能
交際費と会議費の違いは、1人あたり5,000円を超えるかどうかで判断するのが一般的です。しかし、中小企業では交際費が年間800万円を超えることが少ない傾向にあり、交際費の全額を損金算入できることが多いです。上限を超えないと予想される場合は、飲食費用が1人あたり5,000円以下でも、飲食等交際費として経費にしても問題ないでしょう。
ただ、中小企業でも年間800万円前後の交際費が発生する予想のときは、意識して交際費と会議費とを区別したほうがよいでしょう。交際費と勘定科目との振り分けによって、納税額が変わることになるからです。交際費が上限ぎりぎりになりそうな会社なら、会議費の基準を満たすものはすべて「会議費」として経費計上したほうが、節税になる可能性があると考えられます。
交際費や会議費として経費計上する場合の注意点
飲食費用の明細が分かる書類を残すこと
1人あたり5,000円以下の飲食等交際費や、会議費を計上する際は、領収書やレシートなど明細が分かる書類を必ず保管しておきましょう。
記録がなく、交際費とみなされるのを防ぐためにも、「誰と、何人で、どこに行ったか」相手先の会社名や担当者の名前、人数などを控えることが肝心です。
領収書やレシートに記載がない項目については、裏側や余白にメモをするとよいでしょう。さらに、レシートは、ほかに転用していないことを示すため、社印を押すのもひとつです。
明細として記載する項目
- イ 飲食等の年月日
- ロ 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
- ハ 飲食等に参加した者の数
- ニ その費用の金額並びに飲食店等の名称及び所在地(店舗がない等の理由で名称又は所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の名称、住所等)
- ホ その他参考となるべき事項
引用:国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
悪質な領収書の分割や水増し、偽造はペナルティの対象に
なお、当然ながら、領収書は1つの飲食店の領収書を複数に分割したり、人数を水増ししたりなど、偽造をしてはいけません。
発覚した場合は悪質な行為である「事実の仮装隠ぺい」とみなされ、ペナルティとして重加算税の対象となります。
「5,000円」を税込・税抜かの判断は会社の経理方法に準じる
交際費と会議費とを区別する際、「1人あたり5,000円以下」を税込で考えるか、税抜で判断するかは、会社の経理方法に準じます。
例えば、消費税の税率が10%と仮定した場合、税抜経理では「1人あたり税込5,500円(税抜5,000円)」までが対象になります。
一方、税込み経理をする場合は、「1人あたり税込5,000円(税抜4,545円)まで」となります。
区別をつける際は、「こっちは税込、あっちは税抜」とバラバラにならないよう、どちらかに統一することが大切です。
判断がつかない場合は、顧問税理士と相談するのもよいでしょう。
交際費と会議費との経費処理は5,000円が判断基準
使い分けに迷ったときは確認し、適正な経費計上を
交際費の範囲は広いですが、1人あたり5,000円以下の飲食代は、飲食等交際費か会議費として経費計上が可能です。
ただ、会議費と違い、交際費は法人に対して制限が設けられています。会社によっては、5,000円以下は会議費、5,000円以上なら交際費と基準を設け、それぞれ振り分けて管理をするほうが、節税につながることもあるでしょう。
注意したいのは、1人あたり5,000円以下の飲食等交際費や、会議費を計上する際は、人数や場所などの事項を記載した領収書、レシートが必要であることです。また、会議費は実際に会議を行ったのであれば、5,000円以上でも会議費として経費にすることができます。
交際費や会議費を経費計上するときは、相手が取引先だったのか、社員が参加していたかなど、細かく確認して会計処理をすることになります。判断に迷ったときは、その都度交際費や会議費の違いや基準を確認したり、顧問税理士に相談したりしながら使い分けていきましょう。