銀行融資を検討する際、どんな必要書類を準備するべきか、気になる経営者も多いのではないでしょうか。事業拡大や資金繰り改善など、それぞれの目的に向けて、書類を不備なくそろえて融資成功に結び付けたいですよね。今回は、銀行融資を申しこむとき、一般的に求められることの多い必要書類についてご紹介します。
銀行融資の必要書類一覧
銀行融資の必要書類は、主に下記の書類を用意することになります。
- 決算書類一式
- 借入申込書
- 経営計画書(事業計画書)
- 試算表
- 資金使途資料
- 資金繰り計画書
- 登記簿謄本(履歴事項証明書)
- 納税証明書
- 印鑑証明
- 銀行取引や借入状況が分かる一覧表
その他にも、追加で会社案内や商品のパンフレット、役員名簿、株主名簿、経営者の職務経歴書、設備資金に関する見積書や契約書の提出を求められることもあります。
決算書類一式
銀行融資では、必要書類として、決算書類一式の提出を求められることになるでしょう。
決算書は経営状況を知るための資料で、
- 貸借対照表(B/S)
- 損益計算書(P/L)
- キャッシュフロー計算書(C/F)
- 株主資本等変動計算書(S/S)
などをいいます。
法人の場合は、過去2~3期分の決算書を提出することが多いです。
借入申込書
銀行融資の必要書類では、借入申込書も提出するのが一般的です。
借入申込書は各金融機関で取得できます。金融機関によってはインターネットのホームページからダウンロードできる場合もあります。
借入申込書の様式は金融機関ごとに異なるため、記載方法等はそれぞれの金融機関のやり方に沿って、漏れがないように記入しましょう。
経営計画書(事業計画書)
経営計画書は中長期的な経営方針や事業計画をまとめた書類です。
銀行融資を受ける際は、これから会社をどのように経営し、成果を収めるべく行動するかを伝える書類となります。
試算表
試算表は月次決算とも呼ばれ、決算書を1か月に区切り、貸借対照表や損益計算書を元に、会社の資産状況や損益状況を確認する書類です。
会社の直近の財務状況を知る指標であり、銀行融資の際も必要な書類のひとつです。
試算表には
- 合計試算表
- 残高試算表
- 合計残高試算表
の3種類がありますが、いずれも貸方と借方の合計金額が一致するのが特徴です。
資金使途資料
銀行融資では、融資したお金をどのように使用するかを把握するため、資金使途資料も必要書類として提出を求められるでしょう。
事業資金の使途は大きく設備資金と運転資金とに分かれます。
設備資金の場合は購入する設備の見積書等を提出することが多いです。
一方、運転資金の場合の資金使途は、資金繰りに用いる目的であることが多く、設備資金のように見積書や証拠書類を用意するのは困難です。
とはいえ、資金使途資料がないと銀行側の信用を得るハードルが高くなるため、後述する資金繰り計画書を提出するのが一般的です。
資金繰り計画書
資金繰り計画書は、文字通り一定期間の会社の現金の動きをまとめた書類です。会社が健全な経営を続けるための資金計画書ともいえます。
銀行融資の必要書類として提出する場合は、融資を受けてから半年または1年程度にどの程度の資金が回るかを示すことが多いです。
運転資金目的で銀行融資を申し込む場合は、銀行側の信用を得るためにも資金繰りの計画書を作成しましょう。
登記簿謄本(履歴事項証明書)
法人の場合は、登記簿謄本(履歴事項証明書)も銀行融資の必要書類のひとつです。登記簿謄本には社名や所在地、役員の氏名などが記載されており、会社の存在を証明する書類となります。
登記簿謄本の取得は法務局の窓口で行えるほか、郵送やオンラインでも申請が可能です。
納税証明書
銀行融資では、税金をきちんと納めていることを証明する、納税証明書の提出も求められることが多いです。取得は所轄の税務署で行えるほか、郵送で請求することができます。また、e-taxを使用している場合は、インターネットでも取得が可能です。
なお、税金の未納や滞納がある場合は、銀行融資ではマイナス評価となり、審査に通るのも難しくなります。
もし税金の未納や滞納がある場合は完納し、納税証明書を発行できるようになってから融資審査を受けたほうがよいでしょう。
印鑑証明
銀行融資では印鑑証明の提出も必要になることがあります。印鑑証明は必要書類に捺印された印鑑が本物(実印)であることを証明する書類で、正式名称は印鑑登録証明書といいます。
印鑑証明は自治体の窓口やコンビニ等で取得が可能ですが、発行いは印鑑登録証(印鑑登録カード)やマイナンバーカードが必要です。
銀行取引や借入状況が分かる一覧表
銀行融資を受ける際は、銀行取引一覧表も提出することが多いです。
銀行取引一覧表とは、どの銀行と取引をしているか、取引状況が分かる書類のことです。
銀行取引一覧表では、それぞれの銀行の借入金(短期、長期、割手)や預金残高(定期、当座)、預金率などをまとめます。
融資額が大きい場合は保証人に関する必要書類の提出も
銀行融資の金額が大きい場合は、保証人が必要になることがあります。
保証人が必要な場合は、保証人の支払い能力を確認するため、本人確認書類や印鑑証明書、住民票、財産状況が分かる書類などの必要書類を提出することになるでしょう。
財産状況が分かる書類では、納税証明書や源泉徴収票、確定申告書、収入証明書などを提出するのが一般的です。
不動産担保ローンでは登記簿謄本なども必要
不動産担保ローンのような、担保が必要な融資を申し込む場合は、必要書類として不動産の登記簿謄本や公図、建築図面、地積測量図などの提出が求められます。それぞれ登記所や法務局の窓口のほか、郵送やインターネットから交付請求が行えますので、あらかじめ準備しておきましょう。
その他、固定資産税の納付証明書や固定資産税評価証明書、収入証明書、売買契約書、借入残高証明書などの提出を求められることもあります。
個人事業主の銀行融資の必要書類
銀行融資の必要書類は、法人と個人とで用意する書類が異なる場合もあります。
個人事業主の場合は、主に次のような書類を準備することになるでしょう。
- 今後の損益計算書
- 予想される貸借対照表
- 事業計画書(経営計画書)
- 試算表
- 資金繰り計画書
- 銀行取引、借入状況の一覧表
- 借入申込書
- 印鑑証明書
その他、本人確認書類や納税証明書、収入証明書、青色申告決算書、借入計画書などの提出を求められることもあります。
収入証明書は確定申告書や源泉徴収票、課税証明書などが所得証明となります。
今後の損益計算書
個人事業主が銀行融資で提出する書類のひとつは、今後予想される損益計算書です。
損益計算書は一定期間にどのくらい収益があり、費用を使用し、いくら利益が残ったかをまとめた書類です。今後の損益計算書をチェックすることで、銀行側は事業の財務状況が判断しやすくなるため、融資では必要書類のひとつとなっています。
予想される貸借対照表
予想される貸借対照表も、個人事業主が銀行融資で必要な書類のひとつです。
貸借対照表は、事業の資産や負債をまとめた書類です。貸借対照表を確認することで、どの程度の資産や負債があるかを知ることができ、事業の財政状況が健全かどうかを判断する指標になります。
事業計画書(経営計画書)
銀行融資に申し込む際は、法人・個人を問わず事業計画書(経営計画書)の提出も必要です。
事業計画書(経営計画書)は事業の経営方針をまとめた書類で、銀行に対し、今後どのように事業を行うか、計画を伝えるための書類です。
試算表
個人事業主が銀行融資を申請する場合でも試算表の提出は必要になります。融資審査で提出が求められるのは、月ごとや年ごとなど、一定期間ごとに作成するため、事業の利益や資産など、最新の財務状況を知るのに役立つ書類だからです。
試算表が提出できないと、「財務状況が悪いのでは?」と銀行側に誤解される恐れがあります。提出を求められた場合は速やかに渡せるよう、準備しておきましょう。
資金繰り計画書
一定期間の資金の流れを予想する資金繰り計画書も、法人・個人を問わず銀行融資で必要な書類となることが多いです。銀行側は融資審査において、返済能力があるかどうかをチェックします。資金繰り計画書を使って、予想される売上や経費の動きから、計画的な返済ができることを示しましょう。
銀行取引一覧表
銀行融資では、銀行取引一覧表も必要書類のひとつとされています。
銀行取引一覧表は、文字通り取引のある銀行名や、預金残高(定期・当座)、預金率、借入金(短期・長期・割手)の状況などをまとめた書類です。
個人事業主であっても、どのような銀行と取引履歴があるか、借入状況がどうなっているかを、銀行側に示せるようにしましょう。
借入申込書
銀行融資を申し込む際は、借入申込書の提出も必要です。
借入申込書は融資を申し込む銀行ごとに所定の用紙が用意されています。必要事項を記入し、提出しましょう。
印鑑証明書
個人事業主が銀行融資を申し込む際は、印鑑証明書も用意しておきましょう。印鑑証明書は、捺印されたものが本人の登録した実印であることを証明する書類です。
発行は本人もしくは委任状を持った代理人であれば、自治体窓口や自動発行機、コンビニで取得できます。ただし、郵送では申請できないので注意しましょう。
また、発行の際は所定の手数料と、印鑑登録証(または印鑑登録カード)や身分証明書、マイナンバーカードなどが必要となります。
なお、印鑑登録をしていない場合は、自治体で実印登録する印鑑や身分証明書を持参し、所定の手続きを行いましょう。
その際、登録費用として数百円程度が必要です。
個人事業主は法人より必要書類は少なめ
基本的に、個人事業主は法人に比べると銀行融資で必要とされる書類の種類は少ない傾向にあります。
必要書類が少ないと、用意する手間は少ないかもしれません。ただ、必要書類が少ないというのは、その分、法人に比べて信用度を証明する審査材料が少なくなるということでもあります。
用意する書類が少ないからといって油断せず、スムーズな審査通過のためにもしっかりと書類を用意しましょう。
銀行融資の必要書類で注目されるポイント
銀行融資の必要書類はさまざまな種類がありますが、チェックされやすいポイントもあります。どのような点が注目されるのかについて押さえておきましょう。
損益計算書の利益
銀行融資において銀行側は、貸し倒れのリスクを減らすため、会社や事業主に返済能力があるかどうかを、審査通過の重要なポイントとして見ています。
損益計算書は、事業の利益をまとめた書類なので、会社や事業者がどの程度利益を出しているかを知る指標であり、融資の必要書類の中でも注目されやすいでしょう。損益計算書の利益が黒字であれば、融資審査に通る可能性も高まるはずです。作成の際は、損益計算書の利益が黒字になるよう意識しましょう。
一方、損益が赤字の場合は、残念ながら融資審査のハードルは高くなりやすい傾向にあります。
ただ、絶対審査が通らないということもありません。事業内容や経営方針を見直し、経営計画書によって、返済能力を示せれば融資審査通過の可能性は出てくるはずです。
当然ですが、損益計算書で注意したいのは虚偽の記載をしないことです。
もし本当は赤字なのに黒字のように偽って書類を作成した場合は、発覚した時点でその後融資を一切受けられなくなるリスクも生まれます。
貸借対照表
損益計算書とともに、貸借対照表も銀行融資では注目されやすい必要書類のひとつです。
貸借対照表が重要視されるのは、会社や事業主が資金をどのように調達し、保有しているか、何に資金を使っているか、債務超過になっていないか、借入金はあるかなど、財務状態を確認できる書類だからです。
また、自己資本比率が高く、固定比率が低い場合は事業の安全性が高い状態として、審査でもプラス材料になるでしょう。
なお、債務超過の状態だと、融資審査ではマイナス材料となりますが、債務超過だけで審査が通らなくなるとも限らないようです。
負債が多くても、損益が黒字の場合は、返済能力があると判断され融資が通る可能性もあるためです。
経営計画書
今後の事業の展望を知る指標として、経営計画書は銀行融資の必要書類の中で特に注目される書類といわれています。
例えば事業の業績や経営状況が思わしくない場合は、経営計画書を使って融資をどう活かし、現状を改善する見込みかをチェックできるからです。
したがって、融資の審査に通るためには、説得力ある経営計画書を作り、アピールすることが重要です。
作成する際は、会社の事業内容や実績、現状を見直し、事業が抱えている課題を明確にしましょう。
その上で抱えている課題の分析を行い、改善方法や今後の事業戦略、予想される売上・利益の見込みなどについて、根拠となるデータや現実的な資金繰り計画とともにまとめましょう。
試算表
試算表は月次決算とも呼ばれるように、会社の最新の経営状態を示す書類です。
決算書より直近の営業成績や財政状況など把握できることから、現在の事業状況を知る指標として、銀行融資の審査でも注目されます。
資金繰り計画書
銀行融資では、事業の資金の流れを表す資金繰り計画書も、注目されやすい必要書類のひとつです。
業績改善のために融資が必要な場合は、計画書を使って、融資を得ることにより今後の資金繰りが改善する見込みがあることをアピールしましょう。
銀行融資の必要書類を用意するタイミング
3か月以内の書類がそろうように準備する
銀行融資の必要書類を準備するタイミングですが、目安としては、申込み日から3か月以内の書類がそろうように準備するとよいでしょう。
基本的には、銀行の融資を申し込むことが決まったら、なるべく早めに準備することが大切ですが、書類によっては、「3か月以内」や「発行から6か月以内」など有効期限が決まっているものもあります。
申し込みする半年以上前など、あまり早くから準備しても、古い書類として受理されない恐れがあります。
銀行融資の必要書類準備の注意点
必要書類の種類を確認する
銀行融資の必要書類を用意する際は、まずはどんな書類が必要かを確認しましょう。
必要な書類は、申し込む銀行や、融資制度・商品によって異なります。「申し込み条件」に必要書類が書かれているはずですので、メモやリストを作るなどして漏れがないよう準備しましょう。
決算書等を見て自社の経営状況の把握・確認しておく
銀行融資では面談もあります。必要書類を準備する際は、決算書や事業計画書、資金繰り計画書などを見直し、事業の現況を再確認しておくことも大切です。
経営状況を把握し、改善策をまとめることで、面談でも説得力あるアピールにつながるはずです。
提出時は不足書類や内容に間違いがないか再チェックを
必要書類がそろったら、提出する前にもう一度不足書類がないか、計算ミスや記入漏れがないかなどを確認することも大切です。
不備があれば再提出が必要になったり、最悪は銀行融資が通らなかったりすることもあります。最終確認は必ず行いましょう。
銀行融資の必要書類は早めの準備が大切
必要書類を確認して不足や漏れのない書類の準備を
銀行融資では決算書や経営計画書、試算表、資金繰り計画書など、さまざまな必要書類を用意することになります。書類を提出しなければ審査が進みませんし、場合によっては借入自体ができなくなる恐れもあります。提出を求められた書類は速やかに提出できるよう、なるべく早めに準備を始めることが大切です。申し込み条件を確認し、不足書類や不備がないよう心がけましょう。
また、銀行融資では返済能力がきちんとあることを示す必要があります。融資を受けることが、事業にとってどうプラスに働くのか、経営計画書や資金繰り計画書などを使って、具体的な計画や見込みを伝えましょう。
書類作成にあたり、不明な点があれば顧問税理士等の専門家に相談するのもおすすめです。スムーズな審査通過のためにも、万全の準備で臨みましょう。