法人の投資活用による節税対策一覧

法人の投資活用による節税対策一覧リース・投資で節税する
この記事は約10分で読めます。

法人が「投資」によって節税をするためにはどのような方法があるのでしょうか。法人としての投資方法には様々な種類があります。節税対策としては支出を伴わない節税と支出を伴う節税がありますが、支出を伴うものだとしても投資につながるものであれば将来の売上に繋がります。今回の記事では、それらの投資を活用したな節税方法を一覧として種類ごとにご紹介していきます。

法人が行う投資とは

投資とは広い意味で「将来の資本を増加させるために、現在の資本を投じる活動」のことを言います。つまり法人が行う投資とは、将来の売上を増加させるために行う法人の支出のことを指します。

法人が行う節税対策の種類

節税対策には大きく分けて、支出を伴わないものと支出を伴うものがあり、支出を伴うものには大きく分けて将来の投資につながるものとつながらないものがあります。
法人の節税対策として重きを置きたいのは

  • 支出を伴わない節税
  • 支出を伴うが投資につながる節税

となります。支出を伴わない節税がベストですが方法や節税金額は限られてしまいます。

一方支出を伴うとしても将来の売上に繋がるのであれば長期的に見て法人としてはプラスになります。
「支出を伴うが投資につながる節税」をおおまかに分類すると下記の4つに分類できます。

  • 設備投資による節税
  • 人材投資による節税
  • 将来の売上獲得のための投資(広告宣伝・研究開発)
  • 分社化による節税

本記事でひとつずつ解説していきます。

設備投資による節税

まず法人が行うことのできる投資として、将来の売上を獲得するための「設備投資」が考えられます。例えば工場などでは、新しい機械を搬入することにより作業効率が上がり、将来の売り上げの増加も見込むことができます。そのような機械購入のための支出は将来の売上をもたらす設備投資となります。

この設備投資にかかった費用は通常「減価償却費」としてそれぞれ資産ごとに定められている耐用年数で按分して経費にしていきます。法人としてはこれらの設備投資を通して将来の投資を行いつつ、法人税の支払いも抑えることが可能となります。

30万円未満の少額減価償却資産

この設備投資を行う際に、取得した減価償却資産が30万円未満である場合、取得金額の全額を一括で損金とすることができます。この特例を使うことでより短期的な節税対策を行うことができます。条件としては以下の要件を満たしている必要があります。

  • 30万円未満の資産
  • 年間の合計で300万円
  • 平成18年4月1日から令和2年3月31日までの間に取得

これらの条件を満たしている場合、少額減価償却資産として取得した期に一括で経費に落とすことができます。

20万円未満の一括償却資産

少額減価償却資産には年間の合計で300万円の限度額がありますが、20万円未満の資産を購入した場合、一括償却資産として

取得価額の合計額×当期の月数÷36

で減価償却費として計上することができます。

この方法によっても通常の償却より損金化できるタイミングが早いので、早期に経費とすることができます。またこの一括償却資産は償却資産税も非課税となるため、法人税だけでなく償却資産税も節税することができます。

中古資産購入による節税

また資産にはそれぞれ定められている耐用年数があるとお伝えしましたが、中古資産を購入した場合にはより短い期間で償却することができます。特に償却方法として「定率法」を採用しているような場合には定められている耐用年数の前半に大きな金額を償却できるため、直近の決算で利益が出てしまうような場合に有効な節税対策となります。

例えば中古車両の場合、4年落ちのものを購入することによって実質全額を初年度の経費とすることが可能となります。

人材投資による節税

また設備への投資だけでなく、役員や従業員といった人材のための投資を行いながら節税対策をすることもできます。具体的には以下の方法が人材投資による節税対策として考えられます。

社宅活用による節税

社宅を活用した節税対策では従業員としては家賃の負担が少なくなり、より通勤条件の良い場所に住むことができるというメリットがあります。会社としても優秀な人材を確保、維持することに繋がります。

節税面では、例えば10万円の賃貸物件を法人として借りて、従業員に家賃3万円で住んでもらう場合、支払う家賃10万円と受け取る3万円の差額7万円部分は経費として計上することができます。

更にこの節税対策では、従業員としても10万円の家賃を本来支払わなければならない物件に3万円で住むことができているため、仮に法人として給与をその差額分7万円下げたとしても家賃の支出が少ない分、プラスマイナスゼロとなります。また給与を下げた場合、その下がった7万円分、従業員としては所得税や社会保険料も節税することができます。

社員旅行により節税

また従業員への福利厚生の一環で社員旅行を行うことで、従業員のモチベーション維持しつつ、節税も行うことができます。
この社員旅行を非課税とするためにはいくつか条件があります。まず旅行の内容が社会通念上一般的なものであることが前提として、

  • 旅行の期間が4泊5日以内であること。
  • 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること

が必要な要件となります。

一定要件を満たしていない場合、従業員への給与扱いとなってしまったり、交際費として扱われることがあります。給与として扱われる場合には従業員それぞれが源泉所得税や住民税を負担することとなり、交際費となる場合、損金として扱うことのできる金額に上限が課せられます。

しかしこの社員旅行も経費とすることが出来れば従業員確保や維持のための投資による節税となります。

決算賞与により節税

人材投資として最もモチベーション効果があるものは賞与ではないでしょうか。この賞与は法人により夏季賞与、冬季賞与などと定めている場合がほとんどですが、「決算賞与」として節税対策を行いたい期に駆け込みで経費として参入させることもできます。この決算賞与を期中の経費として参入させるためにはいくつか条件があり、

  • イ その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること。
  • ロ イの通知をした金額を通知した全ての使用人に対しその通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること。
  • ハ その支給額につきイの通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。

が必要となります。(No.5350~使用人賞与の損金算入時期)

これらの条件を満たしていれば期中の経費として計上することができます。つまり実際には支給していなくても未払いとして経費計上が可能です。

社内規程により節税

また社内規程を準備することにより節税対策を行うこともできます。社内規程により、例えば出張旅費規程を定めておけば、法人としては出張日当を経費にすることができ、従業員としては給与ではないので所得税などの負担が増えずに手取りを増やすことができます。

またその他先ほどの社員旅行や決算賞与、福利厚生に関する規定を定めておくことで税務調査などの際にも税金逃れではなく会社として定めていたものとして証明することができます。社内規定を整備しておくことは従業員にとっても福利厚生面での充実となりますし、法人としても節税対策に繋がります。

退職金共済により節税

退職金制度がしっかりと完備されている法人であれば法人としての魅力も増し、優秀な人材を確保することができます。この退職金に関しても「中小企業退職金共済」を活用することにより法人として節税につなげることができます。

中小企業退職金共済では掛け金を全額損金とすることができます。特に年払いが可能なため決算直前の税金対策としても有効です。
ただし、積立期間が2年未満の場合には支給額が掛金総額を下回るため加入の際にはよく検討する必要があります。

実際退職金を支給する際には「退職所得控除額」が勤務年数によりそれぞれ定められているため、従業員は税金の負担を軽減させて退職金を受け取ることができます。金額や勤務年数によっては全く税金がかからずに退職金を受け取ることも可能です。

勤続年数(=A)退職所得控除額
20年以下40万円 × A(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超800万円 + 70万円 × (A – 20年)

将来の売上獲得のための投資

法人が行う投資として、将来の売上獲得のための投資があります。具体的には取引先への接待交際費、新規顧客を獲得するための広告宣伝費などです。
それぞれの節税効果と注意しなければならない点を解説していきます。

接待交際費による投資と節税

取引先への接待活動は将来の仕事獲得のため、また関係維持のために必要な投資となる場合があります。この接待交際費は経費となりますが、法人税計算上の経費(損金)と認められるためには一定の限度があります。

資本金1億円以下の中小企業であれば

  • 年間800万円まで
  • 接待飲食費の50%

のどちらかを限度として選ぶことができます。

つまりそれを超える部分に関しては会計上経費にしていたとしても税務上経費としては認められませんので注意しましょう。

また大企業(中小企業以外)の場合も、交際費等のうち接待飲食費の50%に相当する金額は損金として計上することができます。

広告宣伝による投資と節税

また広告宣伝費に投資することで将来の売り上げに繋げることができます。この広告宣伝費はもちろん経費として計上することができるので、期中に支出することで法人税を節税することができます。

しかし注意しなければならないのは、例えば広告宣伝ようの看板などを設置するような場合、金額が大きいものに関しては「資産」として計上し、減価償却費として按分した者を経費計上しなければならない場合もあります。そのような場合には一括で経費として落とすことはできず、定められた耐用年数で償却していく必要があります。

また内容によっては広告宣伝費としてではなく「交際費」として扱われる場合もありますので、その場合には先ほどの交際費の上限額に注意しましょう。

研究開発による投資と節税

また法人として「研究開発費」に投資することで将来の売り上げを伸ばすこともできます。この研究開発費に関しても要件を満たしている場合税額控除を受けることができ節税につながります。国としても研究開発に対する優遇は大きく、4つの税額控除制度が用意されています。

  1. 総額型税額控除制度
  2. 特別試験研究に係る税額控除制度
  3. 中小企業技術基盤強化税制
  4. 高水準型

研究開発に伴う控除額についてはそれぞれ複雑な計算方法がありますが、法人税額の5~25%程度まで控除があり、法人税等を大幅に節税することができます。

分社化による節税

その他の投資として「法人の設立」があります。法人が成長し、規模が大きくなってきたのであればこの法人への投資を考えてみてみ良いかもしれません。この新たな法人を設立することを%法人の分社化と言いますが、

  • 事業の内容
  • エリア

などの単位で分け、それぞれ独立した子会社を設立することができます。

分社化により法人税等を節税

分社化することによって中小企業の軽減税率の恩恵を受けることができます。法人税の税率は所得金額800万円以下と800万円超の部分の2段階によって分かれているため分社化して所得を下げることによって中小法人は税率を下げることができます。

分社化により消費税等を節税

また分社化により法人税等だけでなく「消費税等」も節税することもできます。法人は設立してから最大2年間は消費税の納税義務が免除されることから、その2年の間、法人内に消費税の支払い金額をストックしておくことができます。
またその他、法人が2社できるため、先ほどご紹介した交際費などの限度額(800万円)を法人分増やすことができます。

まとめ:法人の投資活用による節税対策一覧

今回の記事では法人の投資活用による節税対策について解説してきました。

  • 設備投資
  • 人材投資
  • 接待交際費
  • 広告宣伝費
  • 研究開発費
  • 分社化

等の投資についてご紹介しました。それぞれ条件もあるため全てを活用することはできませんが、必要に応じて組み合わせることにより最大限の節税効果を生み出すことができます。法人の投資活用による節税をお考えの場合には専門の税理士や節税コンサルティングサービスをご利用ください。

タイトルとURLをコピーしました