人材投資で節税対策!受けるための要件は?

人材投資で節税対策!受けるための要件は?リース・投資で節税する
この記事は約11分で読めます。

人材投資が節税対策になる仕組み

人材投資がなぜ「節税」に繋がるのでしょうか。それは国が行っている制度に理由があります。

人材投資を積極的に行っている企業であれば、「地方拠点強化税制」や「所得拡大促進税制」などの税制優遇を活用することができ、条件に該当していれば法人税を大幅に節税することができます。

国としても雇用を増やすための支援としてそのような税制面での優遇を準備しているわけです。企業としてはその国の優遇を活用することによって法人税を節税することができます。

人材投資で地方拠点強化税制を活用し節税する

以前は「雇用促進税制(同意雇用開発促進地域において無期雇用かつフルタイムの労働者を新規雇用した場合に1人当たり40万円の税額控除が受けられる制度)」として知られていた制度ですが、「雇用促進税制」は平成29年度(法人の場合は平成30年3月31日までに開始する事業年度、個人事業主の場合は平成30年暦年)をもって終了し、平成30年4月1日より新たに「地方拠点強化税制」が設けられました。

この地方拠点強化税制の制度の概要としては、地域再生法に基づき都道府県知事が認定する「地方活力向上地域特定業務施設整備計画」の認定を受け、本社機能の拡充・移転を実施する事業主において、特定業務施設(整備計画に基づき整備する本社機能を有する施設をいいます。)の雇用者を増加させた場合、税額控除が受けられるというものです。

地方拠点強化税制を受けるための条件

  • 地方活力向上地域特定業務施設整備計画の認定
  • 本社機能の拡充・移転を実施
  • 雇用者を増加

これらの条件が満たされていれば、税額控除が受けられます。

ここで言う「地方活力向上地域特定業務施設整備計画」とは、人口減少と経済縮小の悪循環を断ち切るための政策で、地方活力向上地域において本店または主たる事務所その他の地域における就業の機会の創出又は経済基盤の強化に資するもの(特定業務施設)を整備する以下の事業の実施に関する計画のことをいいます。

移転型事業

東京23区から特定業務施設を認定地域再生計画に記載されている地方活力向上地域に移転して整備する事業

拡充型事業

認定地域再生計画に記載されている地方活力向上地域(拡充型事業の対象地域)において、特定業務施設を整備する事業

人材投資で所得拡大促進税制を活用し節税する

また人材投資で節税する制度としてもう一つ、「所得拡大促進税制」と言う制度があります。

この制度は、平成30年4月1日~平成33年3月31日までに開始される事業年度につき、青色申告書を提出している中小企業者等が一定の要件を満たした上で前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。(税額控除額は法人税額の20%が上限となります。)

人材投資を行った節税例

ではこれらの人材投資を行った場合、どれくらいの節税効果があるのでしょうか。地方拠点強化税制、所得拡大促進税制それぞれの節税効果についてご紹介します。

地方拠点強化税制の節税効果

地方拠点強化税制の種類

地方拠点強化税制には

  • 拡充型
  • 移転型

があります。

拡充型

  • 地方に本社を置く企業がその本社を増築
  • 東京23区以外に本社を置く企業が地方都市に移転

するような場合で、地方において本社機能を拡充する事業者が適用できます。

移転型

  • 東京に本社を置く企業が地方都市に新社屋を建設し本社を移転
  • 東京23区から地方に本社機能を移転

するような場合に適用することができる制度です。

拡充型(地方の本社機能を拡充したい)の節税効果

拡充型の場合、特定業務施設における雇用者増加数(法人全体の雇用者増加数が上限)に応じ、次の金額の合計を税額控除できます。

Ⅰ無期雇用かつフルタイムの要件を満たす新規雇用者数

1人あたり60万円(法人全体の雇用者増加率が8%未満の場合:30万円)※移転型事業の場合は5%未満。

Ⅱ 新規雇用者数からⅠの数を控除した人数(新規雇用者数の4割が上限)

1人あたり50万円(同:20万円)

Ⅲ 特定業務施設における雇用者増加数から新規雇用者数を控除した人数

1人あたり50万円(同:20万円)

中小企業者とは、租税特別措置法に定義される中小企業者を言います。

雇用者増加数は特定業務施設における雇用者増加数又は法人全体の雇用者増加数のうち小さい方の数が上限です。

移転型(地方に本社機能を移転したい)の節税効果

移転型の場合、拡充型より有利な制度となっています。

Ⅰ特定業務施設における雇用者増加数(法人全体の雇用者増加数が上限)

1人あたり最大60万円税額控除(拡充型事業と同様の支援措置)

Ⅱ上記Ⅰに加え、東京23区からの転勤者を含む特定業務施設の雇用者増加数

1人あたり30万円の税額控除を追加 (Ⅱは最大3年間継続。ただし、特定業務施設の雇用者数又は法人全体の雇用者数が減少した年以降は不適用)

※特定業務施設の所在地が準地方活力向上地域(近畿圏及び中部圏の中心部)内である場合は、20万円。

所得拡大促進税制の節税効果

では所得拡大促進税制を使った場合、どれほどの節税効果があるのでしょうか。この所得拡大促進税制も賃上げ等を行った企業に対して、給与等支給額の増加額の一部を法人税(個人事業主であれば所得税)から税額控除するというもので、要件を満たしている場合には最大で給与総額の増加額の25%を税額から控除することができます。

所得拡大促進税制を受けるための条件

所得拡大促進税は青色申告書を提出している中小企業者等を対象とした制度です。

通常の税額控除

■要件
継続雇用者給与等支給額※1が前年度比で1.5%以上増加 した場合

■控除額
給与総額の前年度からの増加額の15%を税額控除

税額控除の上乗せ

■要件
継続雇用者給与等支給額が前年度比で2.5%以上増加し、かつ、以下のいずれかの要件を満たす場合

1.教育訓練費が前年度比で10%以上増加していること 2.中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上が確実に行われていること

■控除額
給与総額の前年度からの増加額の25%を税額控除

通常・上乗せいずれの場合においても、税額控除額は法人税額の20%が上限となります。そしてこの「所得拡大促進税制」と「雇用促進税制もしくは地方拠点強化税制」における雇用促進税制を同時に適用することも可能です。

人材投資を行った場合の具体的な節税例

では人材投資を行って、地方拠点強化税制の必要条件に該当し節税を行った場合、どれほどの節税効果があるのか、具体的な数字で見ていきたいと思います。

例)地方移転に伴い30 人が転勤し、特定業務施設で20 人を新規雇用した場合(法人全体の増加雇用者数は20 人とする。)

この場合、まず新規雇用の20人に対して50万円の税額控除を受けることができます。

50 万円×20 名(新規雇用者数)=1,000 万円 

更に1人あたり30万円の控除を加えます。

30 万円×50 名(当該地域増分)×最長3 ヶ年=4,500 万円 

1,000万円(新規雇用者分)+4,500万円(当該地域増分)=5,500万円

それぞれの控除を合計すると、法人税額負担は合わせて5,500 万円減少することになります。この税制は「税額控除」となるため直接法人税額から控除することができます。

人材投資による節税のメリット

では人材投資による節税にはどのようなメリットがあるのでしょうか。人材投資によるメリットは大きく分けて

  • 税額控除による節税金額
  • 長期的な投資

があります。

人材投資による税金面でのメリット

人材投資による節税のメリットはまず「節税金額」にあります。経費を作るなどの節税と違い、「税額控除」を受けることができるので、法人税額を直接減額させることができ、非常に大きな節税効果が期待できます。

例えば通常の節税の場合、経費を100万円作ったとしても、その経費の額に対して法人税率がかけられるため、100万円の節税効果があるわけではなく法人税率をかけた金額分が節税となります。

仮に法人税等の税率が36%であった場合、100万円の経費を作っても節税効果は36万円です。一方税額控除は法人税から直接差し引くことができます。もちろん最大で法人税額の20%などの「上限」もありますが、法人税を多く支払っている企業であればその分節税効果も大きくなります。

人材投資による投資としてのメリット

また人材投資による節税は結局、人に対しての「投資」であるため、そこでの支出は将来会社にとって益を生み出してくれるものとなります。この制度を使い新規で雇った社員が将来大きな収入を生み出してくれることにもなります。

この人材への投資は他の節税対策と比べ、長期的に見てもリターンのある価値ある節税と言えます。

人材投資によるメリット

  1. 税額に直接控除を受けることができる
  2. 将来会社のプラスになる節税

人材投資による節税を受けるために

では人材投資による節税を受けるためには何をしなければならないのでしょうか。大きく分けて以下のステップを踏んで控除を受けることができます。地方拠点強化税制、所得拡大促進税制それぞれの手順をご紹介します。

地方拠点強化税制の税制支援措置を受けるために

地方拠点強化税制の税制支援措置を受けるためには大きく分けて以下の手順が必要になります。

  1. 雇用促進計画を作成・提出
  2. 雇用促進計画の達成状況の確認
  3. 税務署に申告

雇用促進計画を作成・提出

雇用促進税制を受けるためには適用年度開始後または地方活力向上地域特定業務施設整備計画認定後2ヶ月以内に雇用促進計画をハローワークに提出しなければなりません。主たる事務所を管轄するハローワークに雇用促進計画を提出してください。

雇用促進計画の達成状況の確認

適用年度終了後2ヶ月(個人事業主は3 月15 日)以内に、主たる事務所を管轄するハローワークに雇用促進計画の達成状況の確認を求める必要があります。

税務署に申告

達成状況の確認を受けた雇用促進計画の写しを確定申告書等に添付し、期日までに確定申告を行います。

所得拡大促進税制の適用を受けるためには

所得拡大促進税制の適用を受けるためには、税務申告より前に特段の手続きを行う必要はありません。ただし、本制度の適用を受けるためには法人税(個人事業主の場合は所得税)の申告の際に、確定申告書等に税額控除の対象となる雇用者給与等支給増加額、控除を受ける金額及びその金額の計算に関する明細書を添付する必要があります。

所得拡大促進税制の適用を受ける方法

法人税申告の際に確定申告書等に明細書を添付

人材投資による節税をうけるためにはどこに依頼すれば良いのか

この人材投資による節税を受けるためには、どこに依頼すれば良いのでしょうか。

税金面については税理士、雇用部分については社会保険労務士、また所得拡大促進税制の上乗せ要件にある「経営力控除位計画の認定」を受けるためには経営革新等支援機関(認定支援機関)からの文面が必要となります。

この経営革新等支援機関は、中小企業支援者のほか、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士等が主な認定支援機関として認定されています。

しかしここにある全ての士業の方が経営革新等支援機関として登録しているわけではありませんので注意が必要です。

人材投資による節税の注意点

この人材投資による節税は、国の制度によって成り立っていますので、国の制度が無ければ使えない節税方法です。

例えば所得拡大促進税制に関しては平成30年4月1日~平成33年3月31日までの期限付きのものですし、地方拠点強化税制は以前「雇用促進税制」として知られていましたがその税制は平成29年度(法人の場合は平成30年3月31日までに開始する事業年度、個人事業主の場合は、平成30年暦年)をもって終了し、今回の地方拠点強化税制となりました。

注意しなければならないのは、この節税方法にはそれぞれ期限があるということです。以前使えた節税でも翌年使えなくなるということもありますし、新しい制度では条件に該当しなくなるということもあります。

専門家と相談して最新の税制に自社が該当しているかなどの確認はしっかりとしておきましょう。

まとめ:人材投資で節税対策!受けるための要件は?

「人材投資」は国の制度を活用することにより節税に繋がります。人材投資に対しての税制措置には「地方拠点強化税制」、「所得拡大促進税制」があります。地方拠点強化税制には

  • 地方活力向上地域特定業務施設整備計画の認定
  • 本社機能の拡充・移転を実施
  • 雇用者を増加

などの条件があり、所得拡大促進税制には

  • 青色申告書を提出している中小企業者等
  • 前年比で給与が一定割合増加している

などの条件があります。この税制措置を利用すれば「税額控除」ですので大きな節税効果があります。しかしこれらの制度は期限付きのものですし、条件が変更することもあります。

人材投資による節税を考えている方は人材投資による節税に精通した弊社の節税コンサルティングサービスにご相談ください。

タイトルとURLをコピーしました