中小企業が活用したい特別減税制度~法人税節税に効果的な5つの制度

中小企業が活用したい特別減税制度~法人税節税に効果的な5つの制度節税対策ノウハウ
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特別減税制度は、国が用意した中小企業を支援する制度のひとつです。事業を運営するにあたり、税負担は少しでも減らしたいものですよね。特別減税制度を活用すれば、法人税の節税効果が期待できます。今回はこの記事で、特別減税制度のうち、特に節税に効果的とされる制度について、概要や特徴をご紹介します。

特別減税制度とは

法人税の特別償却や税額控除が受けられる制度

特別減税制度は開発や投資などにより、中小企業の生産性を上げることを目的とした減税制度です。

事業を続けるには、人件費や設備投資や研究開発など、さまざまなコストがかかります。資金繰りに気を配る必要もあるため、企業によってはなかなか必要な投資や開発に力を入れられないケースもあるでしょう。

特別減税制度は、税額控除や特別償却などの措置を受けられる仕組みとなっているので、利用することにより、会社が利益を上げる足掛かりになると考えられます。

節税効果が期待できる特別減税制度

特別減税制度は厚生労働省や経済産業省などから、さまざまな種類の制度が用意されています。中でも中小企業にとって節税対策に効果的な特別減税制度について見ていきましょう。

所得拡大促進税制

所得拡大促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等において、前年度より従業員の給与等を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主の場合所得税)から税額控除できる制度です。積極的な賃上げや人材投資、生産性向上に取り組む企業への支援制度といえます。

税額控除の割合については、通常、継続雇用者に支払った給与等の総額が前年度比1.5%以上増加した場合、15%の税額控除が適用されます。さらに、前年度比2.5%以上の増加で、かつ一定の要件を満たす場合は、上乗せとして増加額の25%分の税額控除が認められます。ただし、税額控除の上限は、通常・上乗せ分いずれにおいても、調整前法人税額の20%とされています。

なお、上乗せの税額控除が適用されるには、下記のいずれかの要件を満たす必要があります。

所得拡大促進税制上乗せ分に関する一定の要件

  1. 教育訓練費が前年度比で10%以上増加していること
  2. 中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上が確実に行われていること

【引用】中小企業向け所得拡大促進税制ご利用ガイドブック(PDFファイル)

また、所得拡大促進税制は、現在のところ平成30年4月1日から令和3年3月31日までに開始される事業年度が適用対象期間となっています。

参考:中小企業向け所得拡大促進税制ご利用ガイドブック(PDFファイル)

地方拠点強化税制における雇用促進税制

地方拠点強化税制における雇用促進税制は、本社機能を東京23区から地方へ移転する事業(移転型事業)や、地方において本社機能を拡充する事業(拡充型事業)を対象として、一定の要件を満たす場合に法人税の税額控除が認められる制度です。

税額控除額は、雇用者を1人増やすごとに最大90万円(拡充型の場合は最大30万円)となっており、大きな節税効果が見込めるのが特徴です。

ただし、この税制を適用されるには、「地方活力向上地域等特定業務施設整備計画」を作成し、都道府県知事から認定される必要があります。また、地方拠点強化税制における雇用促進税制は、主に下記の要件を満たす必要があります。

主な適用要件

  • 青色申告書を提出していること
  • 適用年度とその前事業年度とにおいて、事業主都合による離職者がいないこと
  • 適用年度において、特定業務施設に雇用者を2人以上増やしていること(有期雇用またはパートタイムの新規雇用者は除く)
  • 風俗営業等を営む事業主でないこと
  • 適用年度においてオフィス減税の適用を受けていないこと

参考:厚生労働省「雇用促進税制」

厚生労働省「雇用促進計画の提出手続き」

研究開発税制

研究開発税制は、中小企業の研究開発を促進し、成長力や国際競争力の強化を目的とする制度です。この制度は下記の3種類から構成されます。

  1. 試験研究費の総額にかかる税額控除制度(総額型)
  2. 中小企業技術基盤強化税制
  3. オープンイノベーション型(特別試験研究費の額にかかる税額控除制度)

試験研究費の総額にかかる税額控除制度(総額型)

試験研究費の総額にかかる税額控除制度(総額型)は、試験研究費の総額から税額控除割合(6~14%)を乗じた金額を、法人税から控除できる制度です。控除上限は法人税の25%相当額(一定要件を満たすベンチャー企業については40%相当額)となっています。

さらに、当該事業年度および過去3年の事業年度における平均売上額に占める試験研究費の割合が10%を超える場合は、控除率が上乗せされ、控除上限も10%上乗せされます。

中小企業技術基盤強化税制

中小企業技術基盤強化税制は、中小企業者等の試験研究費の総額から税額控除割合(12~17%)を乗じた金額が、法人税から控除される制度です。控除上限は法人税額の25%相当額です。

なお、総額型と同じく中小企業技術基盤強化税制も、当該事業年度および過去3年の事業年度における平均売上額に占める試験研究費の割合が10%を超える場合は、控除率が上乗せされ、控除上限も10%上乗せされます。

また、増減試験研究費割合が8%超の場合も、控除上限を10%上乗せすることができます。ただし、上乗せ部分についてはいずれかの選択制となります。

オープンイノベーション型(特別試験研究費の額にかかる税額控除制度)

オープンイノベーション型(特別試験研究費の額にかかる税額控除制度)は、会社が負担した特別研究費の額に対し、一定割合(20~30%)を乗じた金額が、法人税から控除される制度です。

特別研究費には、大学や特別研究機関等と共同して行う試験研究費や、委託する試験研究費または中小企業者に支払う知的財産権の使用料などが該当します。大学や特別研究機関と共同で行う研究や、委託する研究がある場合活用できる制度といえるでしょう。

オープンイノベーション型の控除上限は、法人税額の10%相当額となっています。ただし、適用に当たっては契約書等に一定の事項を記載し、相手方による認定等の手続きが必要です。

参考:国税庁「No.5441 研究開発税制について(概要)

経済産業省「研究開発税制の概要」

中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制は、中小企業が積極的に設備投資や事業活動を行えるように定められた減税制度です。具体的には、新品の機械や装置などを取得、または製作し、製造業や建設業など指定事業に供した場合に、購入する機械の費用について特別償却もしくは税額控除が認められるというものです。

中小企業投資促進税制は、青色申告書を提出する中小企業等が対象となります。また、制度の適用対象となる主な資産は、新品で購入したもののうち、下記の通りです。

  1. 機械及び装置で1台(または1基)の取得価格が160万円以上のもの
  2. 品質管理の向上等に資する測定工具および検査工具で1台(または1基)の取得価格が120万円以上のもの
  3. 2に準ずる測定工具および検査工具の取得価額が、1台(または1基)あたり30万円以上かつ複数合計額が120万円以上のもの
  4. ソフトウェアの取得価額が70万円以上、または複数合計額が70万円以上のもの
  5. 貨物の運送用に供される普通自動車で車両総重量が3.5トン以上のもの
  6. 内航海運業用に供される船舶

特別償却の償却限度額は基準取得価格の30%相当額、税額控除の限度額は、基準取得価額の7%相当額となっており、いずれかの選択適用となります。基準取得価額は、船舶については取得価額に75%を乗じた金額、その他の資産についてはその取得価額とされています。なお、現在のところ、中小企業投資促進税制は2020年度末までの適用期限となっています。

参考:No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)

中小企業技術基盤強化税制

中小企業技術基盤強化税制は、中小企業者等の製品製造や技術改良などをサポートする制度です。適用対象となるのは、青色申告書を提出している中小企業者等です。

制度を利用すると、各事業年度において損金算入される試験研究費に対し、一定割合を乗じて計算した金額を、当該事業年度の法人税から控除することができます。対象となる試験研究費は、製品の製造や技術改良にかかる材料費や人件費、外部委託費用などです。

また、税額控除は、調整前法人税額の25%相当額を上限とし、増減試験研究費割合に応じて試験研究費の12~17%相当額が控除として認められます。医薬品など研究開発にコストがかかる事業にとっては、心強い支援といえるでしょう。

ただし、小企業技術基盤強化税制の適用を受けるには、確定申告書等に対象となる試験研究費の金額と控除額を記載し、明細書を添付する必要があります。

参考:国税庁No.5444 中小企業技術基盤強化税制

特別減税制度における特別償却と税額控除の違い

特別減税制度では、制度によって特別償却が受けられる場合と、税額控除が認められる場合、あるいはいずれかを選択できる場合とがあります。それぞれの性質の違いについて押さえておくと同時に、特別償却、税額控除を選択できる場合は、総合的に見て自社にメリットがある方を選びましょう。

特別償却は初年度の償却率を高める制度

特別償却は、設備投資などによる減価償却を行う場合に、初年度の償却率を高めるための制度です。例えば中小企業投資促進税制で、20%の特別償却を受ける場合、取得価格の20%が初年度に一括経費計上できることになります。

ただし、特別償却は、設備の耐用年数全体で経費計上できる総額が変わりません。したがって、初年度の利益が特別に高い場合は、特別償却することにより高い節税効果が生まれますが、長期的な節税効果は期待できないので注意が必要です。

税額控除は費用にかかる税金の一部を控除できる制度

税額控除は、購入価格の比率に応じた分の法人税を減税できる制度です。費用にかかる税金の一部が控除されるので、控除分だけ節税効果が見込めます。

特別減税制度は中小企業の法人節税に効果的

節税対策のひとつとして上手に活用しよう

特別減税制度は中小企業にとってさまざまな支援制度が用意されており、上手に活用することで効果的な節税対策になると考えられます。制度によって特別償却できるもの、税額控除となるものなどがありますが、選択肢がある場合は自社にとって、より節税につながる方法を選ぶことも大切です。

なお、特別減税制度は適用年度の延長や、税制改正などによる適用条件の変更が行われることもあります。実際に活用する際は、最新の情報を確認してから制度を利用することをおすすめします。

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