家族旅行を経費で落とすための条件

家族旅行を経費で落とすための条件経費で節税する
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家族旅行を経費として落とすことはできるのでしょうか?家族旅行が経費になるのであれば経営者としては嬉しいことですが、そのような支出が経費として認められるのであれば法人と個人の公私混同が問われそうです。

今回の記事では家族旅行が認められる条件とそのケースについて、またこれまでの判例なども含めてご紹介していきます。

家族旅行を経費に入れるのは難しい

まず前提として、家族旅行を会社の経費とすることは非常に難しいと言えます。

よく「福利厚生費」として経費計上できるのでは?とお考えの方もいますが、福利厚生費は基本的に従業員に対しての経費となりますので、社長や役員に対して福利厚生という概念は基本的にありません。

家族同伴の社員旅行でも家族分の支払いは「給与」扱いに

もちろん、家族同伴での社員旅行というケースもあるかと思いますが、このような場合、従業員の家族部分に関しての支払いは「給与」として課税される可能性が高くなります。

給与として課税される場合には節税面でのメリットはあまりなく、従業員が

  • 所得税
  • 住民税

を負担することとなります。
また給与は消費税の課税対象とはなりませんので、法人の消費税面での節税対策にはなりません。

また家族負担部分が給与扱いとなった場合、翌年の住民税が高くなっている場合がありますので注意しましょう。

家族旅行が経費として認められるケース

ただし、家族旅行が税務上全く問題なく経費として認められるケースもあります。以下のようなケースでは税務署としても家族同伴の旅費に関してして公式に経費として認めています。

法人の役員が法人の業務の遂行上必要と認められる海外渡航に際し、その親族またはその業務に常時従事していない者を同伴した場合において、その同伴者に係る旅費を法人が負担したときは、その旅費はその役員に対する給与とする。ただし、その同伴が例えば次に掲げる場合のように、明らかにその海外渡航の目的を達成するために必要な同伴と認められるときは、その旅行について通常必要と認められる費用の額は、この限りでない。(平23年課法2-17「二十一」により改正)

1.その役員が常時補佐を必要とする身体障害者であるため補佐人を同伴する場合
2.国際会議への出席等のために配偶者を同伴する必要がある場合
3.その旅行の目的を遂行するため外国語に堪能な者又は高度の専門的知識を有する者を必要とするような場合に、適任者が法人の使用人のうちにいないためその役員の親族又は臨時に委嘱した者を同伴するとき

国税庁 法令解釈通達 第2款 海外渡航費(同伴者の旅費)9-7-8

つまり、

  • 同伴する家族が役員に身体的障害がある場合の補佐人
  • 配偶者同伴の国際会議
  • 通訳や専門知識が必要な場合で適任者が親族となる場合

など、そのような場合には家族部分の旅費も経費とすることができると言われています。

あまりこのようなケースも多くあるとは考えられませんが、上記に該当するケースであれば同伴家族も100%経費として計上することが可能となります。
または上記と似たようなケースであれば家族部分の旅費を経費とすることを検討しても良いでしょう。

家族旅行が経費となる条件は

その他に、どのような場合に家族旅行が経費として認められるのでしょうか。

相手方も配偶者同伴の場合

上記とも関係しますが、例えば接待やビジネス研修で相手方も配偶者同伴の場合、そのような場合にはこちらの配偶者部分に関しても経費として認めることが考えられます。
相手方の配偶者も招待している手前、こちらの配偶者が同席していないことの方が逆に不自然だからです。

取材・調査の名目で旅行代を経費化

また「取材」や「調査」などの名目で旅行代を経費とすることも可能です。
ただし、この場合であってもなぜ家族部分も経費として計上する必要があるのかを考えなければなりません。目的が取材や調査であるからといって家族負担分も経費になるとは限らないからです。
その取材や調査に家族を同伴する明確な理由がある、もしくは「経費部分は何割」というように按分して経費計上しておくことが無難とも言えます。

役員だけで行く旅行は福利厚生費では落ちない

また役員だけで行く旅行を福利厚生費として落とすことは基本的には難しく、慰安旅行として経費計上するためには従業員も参加していなければなりません。
もちろん、全社員を対象にはしているものの参加できない従業員がいるというケースもあります。そのような場合でも従業員全体の50%が参加していなければ経費としては認められません。

家族旅行が経費として認められなかった事例

家族旅行に関しては税務署の目も厳しく、経費として認められなかった具体的な事例もあります。以下の事例は家族旅行が経費として認められなかったケースです。

請求人の従業員は、青色事業専従者である配偶者のみであるところ、従業員等のレクリェーションのため慰安旅行をし、福利厚生費として処理したが、サラリーマン家庭が行う通常の家族旅行と何ら異なる点は認められないとして否認した事例

請求人は、本件慰安旅行費用のうち、請求人及び事業専従者である配偶者に要した費用は、従業員等のレクリェーション費用として必要経費の額に算入される旨主張するが、[1]本件旅行は、家族4人のみで毎年8月に、配偶者及び子女の都合・希望を聞いて実施されており、サラリーマン家庭が行う通常の家族旅行と何ら異なる点は認められないこと及び[2]本件以外にも同様の旅行を実施しているのに、本件旅行費用のみ必要経費になるとした理由も明らかでないことから、本件旅行は、他の企業が実施している従業員のための慰安旅行と変わらないという請求人の主観的理由のみで事業に関連性を持たせ、必要経費に該当すると判断したにすぎず、客観的にみて事業遂行上必要なものであるかが明らかでなく、通常の家族旅行との相違点も認められないため、家事上の経費と判断するのが相当である。

国税不服審判所 家事費、家事関連費・裁決事例集 No.42 – 44頁

この事例では、請求人は家族旅行を従業員のレクリェーション費用として経費計上していましたが、

  • 毎年同じような家族旅行を実施していたこと
  • 毎年の家族旅行と今回の旅行の違いが明らかでないこと

から、経費としての計上が認められませんでした。

通常の家族旅行との違いを証明することが必要

この事例から分かることは、どのような名目で旅行に行ったとしても、通常の家族旅行との違いを証明することができなければ経費としての計上は難しいということです。

家族旅行を経費として計上したいのであれば、経費として計上する旅行と通常の家族旅行の明確な違いを説明できるようにしていなければなりません。

家族旅行を経費とするためのポイント

家族旅行を経費とするために、最低限以下のことはしておきましょう。

  • 仕事としての記録を残す
  • 費用を按分計算する

仕事としての記録を残す

まず、家族旅行としてではなく仕事として行った部分があるならば、その記録を残しておきましょう。
調査や取材としての記録を取っておき、税務調査の際にはそれらの旅行中に仕事として行ったことについて説明できるようにしておきましょう。

もちろん調査などで旅行に行く場合には、具体的な売買契約や結果に繋がっていない場合もあります。そのような場合でも、あくまでも調査として経費として計上することは可能ですので、できる限り記録は残しておきましょう。

接待・交際要素の強い旅行は内容を伝えられないと課税やペナルティのリスクも

また交際要素が強い旅行であればどこの取引先と旅行に行ったのか、そこでどのような話し合いが行われたのかという記録を残しておきましょう。
接待旅行に行った場合、どこの誰と行ったものであるのを税務調査の際に伝えられないようなケースもあります。その際に内容を伝えられない場合、「使途不明金」として課税されてしまうこともあります。また仮想隠蔽などが見受けられる場合には重加算税の対象となる場合もあるので注意しましょう。

費用を按分計算する

また旅行でかかった費用について個人的支出部分がある場合には按分計算をして、あらかじめ費用ではなかった部分を認めておくということも良いでしょう。

そうすることで逆にそれ以外の部分は業務としての支出であることを主張することができます。またこの場合にも按分計算の根拠を明確に説明できるようにしておきましょう。

福利厚生費として計上するための条件

先ほご紹介した「給与か福利厚生費か」という判断の際には、福利厚生費として計上するためには下記の条件を満たしている必要があります。

福利厚生費として計上するための条件

  • 事業主負担部分がおおむね1人あたり10万円以内
  • 4泊5日以内の旅行であること( 海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。)
  • 全従業員の50%以上が参加していること( 工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50%以上が参加することが必要)
  • 不参加者に旅行代として現金を支給していないこと

福利厚生費として計上するためにはこれら4つの条件を満たしていなければなりません。
ただし、この条件を満たしていれば家族部分も全て経費になるわけではありませんので注意しましょう。

また逆に、次のようなケースでは従業員レクリエーション旅行には該当せず、その旅行にかかる費用は給与、交際費などとして適切に処理する必要があります。

給与・交際費として処理が必要な旅行

  • 役員だけで行う旅行
  • 取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行
  • 実質的に私的旅行と認められる旅行
  • 金銭との選択が可能な旅行

給与として扱われる場合には源泉所得税が発生しますし、交際費と判断される場合には損金として計上することができる額の上限※などが定められていますので注意しましょう。

※中小企業(資本金が1億円以下)の場合の交際費は800万円を上限とする損金計上、または上限なく飲食代の半額を損金計上するかと言う選択適用ができます。

税務調査で家族旅行が否認された場合

では税務調査で家族旅行が経費として認められず否認された場合にはどうなるのでしょうか。家族旅行が損金として認められなかった場合、法人としては痛い出費になる可能性があるので注意しましょう。

まず家族旅行にかかる経費を福利厚生費などで経費としていた場合に、その経費が認められず給与(または賞与)扱いとなったとします。その場合、

  • 源泉徴収税額の追加納付
  • 消費税の追加納付

が発生する可能性があります。

源泉徴収税額の追加納付

まず給与扱いとなるので源泉所得税が追加で発生します。

この源泉所得税は家族旅行の支出をした本人に対する給与に対して発生するものです。社長の家族旅行を経費としていたのであれば社長の役員報酬に対して加算されます。所得税は所得に応じて税率も変わり、所得が多くなるほど税率も高くなり税額も大きくなります。

消費税の追加納付

また給与扱いとなる場合、給与は消費税の課税対象ではないため、消費税を追加で納付しなければならない可能性もあります。売上1,000万円を超える個人事業や法人の場合、消費税を支払う義務があり、更に一般課税を選択している場合には、

 売上にかかる消費税額−仕入等にかかる消費税額

によって納付税額を算出します。

消費税の追加納付の発生例

例えば、売上にかかる消費税額が100万円、仕入等にかかる消費税額を80万円としていた場合、消費税の納付税額は20万円となります。

 100万円−80万円=20万円

もし福利厚生費として計上していた10万円が給与扱いとなった場合、この80万円から10万円部分をマイナスしなければならないため、消費税の納付税額は30万円となります。

 100万円−70万円=30万円

家族旅行の否認が影響しての追加納付・延滞税に注意

年間の売上が1,000万円を超えていて消費税の課税対象であり、一般課税を選択している場合には消費税も追加で納付しなければならない可能性があるので注意しましょう。またこれらの源泉所得税や消費税に対しては延滞税などの加算税も発生すると言うことも覚えておきましょう。

まとめ:家族旅行を経費で落とすための条件

今回の記事では家族旅行を経費で落とすための条件についてご紹介してきました。前提として家族旅行を経費とすることは非常に難しく、過去の事例では認められなかったケースもあります。
ただし、税務署が指定する特定の条件に該当する場合、また通常の家族旅行と経費が明確に区分できる場合に限り、家族旅行を経費とすることができます。

家族旅行に関しては額が大きいため節税効果も大きくなります。しかし注意しなければ税務調査で指摘される可能性もあります。節税対策として家族旅行をお考えの場合、専門の税理士や節税コンサルティングサービスをご利用ください。

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