会社を経営していると学費のような金額の大きいものが経費になるか、悩むこともあるのではないでしょうか。同じ費用でも、条件が違うと損金に計上できる場合とできない場合とが分かれることがあり、判断に迷うこともあるでしょう。今回は家族の学費が経費にできるのか、計上できる範囲や気を付けたいポイントなどについてご紹介します。
経費にできる学費
法人や個人事業主、フリーランスともに、学費には経費にできるものと、できないものとがあります。まずは経費にできる学費の種類や範囲について見ていきましょう。
自分や社員の業務やスキルアップに関わる学費は経費にできる
経費として認められるポイントは、業務に関係し、売上向上につながることが前提となります。したがって、業務に関連し、資格取得やスキルアップにつながるものであれば、経営者だけでなく役員や社員の学費であっても経費になります。
例えば、経理担当者が帳簿をつけるために、会計の専門学校に通う場合や、不動産会社の社員が宅地建物取引士の資格学校に通う場合の学費などは経費として認められるでしょう。
経費として認められる可能性が高い学費
- 資格学校
- 専門学校
- MBAなどの専門性のある大学院、ビジネススクール
- 事業に関係する研修、セミナー費用
専門的な勉強や資格取得費用は経費として認められやすい
一口に学費といってもさまざまですが、専門的な勉強をする場合や、資格取得が目的の費用であれば、経費として認められやすい傾向にあります。専門的な勉強、資格取得の費用は、会社の業務の遂行や売上のアップにもつながることが多いからだと考えられます。
研修やセミナー費用も経費にできることが多い
研修や学会、セミナーの費用についても、学費の範囲として経費にできることが多いです。研修やセミナーに参加することでも、業務に必要な知識やスキルを習得できることがあるからです。さらに、研修やセミナーなどに行くことでビジネスにつながる交流を持つことや、情報交換ができることもあるでしょう。
ビジネス本や教科書代も経費計上可能
ビジネスに関する学費は、授業料を納めて受講する形式以外に、自宅で本を読み、勉強する場合も考えられます。
基本的には、資格取得や業務上必要となるビジネス本や教科書、雑誌、新聞などの書籍代も経費として計上することが可能です。例えば資格取得を目指してTOEICのテキストや辞書を購入した場合や、会計の勉強をするための簿記の教科書費用は経費として認められる可能性が高いです。
経費にできるのは「業務上必要な学費」
経費にできる学費の種類や範囲については、基本的に業務上必要な費用であることがポイントです。授業料や資格取得にかかる費用、セミナー費用など、それぞれの費用がビジネスにとってプラスになるなら、経費にできる可能性は高いでしょう。
経費にできない学費
学費の中でも、学校の種類によっては経費にできないこともあります。例えば下記のケースでは経費として認められない可能性が高いです。
経費にならない学費例
- 経営者や社員が総合大学や専門性のない学校に通う場合の学費
- 子どもにかかる学費
総合大学など専門性のない大学や学校の学費
経費にできない学費のひとつが、総合大学のような専門性のない学校の費用です。経費として認められるのは、資格取得やスキルアップを目的とし、特定の分野を勉強する場合の学費だからです。総合大学では、さまざまな分野の勉強をまんべんなく学ぶため、専門性がないと判断されやすいです。業務に直接関係のない費用と分類され、経費にするのは難しいでしょう。
専門的でも医学部の学費はNG
大学の中でも医学部であれば、専門性があり経費になるのではないかと思われるかもしれません。ですが、医学部のような専門的な分野を学ぶ大学であっても経費にすることは難しいです。実際は医学以外にも学ことが多く、総合大学と判断されるからです。
総合大学の費用を会社負担した場合は社員の給与扱いに
仮に経営者や社員が総合大学に通うことになったとして、その学費を会社が負担した場合は、給与扱いになるのが一般的です。給与扱いとなると、経営者や社員個人の収入が増えることになり、所得税や住民税が発生することになるので注意しましょう。
子どもの学費
同じ学費でも、子どもの学費は経費にすることができません。保育園や幼稚園、小学校、中学校、高校、大学と子どもにかかる学費は大きいですが、すべて個人的な費用とみなされます。
例えば将来の跡継ぎとして、開業医が子どもを医学部に通わせているとしても、その学費を経費にすることは認められません。子どもが本当に跡継ぎになるとは限りませんし、医学部に通うことで、医院の収益アップにつながるわけでもないからです。
社員の家族など第三者の学費を経費にする方法
社員でない人には奨学金としての支給なら経費計上が可能
役員・社員の家族や、将来雇用したいと考える優秀な人材に対する学費は、「奨学金」として支給し、経費にする方法があります。実際、学校に通う間は奨学金を支給し、卒業後に自社で勤務してもらう期間の返済を免除する制度を設けている会社はあります。特に医師や看護師、薬剤師などの医療系の会社では、将来の人材確保のために行われていることは多いです。
将来雇用したいと考える人材がいる場合や、優秀な人材を確保したい目的があるなら、奨学金という名目を活用するのも、方法のひとつといえるでしょう。
学費を経費に計上するときの注意点
経費にする場合は全社員を平等に扱うこと
学費を経費に計上するときは、特定の社員を対象にするのはNGです。すべての社員に等しく、資格取得やスキルアップのチャンスを与え、経費化できる状態にしておきましょう。もちろん奨学金制度を作る場合も同様です。広く公募せず、一部の対象者だけに奨学金を渡すような状態にすると、経費として認められないので気を付けましょう。
既存事業や新規ビジネスに関係する学費であること
学費を経費にできる、できないは、基本的には今の業務に関係するかどうかがポイントとなります。ただ、仮に今の業種に関係がない勉強でも、これから新しいビジネスにチャレンジする場合の学費も経費にすることが可能です。経費にできる範囲について考えるときは、現状の業務、もしくは新しいビジネスに関係するかどうかを判断材料に考えるとよいでしょう。
業務のスキルアップにつながる学費は経費にできる
総合大学や子どもの学費は経費にできない
法人、個人事業主ともに、学費には経費になるものと、ならないものがあります。経費になるのは、業務に関する勉強や資格取得にかかる費用で、経営者を含め役員、社員が対象です。
例えば、資格学校や専門学校、大学院やビジネススクールの授業料や、研修や学会、セミナーへの出席にかかる費用などです。ほかにも、教科書や雑誌、新聞代は経費に計上できます。
ただし、いくらスキルアップを目的としていても、総合大学の費用は経費にできません。また、家族や子どもの学費も経費にすることはできません。経費にできるのは、業務に関係する特定の分野や専門的な勉強をする場合だからです。仮に専門的な分野を学ぶ学校に通うとしても、業務に関係がない以上経費にはできないでしょう。
学費を経費にできるかどうかの判断は、学ぶ内容や資格取得によって、ビジネスにプラスになるか、売上の向上につながるかを指標にするとよいでしょう。