事業計画書のターゲットはどう決める?絞り込む方法や掘り下げたいポイント

事業計画書のターゲットはどう決める?絞り込む方法や掘り下げたいポイント資金繰り・資金調達
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事業計画書の中でも、「ターゲット」の設定は核となる項目です。ターゲットは参入する市場や、どんな顧客に対し、商品・サービスを提供するかを決める必要があります。今回は事業計画書のターゲットを決める方法や、融資担当者を納得させるために、掘り下げたいポイントなどについてご紹介します。

事業計画書のターゲットはどう決める?

事業参入する市場を決める

事業計画書におけるターゲットを決めるには、まずどんな市場に参入するかの選定する必要があります。参入する市場を明確にしなければ、事業自体も成功する可能性が低くなるからです。市場の選定をする際のポイントは、算入できるだけの十分な規模や余地があるかどうかです。

顧客を分類し、顧客層を定義する

事業計画書には、参入する市場のほか、提供する商品やサービスのターゲットも決める必要があります。商品やサービスのターゲットは「どんな顧客に提供するか」を考えることです。

例えば個人であれば性別や職業、年齢層、住んでいる地域などで分類し、絞り込みます。法人を対象とした事業であれば、所在地や業種、従業員数、設立年や想定される取引先などで分類しましょう。さらに、どの程度の顧客数が見込めるか、どんな好みや課題、ニーズを持っているかなども絞り込みます。

顧客を分類し、それぞれのニーズをまとめることにより、ターゲットとなる顧客層も定まってくることが多いです。顧客層を明確にすることで、より顧客目線で商品開発をすることや、顧客に選んでもらえるようなサービスを生み出すことにつながるでしょう。事業計画書にも説得力が生まれやすくなるはずです。

ペルソナ設定を元に顧客層に刺さる商品・サービスを企画する

商品やサービスのターゲットは、細かく分類して絞り込んでから、ペルソナを設定して検討しましょう。ペルソナとは、1人または1社の具体的な顧客を想定することです。

ペルソナの設定例

  • 30代の女性
  • 結婚して共働き家庭
  • 住宅街の一戸建てに住んでいる
  • シンプルでかわいいものが好き
  • 子育てもあり時短アイテムを必要としている・・etc

ペルソナ設定は漠然とするのではなく、具体的に落とし込むことが大切です。

ペルソナを設定することにより、売りだそうとしている商品やサービスがターゲットとなる顧客層に刺さる魅力があるか、改善する点がないかなど検証することもできます。

例えば、事業を展開する場所が間違っていないか、顧客の心をつかむ商品・サービスの内容か、ネーミングやカラー展開はキャッチーか、広告宣伝方法は適切かなどです。事業展開や提供する商品の価値や魅力を把握するなど、事業の軸を定めることにもつながるでしょう。

ターゲットに刺さる事業計画書を準備するポイント

商品・サービスが提供する価値は明確か

商品やサービスを提供する顧客層が決まったら、提供する商品・サービスの価値も明確にしましょう。事業計画書において商品・サービスの価値を明確にすることで、顧客のニーズを満たす商品開発、つまり顧客となるターゲットに刺さる商品開発にもつながるはずです。

商品・サービスの機能性は競合より優れているか

顧客ターゲットに刺さる商品・サービスの価値は、3つの視点で考えていくのがポイントです。1つ目は商品やサービスの機能から見た、機能的価値です。例えば洗濯機であれば、洗濯をする機能、洗濯から乾燥まで全自動でできる機能などが機能的価値にあたります。

ただ、機能的価値だけを高めても、最終的に顧客が自社の商品・サービスを選んでくれるとは限りません。顧客は機能だけ見て商品やサービスを選ぶとは限らないからです。

もし、有名企業と無名の会社が同じような商品・サービスを提供するとしたら、多少機能が劣っても顧客が有名企業を選ぶ可能性は大いに考えられます。したがって、自社の商品やサービスが、競合他社より優れているからといって顧客に選んでもらえるとは限らないことを考慮する必要があるでしょう。

顧客の満足感・安心感を担保できるか

顧客ターゲットの心をつかむ商品・サービスの提供価値は、心理的価値も必要です。心理的価値は、顧客の優越感や満足感を刺激する価値です。安心感や自己実現の達成なども心理的価値に含まれます。

例えば有名企業と無名の会社とで同じ機能がついたコーヒーメーカーを提供し、値段は有名企業のほうが高いとします。ここで有名企業のコーヒーメーカーを購入する顧客の心理を想像すると、「安心感がある」ことが理由のひとつと考えられます。

他にも「他の人よりお金持ちと思われる」ことで優越感が刺激されるのかもしれません。あるいは、「有名企業のコーヒーメーカーを購入できる」ことで自己実現の達成感につながる可能性もあります。人によってさまざまな心理的価値があるからこそ、価格が高くても有名企業の製品を購入するのだと考えられます。

ポイントは、顧客が商品そのものではなく、商品から得られるメリットに対してお金を支払うことです。したがって単純に機能面を充実させるだけでなく、顧客の満足感、安心感を刺激するような商品・サービスを提供することが、「売れる商品」実現のため、重要となるでしょう。

コストパフォーマンスは最適か

顧客ターゲットに対する3つ目の提供価値は、商品やサービスによって得られる経済的価値です。例えば包丁で薄切りをするより、スライサーを使うほうが均一で早く薄切りができる可能性が高いように、商品やサービスを使うことで作業効率がアップすることも、顧客に提供する価値となります。

作業効率のアップや、コストダウンにつながること、収入アップにつながるなどの経済的価値も、顧客の心をつかむために重要な要素です。心理的価値と同じで、顧客は商品やサービスから得られるメリットに対し、お金を払うからです。提供する商品やサービスを活用すればコストパフォーマンス向上につながることを、事業計画書にもまとめましょう。

事業計画書で重視されるターゲット・ニーズの掘り下げ

「目に見える」顧客のニーズを明らかにする

事業計画書に説得力を持たせ、事業自体を成功させるためにも、ターゲットや顧客が持つニーズはできるだけ掘り下げることが大切です。

ニーズを掘り下げるために、まずはどのくらいの人数の顧客が何に対して悩みを持っているかを把握しましょう。合わせて、その悩みは現状どのような商品・サービスによって解決されているかもリサーチすることも必要です。

同じ悩みを持つ顧客の人数や今の解決策を把握したら、顧客のニーズを、より深く掘り下げていきます。顧客が持つニーズは、主に「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」との2種類に分けられます。

顕在ニーズは、文字通り目に見えている顧客のニーズです。例えばオーブントースターを使用する顧客が、「もっと焼き上がりがおいしいトーストを食べたい」と感じたとします。顧客が「おいしいトーストを食べたい」と感じる気持ちが、顕在ニーズにあたります。

潜在的な顧客ニーズを見つける方法

潜在ニーズは、顕在ニーズの裏に隠れているニーズです。顧客が本質的に求めているニーズですが、顕在ニーズのように目に見えるニーズではないため、あぶりだす必要があります。

潜在ニーズとしてよくある例のひとつが「車」です。かつて車が存在する前の欧米では、顧客に何が欲しいかを質問すると、「もっと早い馬が欲しい」と答えただろう、といわれています。19世紀以前の人々は速く移動したいときは馬車を使うという考えが一般的だったからです。しかし、車が世に出てから、人々は「本当は馬車ではなく、車を求めていた」と理解したと考えられます。

潜在ニーズは、顧客自身が目の前の問題を解決することに意識が向いており、気づいていないこともあります。顕在ニーズの裏にある、顧客の潜在ニーズを掘り下げることにより、競合他社より優位に立つ商品・サービスの実現も可能になるでしょう。

既存顧客へのヒアリング

潜在ニーズを見つけるには、いくつかの方法があります。すでに事業を行っていて顧客がついている場合は、既存顧客へのヒアリングを行うのが手段のひとつです。顧客へのヒアリングを実施することで、既存顧客が持つ顕在ニーズや、潜在ニーズのヒントを得られるはずです。

見込み顧客へのマーケティング調査

ヒアリングは、既存顧客だけでなく見込み顧客にも行うことが大切です。見込み顧客とは、商品のターゲットになることが予想される顧客をいいます。

見込み顧客へのマーケティング調査が有効なのは、既存顧客は現状の商品やサービスに意見や疑いを持っていないこともあるからです。新規商品・サービスの展開を考える場合、既存顧客にヒアリングをしても本音が聞けないかもしれません。むしろ新しい提案を否定的にとらえる可能性もあります。

一方、見込み顧客はまだ顧客ではない分、聞き取りやマーケティング調査を行っても率直な意見を聞ける機会は増えると考えられます。すでに商品やサービスのアイデアが固まっている場合は、率直な感想も聞き取りやすいでしょう。顧客が何に対し不満を持っているかを聞き出すことで、新たな商品開発のアイデアも生まれる可能性もあると考えられます。

協力企業の意見を求める

潜在ニーズを見つけるには、協力企業の意見を求めるのも方法のひとつです。協力企業とは利益や損失を分け合うことも多いため、率直な意見を得られることも多いからです。

潜在ニーズは相手が本音で返してくれないと見つけるのが難しいです。事業を発展させるためにも、率直な意見を言い合える協力企業を見つけ、支えあうことは大切になるでしょう。

プロトタイピングで事前検証を行う

ヒアリングから潜在ニーズを見つけ出したあとは、商品やサービスの具体的なイメージを深く掘り下げるため、プロトタイプを作って検証することも大切です。プロトタイプとは試作品のことです。

潜在ニーズは見つけ出すだけでなく、検証しなければアイデアや、仮説のままで終わってしまいます。企画段階では素晴らしいアイデアだと思っても、いざ開発をしてみると、コストや時間がかかるかもしれないからです。あるいは顧客に提供したとき、思ったような効果がない可能性もあります。事業計画書においても、仮説の状態でまとめただけでは、説得力が生まれないでしょう。

せっかくの努力を無駄にしないために、本格的な開発をする前にプロトタイプを作れば、実際の使い心地やイメージを検証することができます。繰り返して検証することで新たな仮説が生まれ、より顧客が求めるものに近い商品・サービスの開発ができるでしょう。最小限のコストや時間で商品やサービスを作る方法も見つかるかもしれません。検証を繰り返すことで、事業計画書にも説得力が生まれるはずです。

ターゲット設定は事業計画書の根幹

細かい分析・絞り込みでユーザーの心をつかむ計画を

説得力ある事業計画書を作成するには、ターゲットとなる市場を決め、顧客を絞り込むことが重要です。顧客層を絞り込むことで、事業展開や商品開発の方向性を定めることもできるでしょう。

提供する商品やサービスは、どのような提供価値があるか、しっかりと掘り下げましょう。目に見えるニーズだけでなく、本質的なニーズも探りながら、繰り返しプロトタイプで検証することで、より顧客が求める商品・サービスの提供ができるはずです。

プロトタイプを検証することは、無駄な開発時間やコストも減らすことにもつながるはずです。説得力ある事業計画書にも仕上がり、最終的には事業そのものの成功率を高めることにもなるでしょう。

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