リスケジュールは借入金の返済が困難になったときの対応策のひとつです。会社経営を続けていると、資金繰りが順調なときばかりとは限りません。予定が狂い、資金繰りが苦しくなるときもあるでしょう。そんなとき、リスケをすることで一時的に資金繰り改善の効果が期待できるはずです。今回はこの記事で、リスケジュールの方法や注意点などについてご紹介します。
リスケジュール(リスケ)とは
借入金の減額や返済期間の延長など返済計画を見直しさせてもらうこと
リスケジュール(reschedule)は通称「リスケ」とも呼ばれ、資金繰りが悪化し、借入金の返済が苦しくなったときに、返済計画を見直すことを意味します。具体的には、当面の間返済額の減額をすることや、返済期間の延長、据え置き期間の設置などの変更を行います。
返済できる範囲で支払いを猶予してもらうことで資金繰りの改善を図る
資金繰りが悪化した場合、新たに借入を行うのも手段のひとつですが、借入を繰り返すと債務超過に陥り、経営破綻するリスクも考えられます。リスケジュールは借入の返済を支払える範囲に猶予してもらえるようにすることなので、認められれば一時的に資金繰りを楽にする効果が期待できます。新たな借入をせずにすむことで倒産リスクも回避し、経営の立て直しを図れるでしょう。
なお、リスケジュールは法人、個人問わず、返済が困難になったときは金融機関に対し交渉することができます。
リスケジュールの流れ
資金繰り表や事業計画書を作成する
リスケジュールを金融機関へ申し込む際は、返済条件変更申込書のほか、現状のキャッシュフローや、どの程度の返済なら可能か、経営改善に向けた計画を示す書類などが必要です。まずは事業計画書や資金繰り表を作成しましょう。
資金繰り表ではリスケによる財務状況改善の見込みを伝える
資金繰り表は、現状とリスケした場合にどの程度財務状況が改善するか、状況を説明できるようにしましょう。再度リスケを申しこむことがないよう、無理のない資金繰り予定にすることもポイントです。資金繰り表については、金融機関にフォーマットが用意されている場合もあるので、作成前に確認をしておきましょう。
事業計画書は資金繰り表とあわせて実現可能なプランを準備する
事業計画書は、客観的に実現可能な計画をまとめることが大切です。明らかに実現できない計画をまとめても金融機関には納得してもらえないからです。また、資金繰り表と事業計画書とは、整合性がとれていなければなりません。作成の際は顧問税理士等に相談しつつ準備するのがおすすめです。
各金融機関に説明・交渉する
事業計画書や資金繰り表を作成したら、それを元に金融機関へプレゼンを行います。プレゼンでは、金融機関にとって融資した資金を確実に回収できるようになる、前向きなリスケジュールであることを理解してもらうことが大切です。
借入が複数ある場合は、それぞれの金融機関との交渉が必要
金融機関への説明は、複数から借入をしている場合、それぞれの金融機関に対し交渉します。一部の金融機関にだけリスケジュールを依頼すると、依頼しない金融機関との不公平感が生まれるためです。さらに、一部だけリスケジュールしても経営の立て直しが中途半端になる可能性もあります。
計画をもとにリスケジュールを実行する
プレゼンの結果交渉が成立すれば、リスケジュールの実行になります。提出した返済計画や事業計画どおりになるよう、資金繰りの改善や経営の立て直しを図りましょう。
リスケジュールの期間
半年から1年間が一般的
リスケジュールは短期的に資金繰りを改善するための手段なので、半年から1年間程度の期間で実施されることが一般的です。実行された場合は、その期間内に経営を立て直すことになります。
場合によってはリスケジュールの期間が経過した後で、延長ができることもありますが、更新手続きが必要です。ただし、更新するにも経営改善計画を8割程度達成するなど、厳しい条件をクリアしなければならないことがほとんどです。延長するということは、提出した事業計画通りに経営の立て直しが進んでいないことを表すため、金融機関側の見方も厳しくなるでしょう。
リスケジュールを成功させるためのポイント
相談するタイミングは早めに
リスケジュールの検討は、早めに行いましょう。手元の資金が減れば減るほど、経営は不安定になりますし、業績が落ち込めば回復に時間もかかるからです。返済額が多く資金繰りが苦しいと感じたときや、追加融資を断られた場合、各種税金や社会保険料を払えない状態になった場合などには、早めにリスケジュールについて相談してみましょう。
リスケが経営改善につながることを理解させる
金融機関側にプレゼンする際は、事業計画書や資金繰り表を使って、今後経営が持ち直し、返済が正常に回復することをアピールしましょう。具体的な経営の立て直し策や、今後の見通しがあいまいだと、金融機関側の不安を高め、リスケジュールが認められないかもしれないからです。
金融機関にメリットがあることをアピールする
リスケジュール成功のためには、銀行や金融機関側にもメリットがあるリスケだと伝えることも大切です。リスケジュールはあくまで「依頼」なので、金融機関側がメリットを感じなければ、応じてもらえないこともあります。ですが、無理な返済が続けば倒産リスクが高まることや、リスケで資金繰りが改善すれば、融資した資金の回収が確実に回収できることを理解してもらえれば、応じてもらえる可能性も高まるはずです。
リスケジュールによる資金繰り改善の注意点
リスケジュールはあくまで最終手段
リスケジュールの依頼をすることは、金融機関側の格付けに影響を及ぼします。
金融機関の格付けは正常先、要注意先、破たん懸念先、実質破たん先の5段階が一般的ですが、リスケをすることで1ランク以上落ちることが多いからです。
金融機関の格付け
- 正常先:業績が良好で財務内容も問題ない事業者
- 要注意先:リスケによって金利を下げたなど貸出条件に問題がある事業者
- 破たん懸念先:借入金の返済が滞っている、債務超過など経営破たんする可能性が高い事業者
- 実質破たん先:再建の見通しがたたない事業者
- 破たん先:破産や民事再生などの手続きを行っている事業者
資金繰り改善にリスケジュールは効果的ですが、あくまで最終手段と考えたほうがよいでしょう。
資金繰りによっては追加融資の検討を
リスケジュールによって経営状況が改善し、元の返済条件で返済再開できるようになれば、追加融資を受けられることもあります。
ただし、リスケジュールで経営が持ち直しても、再び資金繰りが悪化しないか様子を見る期間が設けられるため、すぐに新規融資が受けられない可能性もあります。
また、もしリスケ中にどうしても資金調達が必要になった場合は、ノンバンクの無担保ローンや不動産担保ローンなどを検討するのもひとつです。
リスケの実行期間中は金融機関からの新規借り入れは困難
リスケジュールを依頼し、金融機関の格付けが下がると、返済期間中は新規借り入れが困難になるのも注意したいポイントです。申し込んだとしても、元々の借入返済が厳しいのに、さらに借入をしてもスムーズな返済は難しいだろうと判断される可能性が高いでしょう。
リスケジュールは資金繰り改善の最終手段
実際にリスケで資金繰りを立て直せるかは十分検討を
資金繰りが苦しく、借入金の返済を続けるのが難しいとき、リスケジュールを依頼することは有効な手段のひとつです。借入金の返済計画を見直し、返済条件を変更してもらえることで、一時的に資金繰り改善につながり、経営の立て直しも図れるでしょう。新たに借入を増やし、債務超過に陥るリスクを考慮すると、効果的な手法と考えられます。
ただし、リスケジュールをすることが根本的な経営改善につながるわけでもなく、依頼すると金融機関側の格付けを下げるなど、注意したい点もあります。リスケジュールを成功するには、金融機関側を納得させられるだけの事業計画書や資金繰り表を作成する必要があります。顧問税理士等にも相談しながら、実現可能な経営計画や資金繰り予定表を作成しましょう。