顧問税理士を変更するメリットは?変更のタイミングや注意点

顧問税理士を変更するメリットは?変更のタイミングや注意点企業経営者に必要な知識
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事業を運営する中で、顧問税理士を変更するケースは珍しくありません。会社や経営者にとって頼りになる存在であってほしいからこそ、不満や不安があれば、解消するために別の税理士を探すことは、有効な手段となるでしょう。今回はこの記事で、経営者はどんなきっかけで顧問税理士の見直しを検討することが多いのか、また変更に適したタイミングや手続きの流れ、注意点などについてご紹介します。

顧問税理士を変更するきっかけは?主な理由

経営者はどのような悩みを抱えたとき、顧問税理士を変更するに至るのでしょうか。まずは、顧問税理士の変更を考えるきっかけになりやすい問題について見ていきましょう。

顧問税理士の対応やスピードに満足できないとき

顧問税理士変更のよくある理由のひとつは、対応やサービス内容への不満です。例えばレスポンスが遅い、相性が合わないなどの問題です。税理士事務所の体制やサービスに不満を感じたことがきっかけとなり、顧問税理士を変更するケースは多いようです。

レスポンスが遅い

顧問税理士の対応に関する不満では、メールや電話をしても折り返しの連絡が遅い、なかなか連絡がつかないなど、レスポンスの遅さが影響することが多いです。試算表の作成や、期日がある書類を依頼しても出来上がりが遅い、期限ぎりぎりに送られてくるなどの場合も、不満を感じ変更を検討する経営者は多い傾向にあります。

税理士事務所の体制に不満

税理士事務所の体制に対する不満も、顧問税理士変更を考えるきっかけになりやすいです。よくあるのは、担当者がコロコロ変わることで都度引継ぎをするストレスや、無資格の担当者や、経験が浅い担当者がつくことで不安を感じるケースです。さらに会計処理のミスが多いことで不信感を抱く場合もあるようです。

訪問頻度に関して不満を感じる経営者もいます。例えば、月次訪問があっても税務や経営に関するアドバイスがない場合です。あるいは、担当者の訪問はあっても、代表税理士が全然顔を見せないことで、会社の状況をちゃんと理解しているか不安を感じ、変更を検討するケースも多いです。

その他、顧問税理士が手書きで帳簿や申告書を作成しており、クラウド会計の導入を認めてもらえないことが理由となり、顧問税理士を変更するケースもあるようです。また、会計ソフトを導入している場合でも、使用料の高さが不満となるケースもあります。

顧問税理士と相性が合わない

顧問税理士との相性も、変更理由のひとつです。例えば高圧的な態度で相性が合わない、堅苦しい人柄で気軽に相談しにくい、年齢差があって話が合わないなどです。他にも、それなりに長い付き合いとなっても壁を感じる、専門用語で説明されるので理解に時間がかかるなどの理由から変更を検討するケースもあります。

自社の業種に対する理解に乏しい

会社や経営者にとって、顧問税理士は自社の一番の理解者でいてほしいところです。しかし、顧問税理士が自社の携わる業種や業界の仕組みに理解がないと、専門的な相談ができず不満となり、変更を検討するケースも多いです。話がかみ合わなかったり、毎回一から説明しないといけなかったりして、わずらわしさを感じるケースもあります。

経営相談に消極的

会計業務はしてもらえても節税対策や、決算対策がしてもらえない場合や、経営相談に消極的な場合も、顧問税理士への不満につながることが多いです。例えば、資金繰りの相談に乗ってくれない、助成金・補助金を活用したいが親身になってくれない、経営改善につながるアドバイスがほしいが曖昧な回答しかもらえないなどです。

顧問税理士事務所に求めるニーズが変わったとき

顧問税理士に対するニーズが変化した場合も、よくある変更のきっかけのひとつです。ニーズの変化の一例としては、経営状態が悪化したので、もっと直接的な経営改善につながる助言がほしい、経理担当者が辞めてしまったので、人事や労務に関するアドバイスもほしいなどがあげられます。

税務調査への対応がイマイチだった

会社を経営していると税務調査が入ることもあります。ですが、税理士事務所によっては、事前にアドバイスがもらえないことや、税務署寄りの態度で味方になってもらえないことがあり、そこから疑問を感じ変更に至るケースもあるようです。

また、実際に税務調査が行われる中で、会計処理について多くのミスが発覚した、対策が不十分で想定外の追徴課税が発生したなどの理由で、顧問税理士変更を検討するきっかけになることもあります。

税理士報酬が高いと感じたとき

月額顧問料や決算料など、金額面の問題も、税理士を変更する主な理由のひとつです。不満につながる一例としては、経営が悪化しているのに顧問料は変わらないケースです。また、年間の訪問数が減少したのに顧問料が同じなど、サービスに対して税理士報酬が高いと感じた場合も、ほかの税理士事務所を検討するきっかけになりやすいようです。

税理士事務所の担当者が変わったとき

税理士事務所の担当者が変更した場合や、代表税理士が代替わりした場合も、顧問税理士を見直すタイミングになりやすいです。同じ税理士事務所でも、担当者や代表税理士が変わると、改めて信頼関係を構築する必要があり、コミュニケーションを取りづらくなるケースもあるからです。また、新しい担当者と新たに関係を構築するのであれば、他の税理士事務所に依頼した場合も同じことと考え、一度比較してみようと考える経営者も多いです。

税理士事務所の閉業等により税理士変更が必要なとき

顧問税理士の変更は、やむを得ず行うケースもあります。例えば、代表税理士が亡くなった場合や、健康上の理由で事務所が閉業する場合などです。中には、税理士事務所の不正が発覚して潰れたり、ケンカをして顧問契約が打ち切られたりして離れるケースもあるでしょう。

税理士を変更しやすいタイミング

顧問税理士を変える場合は、変更しやすいタイミングも意識したいところです。一般的に、決算期末後もしくは税務調査後が適したタイミングといわれています。

決算期末から2~3か月後

顧問税理士を決算期末後に変更する場合は、期末から2~3か月を経過した、法人税申告書を提出した直後がいいといわれています。法人税申告書を提出するタイミングは、会社にとっても、顧問税理士にとっても1年の区切りになるからです。一区切りつくタイミングで変更することになるので、次の税理士への引継ぎもスムーズに行えるでしょう。

事業規模が大きくなったので大規模な法人の顧問をしている税理士に頼みたい、会社や経営者のニーズによりマッチする税理士とタッグを組みたいなど、前向きな理由がある場合に適したタイミングと考えられます。

税務調査後の修正申告を提出した後

顧問税理士変更は、税務調査後の修正申告提出後に行うのもタイミングのひとつです。税務調査は毎年あるものではなく、一度調査を受けた年度を再調査されることはめったにありません。

したがって、税務調査後に顧問税理士を変更すれば、次に調査に入られるときには新しい税理士事務所が担当した期間だけが調査対象になる可能性が高いです。決算期末後と同様、区切りをつけやすいタイミングといえるでしょう。

税務調査後のタイミングで変更するケースでは、顧問税理士や事務所との相性が悪い場合や、税務調査の対応に不信感を抱いた場合などに行われることが多いようです。

決算月や繁忙期の変更は避けたほうが無難

顧問税理士の変更は、適したタイミングがある一方で、決算月や申告月、繁忙期などは避けたほうが無難です。忙しい時期だと、新しい税理士事務所への業務の引継ぎに支障が出る可能性があるからです。決算や税務調査など、会社にとって一区切りつくタイミングを目安に考えましょう。

顧問税理士の変更 手続きの流れ

顧問税理士の変更手続きは、次のような手順で行います。

  1. 新しく依頼する税理士を見つける
  2. 顧問税理士に契約解約を希望する旨を伝える
  3. 預けていた書類・資料を回収する
  4. 新たに依頼する税理士と顧問契約を結ぶ

顧問契約解消前に新しい税理士を見つけておく

顧問税理士の変更をする際は、契約を解消する前に新たに依頼する税理士を見つけておきましょう。思い立ってすぐに契約解消をした場合、万が一、税務調査の連絡があったときに対応に困るかもしれません。顧問税理士がいない空白期間ができないよう、事前に引継ぎ先の税理士を見つけておきましょう。

解約を伝える

引継ぎ先の税理士が見つかったら、現在の顧問税理士に対し、契約の解約を希望する旨を伝えましょう。問題なければ解約の手続きへ進みます。

書類・資料の回収

解約の希望を伝え、問題なければ顧問税理士に預けていた書類や資料を回収します。一般的に、下記の書類は顧問税理士に預けていることが多いです。会社に関わる重要な書類なので、確実に返却してもらいましょう。書類を返却してもらえたら、契約の解約を行いましょう。

  • 決算書(内訳明細書、固定資産台帳など)
  • 会計データ(試算表、総勘定元帳、仕訳帳、会計ソフトのバックアップデータなど)
  • 税務署へ届け出た書類(法定調書、消費税関連書類など)
  • 給与関係書類(給与明細、扶養控除申告書、年末調整関係書類など)
  • 金銭的なことが記載された書類(請求書、領収書など)
  • 会社に関係する書類(定款、登記簿謄本、株主総会や取締役会の議事録など)

どうしても書類が返してもらえないときは税理士会へ相談を

ほとんどの場合、何事もなく書類を返却してもらえるようですが、中には税理士から書類を返してもらえないトラブルに巻き込まれるケースもあるようです。

もし顧問税理士から返却を拒まれても、書類は会社の所有物なので必ず返してもらう必要があります。しかし、どうしても書類を返してもらえない場合は、顧問税理士が所属する税理士会の「綱紀監察課」にある、苦情相談室へ相談するのも手段のひとつです。

ただ、トラブルを避けるために、不満があっても一方的な解約を告げるのではなく、タイミングを見て申し出ることも大切です。お互い納得して解約できるような対応を心がけましょう。

新しい顧問税理士との契約

契約の解約が済んだら、新しい顧問税理士との契約を行います。新しい顧問税理士へ引き継ぐために、前任の税理士から返却してもらった書類は新しい顧問税理士へ提出しましょう。なお、顧問税理士を変更しても、税務署へ届け出る必要はありません。

顧問税理士変更には半年~1年ほどの期間がかかるのが一般的

顧問税理士の変更は、完了まで半年から1年ほどの期間となるのが一般的です。預けている書類は、すぐに返却してもらうことは難しい場合もあるためです。解約の申し出はある程度余裕を持ち、早めに行うほうがおすすめです。

税理士の解約に役立つ上手な断り方

顧問税理士を変更する際、基本的には「解約したい」と申し出るだけですが、どんな理由で断ればいいか迷う経営者も多いでしょう。そこで、顧問税理士変更時によく使われる常套句をご紹介します。

「〇〇が税理士になった」が定番

顧問契約の解約では、「〇〇が税理士になった」と断るのが常套句といわれています。例えば、「親戚(甥っ子、姪っ子など)が税理士になった」、「友人が税理士事務所を開業した」、「取引先の社長の息子が税理士になった」などと言えば、角も立ちにくいでしょう。ほかにも、「取引先に別の事務所を紹介されて、仕事の関係で断れないので契約を解約したい」というのも、よくある断り方とされています。

「ずっと前から」を付ける

顧問税理士を変更する場合は、「ずっと前から」を付け加えるのもおすすめです。例えば「甥っ子が税理士になって、ずっと前から顧問にしてほしいと頼まれていたので変更したい」などです。付け加えることで、あくまで現在の顧問先に不満があって変更するわけではないニュアンスを伝えられるでしょう。

顧問税理士の変更で期待できるメリット

顧問税理士を変更するには勇気がいるかもしれません。しかし、現状より自社に合う税理士が顧問に就いてくれれば、会社や経営者にとっても心強く、さまざまなメリットを手に入れられるはずです。

税務について的確なアドバイスがもらえる

顧問税理士変更で得られるメリットのひとつは、税務について、より的確なアドバイスをもらえる可能性があることです。例えば、仕訳チェックや税務申告だけでなく、節税対策や決算対策などにも力を入れている税理士なら、税務に関して幅広いアドバイスを受けることもできるでしょう。

相談しやすい顧問税理士が見つかれば安心感もプラス

相談しやすい顧問税理士に変更した場合は、安心感も得られるでしょう。現在の顧問税理士と相性が悪い、相談しづらい場合には、丁寧に話を聞いてくれたり、気軽に相談したりできるだけで、不安や悩みを解消するきっかけになるかもしれません。

税務調査時の対応改善

税務調査に強い税理士へ変更すれば、調査が入ることになっても強い味方になってくれるでしょう。税務調査時の対応が不安な場合も、顧問税理士の変更により悩みが解消するはずです。

経営改善の相談ができる

自社の業界に強い税理士や、人事・労務を含め経営に精通した税理士へ変更した場合、専門的な相談や補助金・助成金の活用、経営の悩みを解決する糸口が見つかることもあるでしょう。的確なアドバイスがもらえることにより、販路開拓や事業拡大につながる可能性もあります。

資金繰り対策の強化

資金繰りを改善したい場合は、融資に強い顧問税理士に変更することで、的確な助言や対策を期待できます。融資審査を確実に通過するための、対策強化につながるでしょう。

会計業務の効率化の実現

会計業務の効率化を検討している場合は、ITに強い税理士を選ぶことで心強い味方になるでしょう。クラウド会計の導入など、業務改善のさまざまなサポートを得られると考えられます。

会社の成長に合わせたサポート

事業規模が大きくなってきた場合は、さまざまな業種に対応でき、スタッフ数も多い税理士事務所へ変更するのもひとつです。経験が豊富な税理士事務所であれば、会社の成長に合わせた的確な対応が期待できるでしょう。

顧問税理士を変更する場合の注意点

顧問税理士の変更は、タイミングや手続きにおける注意点以外にも、気を付けたいポイントがあります。具体的な変更手続きをする前に、次のポイントについて確認しておきましょう。

変更手続き前に顧問契約の内容を確認する

顧問税理士を変更する際は、手続きを始める前に顧問契約の内容を確認しましょう。「月をまたぐ場合は翌月分の顧問報酬の支払いが必要」「〇か月前までに解約の申し出をする」などの契約内容になっている場合は注意が必要です。

信頼できる税理士と契約を結ぶ

顧問税理士には、会社の内情すべてを知られることになります。新しい顧問税理士と契約を結ぶ際は、信頼できる相手であることも重要なポイントとなるでしょう。報酬の安い・高いだけで決めるのではなく、自社が求めるサービスの提供が受けられ、相性がよく、良好な関係を築ける税理士を見つけましょう。

顧問税理士に求めるポイントを明確にする

長く付き合える顧問税理士を見つけるには、会社や経営者が税理士に求めるポイントを明確にすることも大切です。例えば、決算対策をしっかりしてほしい、税務以外に経営についても相談したい、会計をIT 化したい、月1回は訪問してくれる税理士がいいなどです。

なぜ顧問税理士を変更しようと思ったのか、会社が今後どんなポイントを強化したいのかなどを洗い出し、要望を満たす税理士と契約を結びましょう。

いくつかの税理士事務所を比較する

税理士事務所は数多くあり、得意とする実務や扱う分野も異なります。例えば特定の業種に精通しているケースがあれば、会計のIT化や効率化の支援に積極的な場合もあります。あるいは、税務だけでなく経営相談に力を入れている税理士事務所や、税務調査や決算対策に強い事務所もあるでしょう。

自社に合った顧問税理士と契約を結ぶためにも、いくつかの税理士事務所の特徴や得意・不得意を調べ、比較することをおすすめします。

実際に変更する前に直接税理士に会っておく

新しい顧問税理士へ変更する際は、契約する前に一度は直接税理士とも会っておきましょう。実際に会っておくことで、税理士事務所の雰囲気や、税理士との相性、自社の要望とサービスがマッチするかなどを確認できるはずです。

顧問税理士の変更には時間の余裕を持って

会社の成長につながる、状況に合った顧問税理士の選択

顧問税理士の変更は、会社の成長や経営者のニーズの変化に合わせ行われることが多いです。現在の顧問先に対し、訪問や記帳チェック、税務相談や報酬など、対応やサービスに何かしらの不満がある場合、変更することで満足いくサービスを受けられる可能性があるでしょう。

顧問先に変更を切り出すタイミングはいつでもかまいませんが、変更手続きには半年から1年と、ある程度時間がかかるのが一般的です。決算や繁忙期などを忙しい時期の変更は避け、決算申告や税務調査など一段落ついたときを目安にするほうがよいでしょう。

また、「変更しても結局前任の税理士と変わらなかった」となることは避けたいところです。新しい税理士を見つける際はいくつかの税理士事務所の特色を調べ、実際に会うなどして慎重に検討しましょう。自社に合った税理士と顧問契約を結ぶことが、ひいては会社の成長にもつながるはずです。

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