銀行は融資相手のどこを見ているか
銀行が知りたいのは「何に使うのか」「返済できるのか」
銀行は融資金が何に使われるか、会社に返済できる能力がある融資先かどうかをチェックしています。資金の使い道や返済能力を見るのは、融資しても返済してもらえないと銀行側が損することになるからです。
銀行の心証をよくするには、融資金によって過去の業績から事業の売上・利益アップにつながることと、滞りなく返済できることを示すことが重要なポイントになるでしょう。
返済能力がある相手なら、銀行は貸したい
正直なところ、銀行の融資担当者も返済能力がある相手には貸したいと考えていることが多いです。融資担当者にとっても、貸せば貸すほど自分の評価が上がるメリットがあるからです。とはいえ、誰彼構わず貸すわけにもいかないので、資金の使い道や返済財源が判断基準となります。
積極的な銀行訪問で信用を掴む
銀行の心証をよくして信頼関係をつくるには、担当者が来社するのを待つのではなく、自ら積極的に銀行訪問することが大切です。繰り返し訪問すれば、銀行側も業績や事業の状況、お金の流れを把握しやすくなるからです。銀行の信用が得られれば、融資も受けやすくなるでしょう。
銀行を訪問するタイミング
経営者が銀行訪問するのがベスト
銀行訪問は、経営者自ら行うのがベストです。返済能力がある会社という心証を得るには、経理担当者では十分でない場合があるからです。
例えば、カバン作りの下請けを行っている企業が、今後、数百万円するコンピューターミシンを購入して新しい受注先を確保し、売上アップを狙うつもりであるとします。
経理担当者が銀行訪問する場合、今後の事業の展望や、売上・利益などの予想を銀行側に伝えることはできるでしょう。しかし、現実には想定通り受注先から定期的に仕事が回ってこない場合や、売上アップにつながらないケースも考えられます。
銀行側からトラブル時の対処法など、厳しい質問を受けた際に、正確なビジョンを伝えるのは経営者でないと難しいでしょう。経営者なら既存の得意先とうまくいかなくなったとしても、他の請負先を見つけて違う商品を作れるように手配するなど、経営のイメージを持っているはずだからです。
何より、銀行は経営者が何を考えているか知りたがっています。経営者が直接銀行に赴き、実務をわかっている経営者ならではの意見を話すことにより、融資担当者の心証アップや安心にもつながるでしょう。
定期的に訪問するのが好ましい
心証をよくするためにも、銀行訪問は定期的に行うのがベターです。一般的に、3か月に1回程度が目安とされています。こまめな訪問がいいのは、なるべく銀行側に多くの情報を伝えるためです。
融資担当者は「融資先は融資を受けやすくするために、自分にとって都合の悪い情報は隠したがる傾向がある」と考えている場合もあります。
年に一度、あるいはほとんど訪問しない場合だと、数か月に一度の訪問に比べて、銀行側に報告しない情報がどうしても多くなり、伝える情報が少なくなります。その分銀行側の信頼も得られにくくなるでしょう。
定期的に訪問すれば、よりタイムリーな情報を銀行側に提供できます。銀行側にも、包み隠さず業績の状況を伝えていると理解してもらいやすくなるはずです。
特に、一度融資を受けたことがある場合は、融資金が適切に使われ、業績にも反映していることが理解してもらえれば、銀行側の不安解消にもつながります。信頼関係にもいい影響を与えるでしょう。
銀行の忙しい日時に訪問するのは避ける
銀行訪問は、忙しいとされる日時を避けて訪問するのがベターです。
一般的に避けた方がいいとされる日は、月初・月末、毎月5日、10日、20日、25日です。1ヵ月のうちお金が動きやすい日といわれ、担当者も余裕がないかもしれません。
時間帯についても、午後は避けたほうが無難です。基本的に銀行は午後3時に閉店し、午後からは事務処理業務に追われることが多いからです。
せっかくなら快く話ができるよう、忙しい日以外の午前中のうちに訪問しましょう。ちょっとした心遣いが心証をよくすることにもつながるはずです。
1回の訪問時間は手短に、熱意を伝える
1回の訪問は手短にすませることも心証をよくするポイントです。一般的に融資の相談に関する面談は30~1時間程度、定期的な訪問では20分程度が目安といわれています。
融資担当者も、多くの取引先・案件を抱えています。通常業務もこなすことを考えると、面談に割ける時間は限られます。長々と話をするのは心証的にもよくないでしょう。
例えば飲食店を経営していて、ライバル店の少ない地域に新規出店を検討しているとします。銀行は利益が生まれそうな話に興味があるはずなので、面談時は新規出店計画の話に的を絞り、業績の推移など、紙でチェックできそうな事柄については、後で見てもらえるよう資料にまとめて渡すと効率的です。
また、限られた時間の中でも、熱意を伝えることは重要です。銀行訪問も人相手なので、常に前向きなアピールをすることで、印象がプラスに働くこともあるはずです。
実際、金融庁も銀行に対して、事業性評価をするように求めています。事業性評価とは、決算書の数字や担保・保証だけで機械的に評価するのではなく、企業の実態を見て、ビジョンを共有し分析・評価した上で融資を行うことです。
決算書がボロボロでも、会社の将来性があると判断されれば、融資を申し込んだ場合、審査が通る可能性は高まるはずです
訪問時には、厳しい質問をされることがあるかもしれません。ですが、たとえ意地の悪い質問や的外れなことを聞かれても、感情的になったり、弱気になって自らマイナスになるような発言はせず、少しでも自社の魅力を知ってもらえるように積極的に働きかけましょう。
余計なことや、話を脱線したりせず、聞かれたことに真摯な気持ちを伝えていれば、分かってもらえることも多いはずです。もちろん、訪問時はスーツなどで身だしなみを整えたり、丁寧な言葉遣いを意識することも大切です。
銀行融資を通りやすくする準備のポイント
融資希望額は具体的に
銀行に融資を相談する際は、具体的な希望額を伝えましょう。金額が決まらなければ返済計画も立てられませんし、後述する返済財源を明確にすることもできないからです。
NGなのは、「いくらなら借りられるか」、「上限いくらまで借りられるか」など相手に金額を尋ねることです。銀行は「なんのために必要なお金か」を知りたいと考えています。希望額があいまいだと、ただ単にお金がほしいだけのように思われかねません。
資金使途をはっきり伝える
銀行融資を申し出る際は、資金使途も明確にしましょう。お金の使い道がハッキリしなければ、銀行側も貸したお金がきちんと返ってくるのか不安になり、心証的によくありません。
例えば、新しい事業を運営するのに500万円かかるとか、新たな設備投資のために300万円が必要などと明確な使い道を伝えることが肝要です。
返済財源を明確にする
資金使徒とともに、返済財源を明確に示すことも、融資を通りやすくするためには重要です。今後の事業展開によって、滞りなく返済できる財源があるかどうかは、銀行側も知りたいポイントだからです。
返済財源は担保に頼りすぎないほうがベターです。例えば不動産担保があっても、必ず融資が満額下りるとは限らないためです。
というのも、銀行にとっては担保となっていた不動産を処分することになった場合、資金を回収するまで手間がかかるのに加え、担保物件を処分したことで世間の評判を落とすリスクもあるからです。
担保があるから大丈夫だと安易に考えず、堅実な資金調達計画を立てることが大切です。
「赤字でお金がない」はNG!
融資の資金使途の理由に、「赤字でお金がないから融資してほしい」と答えるのは絶対NGです。まず審査は通らないでしょう。
仮に本心は赤字の解消や補填のためだったとしても、「業務拡大の設備投資の資金に使う」、「売り上げアップに対応するために仕入れに使う資金」など、前向きな理由を説明しましょう。
特に、赤字の会社の場合、赤字を補填するための融資と勘繰られることが多いです。売り上げや経費の根拠を資金繰り表によって示し、健全な資金使途であり、返済財源があることと計画的な経営ができることをしっかりアピールしましょう。
求められた資料はすぐに提出する
融資の申し入れでは試算表や決算書、資金繰り表以外にも、さまざまな資料の提出を求められます。求められた資料は速やかに提出することも、銀行の心証をよくするポイントです。時間がかかるほど、ルーズな印象を与えたり、「何か都合の悪いことがあるのでは?」と勘繰られるかもしれないからです。
提供する情報が多いほど銀行融資はスムーズに
資料や提供する情報は、多ければ多いほうが心証アップに効果が期待できます。例えば試算表を毎月銀行に提出するのも方法のひとつです。試算表は、銀行側が会社の業績や資金繰りを把握するための有効な資料だからです。
毎月試算表を出す場合と、年に1回だけ提出する場合やしない場合とでは、融資審査も心証も変わるでしょう。融資担当者も人間なので、こまめに試算表を渡して関係づくりをすることで、自然と親近感を持ってもらえるかもしれません。
その他、資金計画書には添付資料があるとベターです。IT関連など、言葉だけで説明してイメージがわきにくい業種の場合は、視覚的な資料を用意することで、説明がスムーズに伝わることや、アピールしやすくなることが多いからです。
手間はかかるかもしれませんが、丁寧な資料を作りこめば、熱意も伝わりやすくなります。、銀行の心証が良くなれば、融資手続きもスムーズに進むでしょう。
自社の経営状況を理解しておく
自社の経営状況を理解しておくことも、融資審査をスムーズに進めるためにはマストです。最低でも決算書の中身を理解し、分析できるようにしましょう。
もし関連会社がある場合は、関連会社の財務状況についても理解しておくことが大切です。関連会社があると、銀行は融資金を関連会社に流用する迂回融資ではないかと疑うこともあるからです。銀行側から聞かれる前に、積極的に資料を開示し、説明するようにしましょう。
税金の滞納は絶対しない
多くの方がご存知でしょうが、融資を通りやすくするためには、税金の滞納はタブーです。税金や社会保険料の滞納をしている会社に融資が下りることはほとんどないからです。
公共料金の未払い、信用情報もチェックされる
融資の審査では、公共料金や家賃の未払いの有無や、信用情報もチェックされるのが一般的です。会社だけでなく、個人としても健全な資金繰りがされているかを確認するためです。
特にブラックリストに残っている場合は要注意です。査定に影響を与える可能性は非常に高いでしょう。ただ、役員報酬の範囲内でカードローンを組み、返済計画が立っていれば、大きなマイナス要因にはならないことが多いです。
また、消費者金融や商工ローンの利用も注意が必要です。基本的に調べられることは少ないようですが、もし高金利の融資を受けていることがわかると、銀行側が危険と判断し、融資が通りにくくなる可能性があります。
税金の滞納や社会保険料等の未納はなるべく融資の申し入れをするまでに解消するか、一時的にでも支払いをすませるほうがいいですが、利用先については慎重に検討しましょう。
銀行訪問での会談の進め方のポイント
都合の悪いことは先に話しておく
銀行との会談で、会社にとって都合の悪い情報は、聞かれる前に自分から話をするほうが心証はよくなります。
話すときのポイントは、最後に改善策を伝えることです。都合の悪いことだけ話すのは、マイナスのイメージで終わってしまうからです。
例えば旅館業を営んでいる場合、前年より売り上げが少ない状況を説明したとします。その上で、団体客から個人客、ビジネス層にターゲットを絞って館内のリニューアルを行い、売り上げアップにつなげることを考えているなど具体的な計画を説明するなどです。
融資担当者もできるだけ融資をしたいと考えているはずです。改善策を伝えることで信用度アップにつなげましょう。
作成した計画書・資料内容を忠実に答える
会談では作成した計画書や資料内容について、忠実に答えましょう。融資担当者は計画書や資料内容に基づいて質問をしてくるので、内容と矛盾する答えを言うと話がスムーズに進まなくなります。
資料はごまかしのない正確なものを丁寧に
少しでも心証をよくしたいからといって、安易に決算書の粉飾をするのは当然NGです。計画書や資料について忠実に答えるためにも、作成段階でごまかさず、正確に作りましょう。丁寧に作った資料は、担当者や銀行側にも伝わるはずです。今の財務状況を銀行側と共有することが融資への近道にもなるでしょう。
決算報告は支店長同席で
決算書の報告をする会談では、支店長にも同席してもらいましょう。会社への融資の最終的な判断は支店長が握っているケースが多いからです。支店長の心証がよくなれば、融資が通る確率もあがるはずです。
訪問する銀行全て同じ話をする
いくつかの銀行を回って融資の相談をする場合は、どの銀行にもまったく同じ話をすることが大切です。
銀行の考え方はそれぞれ異なりますが、普通に話をするだけでは銀行の方針はわかりません。まったく同じ話をして反応を見ることで、どの銀行が融資に対して積極的か、比較できるはずです。
銀行訪問は銀行の心証を良くするためのアクション
積極的にコミュニケーションを取って心証アップを
銀行訪問をすることは、会社に対する銀行の心証をアップさせ、融資を通りやすくするために有効な手段です。
銀行は、会社が適正に資金を使ってくれるか、明確な返済財源があるかをチェックしています。融資を通りやすくするには、適正に融資を使い、堅実な資金繰りで業績を安定させられる会社であること、きちんと返済ができる会社であると積極的にアピールしましょう。
銀行側は経営者の人柄を見ているはずなので、普段から短時間でも定期的に訪問することが大切です。業績や事業の展望などを話すことで、融資担当者との信頼関係も強まるはずです。