社内規定により節税できるもの
社内規定を整備することにより経費にできるものには以下の支払いがあります。
- 慶弔見舞金
- 通勤手当
- 日当
- 宿泊代
- 社宅代
- 社員旅行代
- 退職金
- 社員旅行、レクリエーション代
一つ一つの経費について、どのような場合に経費として落とすことができるのか、どのような形で社内規定を作成するべきなのかもご紹介します。
社内規定で慶弔見舞金規定を作り節税対策
「慶弔見舞金規程」を作成しておくことで従業員またはその家族に慶弔、私傷病または天災地変災害があったときに規定で定めた慶弔金または見舞金を支払うことができます。
慶弔見舞金規定では、以下のような場合にそれぞれへの支払いを経費として落とすことができます。
- 結婚祝金
- 本人または配偶者の出産
- 傷病見舞金
- 本人及び家族の死亡
- 災害見舞金
それぞれの規定でどのようなことに注意しなければならないのかをご紹介します。
結婚祝金についての社内規定
結婚祝い金については慶弔見舞金規定作成し、額についての規定はありませんが一般的に1~3万円で支給している企業が多いようです。この結婚祝い金についての規定では、「雇用形態」や「勤続年数」などを具体的に明記しておくことが大切です。
例)この規程は、「満6カ月以上」在籍する「正社員」に適用するものとする。
(↑勤務期間と雇用形態を明示)
また勤続年数によって金額を変えることもできます。
- 勤続1年未満の者・・・・・・・〇〇円
- 勤続1年以上3年未満の者・・・〇〇円
- 勤続3年以上の者・・・・・・・〇〇円
本人または配偶者の出産についての社内規定
出産についても社内規定により経費とすることができます。結婚祝い金と同様、金額の上限について法律上の定めはありませんが、「社会通念上相当な額」とされています。こちらも多くの企業では1~3万円程度で祝金を支給している所が多いようです。
例)従業員又はその配偶者が出産した場合には、出産祝金として〇〇円を支給する。
傷病見舞金についての社内規定
傷病見舞金も社内規定により経費とすることができます。傷病見舞金の社内規定については、療養の日数を明記すること、医師の診断書やそれに代わるものを提出するなどの文言を入れておくことによって後々のトラブルを避けることができます。また「見舞金の支給は同一傷病につき1回を限度とする。」という表現も入れておくこともできますし、業務上による傷病なのか、業務外の傷病かによっても金額を変える、または業務外であれば支給しないなどの文面も入れておくことができます。
例)従業員が業務上の負傷により療養のため、7日以上勤務不能により休養する場合は、金30,000円の見舞金を支給する。傷病見舞金を申請する際には医師の診断書やそれに代わるものを提出する。
死亡弔慰金についての社内規定
死亡弔慰金も業務による死亡によるものか、業務外の事由によるかによって金額を分けることができます。またここでも「勤続年数」により金額に差をつけることができます。
イ)勤続5年未満 | 50,000円 |
---|---|
ロ)勤続5年以上10年未満 | 100,000円 |
ハ)勤続10年以上 | 200,000円 |
イ)勤続5年未満 | 20,000円 |
---|---|
ロ)勤続5年以上10年未満 | 30,000円 |
ハ)勤続10年以上 | 50,000円 |
災害見舞金についての社内規定
災害により被害を受けた従業員等やその親族等に対して、一定の基準に従って支給する災害見舞金品を経費として支給することができます。
ここで言う「一定の基準」とは、
- 被災した全従業員に対して被災した程度に応じて支給されるものであるなど、各被災者に対する支給が合理的な基準によっている
- その金額もその支給を受ける者の社会的地位等に照らし被災に対する見舞金として社会通念上相当である
ことが必要です。
災害見舞金は全焼(全壊)、半焼(半壊)なのか、賃貸なのか、持ち家なのかでも金額に差をつけることもできます。
慶見舞金を支払うための条件
慶弔見舞金を支払うための条件には、
- 「慶弔見舞金規程」などの社内規程をあらかじめ作成し、その規程に従って支給すること
- 「社会通念上相当」と認められる額(常識の範囲内の金額)の支給であること
があります。もちろん社内規定は作成するだけでなく、その内容に即して支給しなければなりません。また金額は社会通念上相当な額である必要があります。
例えば役員と従業員の金額の差が常識の範囲を超えるものになると、「給与」とみなされ課税されてしまいます。
社内規定により通勤手当で節税
社内規定により、通勤手当も一定額経費として計上することができます。実はこの通勤手当を利用することにより、従業員側にも会社側にもメリットがあります。
従業員側のメリット:所得税・住民税節税
通勤手当は従業員側からすると「非課税」になるため通勤手当部分に対しては所得税や住民税は発生しません。
会社側のメリット:消費税の節税
また会社側としても通勤手当は「課税仕入」に該当するため、消費税をその分節税することができます。
通勤手当の非課税限度額
通勤手当を交通機関または有料道路を利用している人に支給する場合、1ヶ月あたり最高150,000円、自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する場合、通勤距離に応じて1ヶ月当たり最高31,600円支給することができます。
交通機関または有料道路 | 最高150,000円/1ヶ月 |
---|---|
自動車や自転車 | 最高31,600円/1ヶ月 |
上限額を超えた部分は給与扱いとなり、所得税が課税されます。
社内規定を作成する際には通勤手当規定に
- 「最も合理的で経済的な経路」であること
- 支給限度額、(所得税法に定める非課税限度枠内)
を記載しておきましょう。
通勤手当として認められない費用
通勤手当に関して、「グリーン車」を通勤で利用した場合には在来線も含め給与として課税対象となります。またマイカー通勤により近隣の有料駐車場を利用した場合、駐車料金は非課税として認められないためこちらも給与として課税対象となります。タクシー通勤・運転手付きでのクルマ通勤も経済的かつ合理的な経路および方法とは認められず課税扱いとなります。
通勤手当として認められない費用
- グリーン車
- 近隣駐車場代
- タクシー代
注意点:「通勤手当」として支払った場合でも社会保険料の計算に含まれますのでご注意ください。
社内規定で出張旅費規定を作成し節税
出張旅費規定を作成することにより出張した役員や従業員に対して、一定額を給与としてではなく日当として支払うことができます。
出張旅費規定を作成することにより通勤手当と同じく、従業員側は所得税や住民税を節税し、会社側でも経費を作ることができます。科目としては旅費交通費に含めて処理します。
日当を支給する際には注意しなければならない点があり、所得税法基本通達法第9条第3号で以下のように規定されています。
- その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
- その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。
参照:国税庁ホームページhttps://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/02/02.htm#a-01
つまり、役職によって適正な基準があるか、また金額が高額すぎないかが問われます。そのため出張旅費規定を作成し、役職ごとの基準や金額を規定します。
区分 | 日当 | |
---|---|---|
40km~100km未満 | 100km以上 | |
代表役員 | 3,000円 | 4,000円 |
役員 | 2,000円 | 3,000円 |
管理職 | 1,500円 | 2,000円 |
一般職 | 1,000円 | 1,500円 |
区分 | 日当 |
---|---|
代表役員 | 5,000円 |
役員 | 4,000円 |
管理職 | 3,000円 |
一般職 | 2,000円 |
旅費規定では日帰り出張なのか宿泊出張なのか、日帰りであっても距離数に応じて金額に差をつけることもできます。また規定では役職に応じで金額を変えることができます。
旅費規定の日当相場
産労総合研究所の「2017年度 国内・海外出張旅費に関する調査」によると、国内出張旅費の日当相場は日帰り日当の場合、部長クラスで2,491円、一般社員では1,954円。宿泊を伴う出張の場合部長クラスで2,809円、一般社員では2,222円が相場となっています。
部長クラス | 一般社員 |
---|---|
2,491円 | 1,954円 |
部長クラス | 一般社員 |
---|---|
2,809円 | 2,222円 |
参照:産労総合研究所「2017年度国内・海外出張旅費に関する調査」
https://www.e-sanro.net/research/research_jinji/shanaiseido/shuccho/pr1710.html
日当も「同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるか」が問われるため金額算定の際には注意しましょう。
社内規定で社宅制度を利用した節税
社内規定を作成し「社宅制度」を利用することにより、役員または従業員から一定の家賃を受け取っていれば、会社が負担した部分は、「福利厚生費」とすることができます。従業員側としても給与をもらったと同じ経済的効果があるにもかかわらず、給与ではないので所得税や住民税の負担が無いと言ったメリットがあります。また会社側、従業員双方で社会保険料支払いの負担を軽減することができます。
給与として課税されない一定額は、役員と使用人で異なり、使用人に対する賃貸の場合、賃貸料相当額の50%を使用人から受け取れば良いのですが、役員の場合賃貸料相当額100%を受け取らなければなりません。賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合には、賃貸料相当額と受け取っている家賃との差額が給与として課税されます。
退職金規定を作成し節税
退職金規定を作成し、退職者に退職金を支払うことで節税することができます。退職金に対しては税金面での非常に大きな優遇があるため節税対策として有効です。退職所得の金額は、原則として次のように計算します。
(退職金-※退職所得控除額)×1 /2 =退職所得の金額
※ここで言う退職所得控除は以下の算式で計算されます。
勤続年数(=A) | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×A |
(80万円に満たない場合には、80万円) | |
20年超 | 800万円+70万円×(A-20年) |
例)30年勤務した従業員に1000万円の退職金を支給する場合
まず退職所得控除額を計算します。この場合勤務年数は20年を超えていますので、
800万円+70万円×(30-20年)=1500万円
となります。退職所得控除額がこの時点で退職金を超えていますので、退職所得はゼロとなり、1000万円支給したとしても退職金に対して税金はかかりません。
1000万円 - 1500万円 × 1 / 2 = 0
多くの場合退職金に関して退職者は税金面での負担をせずに受け取ることができます。ちなみに退職金の支給額は功績倍率や勤務年数に基づき計算されます。
役員退職金の適正額=(最終)報酬月額×役員在任年数×功績倍率
この功績倍率は会長、専務、常務、取締役、監査役などでそれぞれ2.0倍から3.0倍程度の間で規定により定めておくことができます。
また規定で退職金の設定額を「最終」報酬月額を基準として定めてしまうと、経営悪化している場合などには最終報酬月額は下げている可能性もあります。最終月だけ大幅に役員報酬を上げている場合、租税回避として否認される場合もあります。
そのため対策としては退職金規定での記載を「最高」報酬月額としておくことや「平均」報酬月額としておきことなども考えておく必要があります。詳細は専門家にご相談ください。
退職金規定では功績倍率の他、支給条件などを定めます。退職金規定を作成していることで従業員とのトラブル回避という側面もありますが、税務調査の際には退職金が租税回避のために行われているのではなく、規定に沿って支給されているということを説明することができます。
その他の福利厚生の社内規定
その他の福利厚生費も社内規定を整備しておくことで経費にしやすくなります。例えば以下のような経費を社内規定で定めておくことができます。
- 社員旅行
- 忘年会・新年会
- 健康診断受診や人間ドック
これらの福利厚生費が経費として認められるためには社内規程を作成し、規定の中では金額を決定しておきましょう。もちろんここでも社会通念上妥当な金額に設定しておく必要があります。またこれらの福利は社員全員に提供されるものであることも規定で定めておきましょう。
社員旅行制度の社内規定
税務上、従業員レクリエーション旅行や研修旅行を行った場合に使用者が負担した費用が参加した人の給与として課税されるかどうかは、その旅行の条件を総合的に勘案して判定するとされ、以下の要件を満たしていることにより給与扱いにはならず福利厚生費とすることができます。
福利厚生費に認められる旅行の要件
- 旅行の期間が4泊5日以内であること。海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。
- 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。
逆に以下の場合では給与または交際費として処理されます。
給与または交際費として処理される旅行
- 役員だけで行う旅行
- 取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行
- 実質的に私的旅行と認められる旅行
- 金銭との選択が可能な旅行
忘年会・新年会制度の社内規定
忘年会や新年会も基本的には社員旅行と同じ要件で会社負担分を経費とすることができます。
このような会では参加者が全体の50%以上であることが要件で、自己都合で参加しなかった人に対して金銭で支給資する場合には参加者と不参加者の全員にその不参加者に対して支給する金銭の額に相当する額の給与の支給があったものとされます。
健康診断や人間ドックの社内規定
社員を対象とした健康診断費用や人間ドックによる検診費用ついては、福利厚生費で処理することができますが、いくつか要件があります。
- 全社員を対象とすること(年齢で区切ることも可)
- 会社が直接診療機関に支払う
- 常識の範囲内の費用
福利厚生費を経費として落とすポイントは基本的に「全社員を対象とすること」そして「常識の範囲内」での支払いです。それらを社内規定で定めておきましょう。
まとめ:社内規定整備への投資で節税対策!
社内規定で定めておくことにより慶弔見舞金、通勤手当、日当、宿泊代、社宅代、社員旅行代、退職金、社員旅行、レクリエーション代などを適切に経費に落とすことができます。社内規定により経費とする場合「社会通念上相当」と認められる額にし、規定の通りに支給しなければなりません。社内規程は税務調査などで不利益を受けないためにも定めておく必要があります。
社内規定整備での節税を考えている方は専門の税理士や節税コンサルティングサービスにご相談ください