資産に分類されるもの
まず、どのようなものが資産に分類されるのでしょうか。この資産に分類されるかどうかの判断は税金面で大きな影響があります。例えば資産ではなく「消耗品」に分類されるものであれば一括で経費計上することができます。一方資産に分類されるものであれば按分により経費計上していくことになります。
資産には
- 流動資産
- 固定資産
- 繰延資産
があり、このうちの固定資産が減価償却の対象となるものです。ただし、価値が減少しないとされる資産もあり、例えば土地や骨董品、絵画などについては減価償却をすることはできません。
金額での資産判定
消耗品か固定資産かの金額的な判断は「10万円」になります。10万円未満であれば消耗品等の科目で全額費用計上できます。ただし、後述しますが特例などにより30万円までは全額を経費計上できる場合もあります。
固定資産の具体例
では具体的にどのようなものが固定資産に含まれるのでしょうか。固定資産には大きく分けて「有形固定資産」と「無形固定資産」があります。
有形固定資産 | 無形固定資産 |
---|---|
建物、機械、車、机、パソコン など | ソフトウェア、商標権、特許権 など |
それぞれの固定資産は国により定められた耐用年数があります。
資産の取得価額は1組として判断
機械一式を購入する場合、機械とその機械を稼働させるために必要なケーブルなど、それぞれ別々に購入して「できるだけ消耗品として一括で経費計上したい」と考える経営者も多いようです。しかし注意しなければならないのは、資産の取得価格はあくまでもそれぞれの部品を単体として考えるのではなく、稼働させるために必要なものを1組として考えます。業者が請求書を分けて書いてくれるという場合でも税務署としては実態を見ますので注意しましょう。
中古資産の耐用年数
固定資産の耐用年数は国により定められています。では中古資産を購入した場合にはそれらの耐用年数はどのように変化するのでしょうか。中古資産の耐用年数は、
- 見積もり法
- 簡便法
により算定します。見積もり法は中古の資産の状態によって、あと何年使うことができるかを予測する方法になります。しかし、
- 見積もりに必要な資料がない
- 見積もりを取るのに多額の費用を要する
など、そのような使用可能期間の見積もりが困難な場合、「簡便法」を採用することができます。実務上この簡便法が中古資産の耐用年数の算出で使われている方法になっています。
簡便法による中古資産の耐用年数算定方法
では簡便法ではどのようにして耐用年数を算出するのでしょうか。耐用年数の計算方法は
- 耐用年数の全部を経過している資産
- 耐用年数の一部を経過している資産
でそれぞれ異なります。それぞれ1つずつ解説していきます。
耐用年数の全部を経過している中古資産
まず元の耐用年数を全部経過している場合、この場合には以下の算式で耐用年数を計算します。
法定耐用年数×20%
法定耐用年数は国によって定められている耐用年数のことで、例えば木造、居住用の建物の場合には耐用年数は22年となります。もしこの不動産の築年数が30年の場合、この場合法定耐用年数を築年数が上回っています。このように
法定耐用年数<築年数
という状態にあるような場合には一律で法定耐用年数に20%を乗じた金額が耐用年数となります。先程の例ですと以下の計算式によって耐用年数を算出します。
22年×20%=4.4年
築年数が30年の中古不動産の場合、「4年」で償却することができる形になります。
耐用年数の一部を経過している中古資産
続いて法定耐用年数の一部を経過した資産はどうなるのでしょうか?この場合、以下の算式で耐用年数を算出します。
(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%
例えば法定耐用年数が6年、経過年数2年の普通自動車を購入した場合、
まず普通自動車の耐用年数は6年となります。この6年から中古自動車の経過年数2年をひき、その金額に経過年数に20%かけた金額を足します。
(6年−2年)+2年×20%=4.4年
上記の計算式によりこの場合、中古自動車の耐用年数は「4年」となります。
中古資産に修理や改良があった場合の耐用年数
中古資産に修理や改良を加えて使用するような場合、このようなケースでは上記で説明した耐用年数の計算方法とは異なってきます。
例えば中古資産を使用するため、修理や改良に必要な額が中古資産を新品価格の50%を超えるような場合、先ほどの中古資産の耐用年数の計算は行われず、国により定められた耐用年数を使わなければなりません。
修理や改良にかかった費用>中古資産の新品価格の50%
→国により定められた通常の耐用年数を採用
資産の償却方法は定率法と定額法
資産を減価償却する方法は「定率法」と「定額法」があります。それぞれ資産によってどちらの償却方法を採用するかは異なります。中古であっても基本的には以下の分類で償却方法は分類されています。
定額法 | 定率法 |
---|---|
建物 | 機械装置 |
建物附属設備 | 車両運搬具 |
構築物 | 器具備品 |
ソフトウェア |
このうちの機械装置、車両運搬具、器具備品に関しては届け出を提出することで定額法を選択することも可能です。
では定額法と定率法は何が違うのでしょうか。
定額法は毎年一定額の減価償却費を計上する方法です。取得価額×定額法の償却率で耐用年数を計算します。
定率法は定率法とは毎年、一定の率で減価償却費を計算する方法で、未償却残高×定率法の償却率で算出し、その金額が償却保証額に満たなくなった年分以後は改定取得価額×改定償却率で算出します。
それぞれの特徴としては、定額法は一定額を償却し続けるのに対し、定率法は初期の段階での償却額が多くなります。もちろん償却する総額や償却にかかるトータルの年数は定額法を選んでも定率法を選んでも変わりません。
中古資産はどれくらい節税効果があるのか
では新品の資産に比べ中古資産はどれくらいの節税効果がるのでしょうか。中古資産は基本的に新品と比べ耐用年数が短くなります。耐用年数が短いということは、その分一度に償却(経費に)できる金額も大きくなります。
例えば、5000万円の不動産を購入した場合、通常22年で償却しなければなりませので、一年間で減価償却することができる額は5000万×※0.046=230万円となります。
※耐用年数22年の定額法償却率
しかしこの不動産が耐用年数を全て経過した中古不動産だった場合、4年で償却することができます。そうすると5000万円×※0.25=1250万円を経費とすることができます。
※耐用年数4年の定額法償却率
もちろん新築と築年数22年超の資産ですので、その他の要素も考慮する必要がありますが、一度に経費にできる額だけで考えるとこれだけの違いがあります。同じ金額を支出する場合、短期的に多くの経費を作りたい場合には中古資産、長く経費計上していきたい場合には新品を購入というように節税対策として中古と新品を使い分けることもできます。
4年落ちの中古車が節税になる理由
よく「4年落ちの中古車が節税になる」などと聞くことがあるかもしれません。これは一体どういうことなのでしょうか。この節税方法は中古資産の特徴と定率法の償却方法の特徴を使ったものです。4年落ちの中古車の耐用年数は以下の計算式で算出します。
法定耐用年数−(経過年数×0.8)=中古車の耐用年数
4年落ちの中古車の場合、
6年-(4年×0.8)=2.8年
となり、1年未満は切り捨てのため耐用年数は2年となります。
更に、耐用年数2年の定率法の償却率は「1.0」となるため全額、初年度の経費とすることができます。
中古不動産は木造で節税
中古の不動産を購入する場合、木造の方が節税効果は高くなります。というのも、不動産は構造や用途によって耐用年数が異なり、鉄筋コンクリート(RC)のような場合には法定耐用年数は47年ですが、木造の場合には22年となっているからです。
例えば5000万円の不動産(建物部分)を購入した場合の木造と鉄筋コンクリートの償却額を比較すると、
5000万円×0.022※1=110万円
5000万円×0.046※2=230万円
木造か鉄筋コンクリートかによって年間120万円もの違いが生じます。
※1木造耐用年数22年の償却率
※2鉄筋コンクリート47年の償却率
中古不動産を購入する際には耐用年数が全く異なってくるため「構造」も確認する必要があります。ちなみに不動産のうち減価償却をすることができるのは「建物部分」のみとなり、土地部分は減価償却費として計上することはできません。
一括で経費にできる特例
中古資産の他に資産を一括で経費にする方法はあります。青色申告をしている中小企業の場合、「少額減価償却資産の特例」によって10万円以上30万円未満の資産を上限300万円(年間)まで全額経費計上することができます。
この特例により、適用要件を満たしている中小企業は確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表16(7))を添付することで30万円までは一括で経費計上することができるようになります。
また「一括償却の特例」というものもあり、10万円から20万円未満の資産について、3年間で経費にすることができるという特例もあります。
「10万円を超えているから・・・」と一括での経費計上を諦める前に、少額減価償却資産の特例や一括償却の特例を使うことができないか確認してみましょう。
中古資産による節税の注意点
中古資産は耐用年数が短くなるため節税対策として有効ですが、以下のことに注意しなければなりません。
減価償却は月数で按分計算
中古資産を購入した初年度の減価償却費は月数で按分されます。例えば事業に要した期間が対象の期のうちの3ヶ月だった場合、資産はまず耐用年数で按分し、更に3/12を乗じた金額のみを減価償却費として計上することができます。
つまり決算直前に資産を購入したとしても月数で割るのであまりその期の節税対策にはなりません。
中古資産は価値が下がりにくいものを
中古資産は売却価格があまり下がらないものを購入することによって将来の経営不振の際のリスクヘッジにもなります。よく検討されるのは価値の下がらない高級ブランド車です。
4年落ちの高級車とそうではない普通自動車も、どちらも耐用年数は2年となり全額をその期に償却することができます。しかし高級ブランド車は全額経費計上した後も実際の資産価値は下がりません。つまり利益が出ている時には会社に経費を作り、逆に会社の業績が落ちている時に高く売却することができるのです。中古の資産選びをする際には将来の売却も考えて購入しましょう。
もちろん先ほど紹介したような高級ブランド車は税務署の目にも留まりやすいものになりますので購入の際には税理士などの専門家にご相談ください。
中古資産は新たなキャッシュを生み出すものか
節税目的で資産を購入したとしても、不動産ですと固定資産税、機械にしても修繕費などの「維持費」が購入後も発生し続けます。資産の購入を考える際にはその購入する資産が新たなキャッシュを生み出すものであるかどうかが最も重要なポイントとなります。節税対策と言っても中古資産の購入はキャッシュが出ていく節税対策になります。設備投資という側面から見ても価値のある資産、将来キャッシュを生み出す資産購入を検討しましょう。
減価償却しないとどうなる?
最後に、実はこれまでご紹介してきた減価償却は「任意償却」と言われており、減価償却はしてもしなくてもよく、あくまでも「任意」の償却となります。(個人の場合減価償却はしなければなりません。)ですので、「今期は赤字が強いから減価償却をしないでおく・・・」ということも実は可能です。ただ注意しなければならないのは、減価償却を行なっていない場合、銀行からの融資を受けるための評価は下がります。融資をする際に銀行に提出する信用保証協会が作成しているチェックリストには「減価償却を行なっているか」をチェックする欄があり、適正に減価償却を行なっていない場合には信用が低くなってしまうので注意しましょう。
まとめ:中古資産の減価償却が節税に効果的な理由
今回の記事では「中古」資産の減価償却が節税に効果的な理由についてご紹介しました。中古資産は新品の資産に比べ耐用年数が短くなるためより大きな金額を短期間で経費にすることができ節税に効果的です。中古車の場合、「4年落ち」であれば初年度に全額償却することもでき、不動産の場合には「木造」の中古が耐用年数も短く節税に効果的です。しかし中古資産を購入し節税対策をする場合、タイミングを間違えるとあまり節税効果がない場合もありますし、資金繰りの問題が生じ会社の経営が厳しくなる場合もあります。中古資産の購入で節税をお考えの方は弊社の節税コンサルティングサービスにご相談ください。