青色申告控除は不動産の事業的規模に適用される
青色申告をすれば、事業的規模の不動産所得に対して特別控除が受けられるのをご存じですか? 複式簿記で帳簿を付ければ『最高65万円の控除』が受けられるので、節税効果はバツグンです!
みなさんも不動産収益の確定申告は、白色申告ではなく青色で申告をしましょう。本記事では、不動産所得で青色申告控除を受ける方法を詳しく解説します。
不動産の青色申告はいくらから?
不動産事業の所得が20万円を超えると、確定申告が必要になります。より分かりやすく説明すると、200,000円ぴったりであれば確定申告は不要、200,001円からは確定申告が必要になります。
確定申告が必要な金額
- 20万円まで⇒確定申告なし
- 20万円以上⇒確定申告が必要
不動産の所得は、「得た所得」から「経費」を差し引いて求めます。
例えば、不動産所得が年間600万円あったとして、経費に580万円かかったとします。この場合の利益は【600万円−580万円=20万円】なので、確定申告は不要となります。
不動産所得以外にも、事業所得も所得が20万円以下であれば確定申告は必要ありません。
青色申告控除に該当する事業
青色申告で特別控除が受けられるのは、不動産所得と事業所得、山林所得の三つです。
区分 | 所得区分 | 青色申告特別控除の額 |
---|---|---|
事業所得 | 自営業者の事業による所得 | ・10万円(単式簿記)・65万円(複式簿記) |
不動産所得 | 不動産を貸して得られる所得 | ・10万円(単式簿記)・65万円(複式簿記) |
山林所得 | 山林を立木のまま譲渡して得られる所得 | ・10万円 |
上の表にもあるとおり、事業所得と不動産所得については、複式簿記で帳簿を付けることで「最高65万円」の特別控除が受けられます。
一方、山林所得で受けられる青色申告控除の特別控除は最高10万円ですが山林を売って得られる山林所得には別途、特別控除の制度が設けられています。
山林を売って得られる「控除と税の仕組み」については本記事の後半で詳しく解説します。
不動産所得と課税の仕組み
不動産所得と聞いてイメージするのは「土地や建物の貸付で得られる利益」ではないでしょうか? しかし、不動産所得は土地や建物だけに限りません。国税庁が定める「不動産所得」には次のような種類があります。
国税庁が定める不動産所得の種類
- 土地や建物などの不動産貸付
- 地上権など不動産の上に存する権利の設定及び貸付け
- 船舶や航空機の貸付け
このように「船舶や航空機の貸付」で得た利益も「不動産所得」に含まれます。土地や建物だけでなくヨットやボートを所有している方、ヘリや航空機を個人で所有している方が得る利益は「不動産所得」に分類されるので覚えておきましょう。
不動産所得の申告が必要な人
不動産で得る収益は事業所得ではありません。副業であったとしても不動産で得た収益は、事業所得と分けて考えましょう。
不動産所得の申告が必要な人
- 土地や建物の不動産を課している人
- 家賃収入(アパートやマンション)を得ている大家さん
- ワンルームマンションを貸し出し、資産運用している人
このように、アパートやワンルームマンションの家賃収入を得ている大家さんをはじめサラリーマンの方でワンルームマンションを貸し出し利益を得ている方も、上の条件に当てはまります。
所得から経費を差し引いて20万円を超える場合には「不動産所得」の申告をしてください。
不動産所得の計算方法
「不動産所得」は、以下の式で計算できます。
不動産所得の計算式 不動産所得 = 総収入金額 − 必要経費 |
上の計算式にある総収入金額と必要経費には、どのような金額が含まれるのか、表にまとめてみました。
区分 | 内容 |
---|---|
総収入金額 | 土地や建物などの不動産貸付による売り上げ、家事消費分、売却代金、保険金、リベート(手数料)、損失があった場合に受けとる損害賠償ほか |
必要経費 | 売上原価(仕入金額、棚卸高、水道光熱費、通信費、消耗品費、管理費、租税公課(国税や地方税、国や公共団体への交付金や会費など)、減価償却費(長期利用する資産を資産の耐用年数にわたって、規則的に費用として計上する金額)など |
なお、不動産購入の借入金利息については、必要経費として計上してください。土地や建物の固定資産税、保険料なども必要経費に含まれます。
このほか、物件の維持管理や修理・修繕費用も必要経費として計上します。不動産所得の会計と所得税の考え方については、国税庁の判断を参考にしましょう。
参考資料:No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)国税庁
不動産収入にかかる税金の計算方法
不動産収入にかかる税金は、収入金額から必要経費を差し引き、所得税率を掛けることで求められます。
不動産所得にかかる税金の計算式 不動産所得の税金 = (総収入金額 − 必要経費)× 所得税率 |
総収入金額と必要経費については、先に説明をしました。所得税率は、以下の計算式で求められます。所得税率の早見表を見て、不動産所得にかかる税率が何パーセントなのか確認してみましょう。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円以上、330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円以上、695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円以上、900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円以上、1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円以上、4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
「実際に支払う税金」は、上の表の右側にある控除額を差し引いた上で計算してください。不動産所得の課税所得金額は、次の式で求められます。
不動産所得の課税所得金額の計算式① 不動産所得の課税所得金額 = 不動産所得 − 各種控除 |
また、給与所得と不動産所得が両方ある方は、以下の式で課税所得金額を求めてください。
不動産所得の課税所得金額の計算式②(給与所得あり) 不動産所得の課税所得金額 = 給与所得+不動産所得 − 各種控除 |
さらに、事業的規模で不動産所得を得ている方は、上の控除に加えて青色申告控除を加えることができます。
不動産所得の課税所得金額の計算式③(青色申告控除あり) 不動産所得の課税所得金額 = 不動産所得 − 各種控除 − 青色申告控除 |
不動産所得と実際に支払う税金が、いくらになるのか計算してみましょう。
事業規模で不動産貸付を行った場合のメリット
不動産所得は、貸し出す規模によって計算方法が異なります。大きな規模で不動産所得を得た場合は「事業的規模」とみなされます。また事業的規模以外の不動産所得については「業務的規模」に分類され、計算方法はそれぞれ異なります。
不動産所得が事業的規模と見なされれば【青色申告控除、専従者控除、繰越控除、貸倒損失の計上】が認められます。これら4つの意味については、次項で詳しく解説します。
事業的規模と業務的規模の違い
事業的規模と業務的規模にはどのような違いがあるのか、表にまとめてみました。
区分 | 内容 |
---|---|
事業的規模 | ① 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。 ② 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。 |
業務的規模 | 上の規模以外で、不動産を貸して得られる所得 |
ワンルームマンションを貸し出している方は、室数が10を超えると事業的規模と判断されます。また一戸建てを貸し出している方の場合、5棟以上物件を所有していると事業的規模とみなされます。
事業的規模で不動産貸付を行った場合には、最高65万円の青色申告控除が受けられます。一方、業務的規模で不動産貸付を行った場合には、不動産所得の青色申告控除は受けられないので注意しましょう。
参考資料:No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)国税庁
なお、事業的規模で不動産所得を得た場合には、青色申告控除を含めて、以下4つの条件が適用されます。これは、事業的規模で不動産所得を得るメリットといえる部分です。
区分 | 内容 |
---|---|
青色申告控除 | 記帳の条件(複式簿記)を満たせば、最高65万円の特別控除が受けられる。 |
専従者控除 | 配偶者の場合は最高86万円、配偶者以外の親族は最高50万円、または専従者控除前の所得税のいずれか低い方を「専従者控除」とする。 |
繰越控除 | 資産損失が必要経費として計上できる。不動産所得が赤字になった場合には他の所得との損益通算または、青色申告で三年間の繰り越し控除が適用される。 |
貸倒損失の計上 | 回収できない賃貸料(住人の家賃滞納など)が必要経費として計上できる。 |
なお、青色申告控除金額も大きいのですが、最高86万円の専従者控除の金額も非常に大きく設定されています(表中二段目)。専従者控除については、次項で詳しく解説します。
不動産所得の専従者控除、白色と青色申告の違い
専従者控除とは、事業や商売を手伝う専従者に対して適用される控除です。白色申告の場合、専業専従者控除が適用されます。なお、不動産所得の「専従者控除」は、白色申告と青色申告によって控除の条件が異なります。
白色申告の事業専従者控除申請条件
専従者(せんじゅうしゃ)の条件は、次の通りです。
専従者の条件
- 12月31日時点で満15歳以上
- 年間6カ月以上、青色申告社の事業所で働いている
- 確定申告で白色申告控除を受けること
申告者が青色申告者であっても、専従者は青色ではなく「白色」で申告をしてください。また給与の額が月々20万円、30万円といった大きな金額は避けるようにします。白色申告の場合、毎月の給与が88,000円を超えると所得税が発生します。
また10万円を超える給与は「妥当ではない」と税務署から判断される可能性があります。妥当な給与額以外の申請は、事業内容を問われる原因となるので注意しましょう。
青色申告の事業専従者控除申請条件
青色申告の場合には、専従者に対して支払われた給与は「青色事業専業者給与」とみなされるため必要経費として計上できます。ただし、青色申告者の専従者として申告した場合、配偶者控除と扶養控除の対象から外れてしまうので注意してください。
また一年間の控除額が38万円以上にしなければ、節税効果は得られません。なぜなら、専従者控除の額が38万円を下回ると配偶者控除や扶養控除を受けていた方が(専従者控除よりも)節税になるからです。
ここで、専従者で申請する際の注意点をまとめてみました。
専従者で申請する際の注意点
- 一年間に支払う金が期は38万円を超えるよう調整する
- 月々の給与は88,000円以下になるように
- 専従者は配偶者控除や扶養控除が受けられないので注意!
不動産で青色申告控除を受ける方も、上のポイントを踏まえて「専従者として申告すべきか」検討してください。
不動産で青色申告控除を受ける方法
不動産所得で、青色申告の特別控除を受けるには以下の要件を満たす必要があります。
青色申告控除の対象になるには? (1) 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。 (2) これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。 (3) (2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること。 参考:No.2072 青色申告特別控除(国税庁) |
上の【青色申告控除の対象になるには?】にあるように、青色申告控除で65万円を受けるためには、貸借対照表および、損益計算書を確定申告書に添付し提出する必要があります。
貸借対照表、損益計算書、確定申告は、それぞれどのような書類なのか内容をまとめてみました。
区分 | 内容 |
---|---|
貸借対照表(B/S) | 会社の財政状態を示す報告書で、決算日の時点に会社がもつ資産と負債、差額となる純資産をまとめたもの。 |
損益計算書(P/L) | 会社の利益を示す報告書で、収益と費用、利益が記載されている。 |
確定申告書 | 所得にかかる税金を計算し、税金を支払うための申請書類 |
青色申告控除を受けるには、単式簿記ではなく複式簿記で帳簿を付ける必要があります。複式簿記でなければ、10万円の控除になってしまうので注意しましょう。なお、単式簿記と複式簿記の違いは、以下の記事にて詳しく解説しています。
青色申告|不動産所得の確定申告書類作成方法
不動産所得を青色申告で申請する場合、どのような方法で「書類を作成するのか」申請の手順をまとめてみました。
STEP① 必要書類を入手する
まず、確定申告に必要な書類を取り寄せます。所轄の税務署から取り寄せるか国税庁のホームページからダウンロードしましょう。このほか、直接オンライン(国税庁のホームページ)からも確定申請が行えます。
上のサイトにあるように、オンライン上で確定申告書類を作成し、直接電子申告するか、書類を印刷して提出するか二種類の方法が選べます。
オンラインで確定申告する方法
- ウェブ上で書類を作成しプリントアウトして提出
- ウェブ上で書類を作成し、e-Taxで電子申請する
e-TAXなどの電子申告は、以下のページから手続きが行えます。電子申告を希望される方は、申請方法の詳細を確認しましょう。
e-TAXさらに便利に使いやすく国税電子申告・納税システム(国税庁)
STEP② 不動産所得の所得金額を計算して記入する
不動産所得を計算し、取得した書類、またはオンライン上(国税庁 確定申告書等作成コーナー)で入力をします。不動産所得は収入から経費など「差し引かれる金額」を差し引いて計算します。求めた所得金額は、そのまま指定された項目に入力しましょう。
STEP③ 不動産所得の課税金額を計算して記入する
次に不動産所得の金額から、特別控除などの金額を差し引き、課税される所得金額を求めます。計算が終わったら、該当する項目に数字を記入してください(特別控除、基礎控除の仕組みは本記事前半を確認してください)。
STEP④ 不動産所得の税額を計算して記入する
不動産所得の課税金額に、所得税の税率をかけて所得税額を計算します。計算が終わったら該当する項目に記入します(所得税額は、本記事の前半で「所得税早見表」を紹介しています)。
STEP⑤ 不動産所得の基準税額を計算して記入する
所得税額から「差し引かれる金額」を差し引きし「基準税額」を求めます。計算した基準税額は該当する項目に入力してください。
STEP⑥ 不動産所得の復興所得税額を計算して記入する
STEP⑤で求めた基準税額に、2.1%をかけると復興特別所得税が計算できます。確定申告の復興所得税額の部分に、求めた金額(=復興所得税額)を入力します。
STEP⑦ 確定申告書類を提出をする
①〜⑥までの作業が終わったら、確定申告書類を提出します。
マイナンバーカードがあれば、専用のリーダーを使って提出できます。またマイナンバーカードや読み取り用のリーダーが無い方もネットからプリントアウトし、所轄の税務署に提出してください(郵送/税務署への持ち込みも可)。
不動産所得をe-TAXで青色申請する方法
不動産所得はe-TAXで申告をすると便利です。e-TAXで準備をするものには、マイナンバーカードなどの電子証明書、電子証明書を読み取るICカードリーダーが必要です。
e-Tax(電子申告)に必要なもの
- マイナンバーカードなどの電子証明書
- 電子証明書を読み取るICカードリーダー
ICカードリーダーは家電量販店のほか、Amazonでも購入可能です。価格も1,000円〜2,000円とリーズナブルなので、費用を掛けずに電子申告が行えます。また「電子証明書」はマイナンバーカードのほか、以下の場所で電子証明書が取得できます。
発行機関 | 内容 |
---|---|
地方公共団体情報システム機構 | 地方公共団体情報システム機構が発行するマイナンバーカード |
法務省が運営する「商業登記認証局」 | 法務省が運営する「商業登記認証局」が発行する電子証明書 |
株式会社帝国データバンク | 株式会社帝国データバンクが発行、TDB電子認証サービス Type Aと呼ばれる電子証明書 |
東北インフォメーション・システムズ株式会社 | 東北インフォメーション・システムズ株式会社が発行する、TOiNX電子入札対応認証サービス |
日本電子認証株式会社 | AOSignサービスG2の認証局が発行する電子証明書 |
株式会社NTTネオメイト | e-Probatio PS2サービス認証局が発行する電子証明書 |
セコムトラストシステムズ株式会社 | セコムパスポート for G-ID認証局が発行する電子証明書 |
三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社 | DIACERTサービス、DIACERT-PLUSサービス認証局が発行する電子証明書 |
地方公共団体組織認証基盤(LGPKI) | 地方公共団体(LGPKI)認証局による電子証明書 |
政府共用認証局(官職認証局) | 政府共用認証局(官職認証局)の電子証明書 |
電子証明書の手数料は、発行をする機関によって異なります。この中で、最も取得しやすく今後も証明書として利用できるのがマイナンバーカードです。e-TAXを取得される方はマイナンバーカードを取得しましょう。
参考:地方公共団体システム機構|マイナンバーカード交付申請 – マイナンバーカード総合サイト
マイナンバーカードとe-TAXのリーダーがあれば、2020年以降、不動産所得で青色申告の特別控除を受けるのにも役立ちます。2020年と青色申告控除のルールについては、次項で詳しく解説しましょう。
2020年より不動産所得の青色申告控除が変わります
ここまで、不動産所得には最高65万円の青色申告控除が適用されると言いましたが、平成30年の税制改正により、2020年以降の控除条件や基礎控除が大幅に変更されました。
税制改正による2020年以降の影響
- 基礎控除の見直し
- 青色申告控除の見直し
- 給与所得控除の見直し
- 公的年金控除の見直し
①〜④の変更内容について解説します。
① 基礎控除の見直し
基礎控除額は、改正前38万円だった控除額が+10万円多い「48万円」にアップしています。このほか、今回の改正では所得が多ければ、基礎控除が少なくなるよう調整されており、合計所得が2,400万円を超えると32万円、16万円、0円と控除額が少なく設定されています。
基礎控除の見直しについては、以下の記事を参考にしてください。
② 青色申告控除の見直し
今回の改正で、青色申告控除は現行の68万円(複式簿記の場合)から、基本58万円へと10万円の引き下げが行われます。
ただし、e-TAXなどの電子申告など一定の要件を満たせば、以前と同じく最高68万円の控除が適用されまするので安心してください。
最高68万円という大きな控除は「節税」をする上で欠かせないものです。青色申告がまだの方は、青色申告の申請を事前に提出し、次の確定申告には(白色ではなく)複式簿記を使用した「青色」で確定申告をしてください。
③ 給与所得控除の見直し
不動産所得を得ている方の中には、給与所得と平行し税金を納めている方も多いでしょう。
今回の改正では、給与所得の控除が一律10万円引き下げられます。ただし、基礎控除が10万円引き上げられているので、結果としては「±0」として調整されています。
高所得者の方については税の負担が重くなります。所得控除の上限は現行の1,000万円以上から850万円以上に引き下げられるからです。
下の表では「給与所得の控除額」を2019年と2020年以降で比較してみました。
年間の給与所得 | 2019年までの給与所得控除額 | 2020年以降の給与所得控除額 |
---|---|---|
162.5万円以下 | 65万円 | 55万円 |
162.5万円以上、180万円以下 | 収入金額の40% | 収入金額の40%−10万円 |
180万円以上、360万円以下 | 収入金額の30%+18万円 | 収入金額の30%+8万円 |
360万円以上、660万円以下 | 収入金額の20%+54万円 | 収入金額の20%+44万円 |
660万円以上、850万円以下 | 収入金額の10%+120万円 | 収入金額の10%+110万円 |
850万円以上、1000万円以下 | 収入金額の10%+120万円 | 195万円 |
1,000万円以上 | 220万円 | 195万円 |
不動産所得と給与所得の両方を得ている方は、いくら控除されるのか2020年以降の控除条件を確認しましょう。
参考資料:税制改正等の内容(国税庁)
④ 公的年金控除の見直し
改正後、公的年金の控除額も10万円引き下げられます。また(現行では)公的年金に控除の上限はありませんが、改正後公的年金の収入が1,000万円を超える場合の控除上限は「195万5,000円」に定められます。
①〜④の変更点は、国税庁のホームページでも詳しく解説しています。
参考資料:平成 30 年分 所得税の改正のあらまし – 国税庁
不動産所得の確定申告で注意したいポイント
不動産所得の確定申告で、注意したいポイントをまとめてみました。
① 経費の申告 | 経費計上できるものは、所得とあわせて忘れずに申告しましょう。 |
---|---|
② 未収家賃 | 未収家賃も収入として申告します。 |
③ 親族に無料で貸した物件の収益 | 親族に無料で貸し出した土地や建物は、固定資産などの経費として計上できません。 |
④ 土地や駐車場の扱い | 土地は10カ所で1室として計算、駐車場は5台分のスペースで1室として計算してください。 |
⑤ 減価償却の設定 | 高額で使用する建物は減価償却の対象、土地は減価償却できないので覚えておきましょう。 |
①〜⑤の内容について、順に説明します。
① 経費の申告
不動産所得は、得た所得から経費を差し引いて求めます。
自分では「経費と認識していなかった」ような、意外な項目が経費計上できるかもしれません。税金や保険料、管理会社への業務委託料、減価償却費は計上し忘れないよう注意しましょう。
なお、司法書士や税理士への報酬は全額経費として計上できます。
不動産所得は所得や経費など、帳簿を付けるのが「難しくて面倒だ…」という方も多いのですが、司法書士や税理士に依頼をすれば経費で支払うことができ、難しい問題はすべてお任せできるので安心です。
また司法書士や税理士にお願いをすれば、経費計上できない項目を「誤って計上」する危険もなく、修正申告などのリスクも未然に防げます。
② 未収家賃
入居者のなかに、家賃を支払わない人や長期間滞納している人がいたとします。この場合、未収家賃は「将来得られる収入」とみなされるため、課税の義務が生じます。
つまり、家賃を支払わない住人がいた場合「家賃収入が0」になる上に、追い打ちを掛けるように税の負担が課せられるのです…!
家賃滞納者がいると、不動産資産を売却する場合も買い手が付かないほか、相場よりも安く買いたたかれるなどのトラブルが生じます。未収家賃の問題でお困りの方は、赤字が大きくなる前に、信頼できる弁護士を見つけて相談しましょう。
③ 親族に無料で貸した物件の収益
親や兄弟、親戚に物件を無料で貸し出した場合、固定資産などの経費として計上できないので注意してください。
相続税基本通達9-10参照 (無利子の金銭貸与等) 夫と妻、親と子、祖父母と孫等特殊の関係がある者相互間で、無利子の金銭の貸与等があった場合には、それが事実上贈与であるのにかかわらず貸与の形式をとったものであるかどうかについて念査を要するのであるが、これらの特殊関係のある者間において、無償又は無利子で土地、家屋、金銭等の貸与があった場合には、法第9条に規定する利益を受けた場合に該当するものとして取り扱うものとする。 ただし、その利益を受ける金額が少額である場合又は課税上弊害がないと認められる場合には、強いてこの取扱いをしなくても妨げないものとする。 参考:法令解釈通達 第9条《その他の利益の享受》関係(国税庁) |
上の通達にもあるように、無償で貸し出した場合や少額で貸し出した場合は、課税しなくてよいというのが国税庁の考えです。
④ 土地や駐車場の扱い
建物の建っていない土地や駐車場は、以下のような仕組み「室数」を計算します。
土地や駐車場を「室数」で計算する方法
- 土地は10カ所で1室とみなす
- 駐車場は5台分のスペースで1室とみなす
土地や駐車場で青色申告したい方は(上の計算方法で)得た不動産が事業的規模に相当するのか、業務的規模になるのか判断してください。なお事業的規模の目安は次の通りです。
事業的規模の不動産
- 貸間、アパート等は、貸与できる独立した室数がおおむね10以上
- 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上
このほか事業的規模の不動産所得については、国税庁のホームページが参考になります。
参考:No.1373 事業としての不動産貸付けとその区分|国税庁
⑤ 減価償却の設定
建物は購入費用を法律で決められた耐用年数で割り「減価償却費」として計上できます。
建物の耐用年数
- 木造の建物は22年
- 鉄構造の建物は34年
- RC造の建物は47年
土地には適用されませんが、減価償却費によって税の負担は軽減されます。建物の構造や用途によって耐用年数は細かく指定されています。正確な耐用年数は、国税庁のホームページで確認しましょう。
建物の付属設備などにも、それぞれ耐用年数が決まっています。正確に耐用年数と減価償却費を計算されたい方は、司法書士や税理士に相談しましょう。依頼費用は全額経費計上できるので、無駄なく節税対策が行えます。
山林の土地を譲渡した場合は不動産所得?山林所得?
本記事の前半で触れた「山林所得」について、さらに詳しく説明しましょう。山林と不動産とでは、所得の計算方法が異なります。
山林などの土地を持っている方が、土地を手放して得た利益は「不動産所得」なのでしょうか、それとも「山林所得」なのでしょうか…?
実は「山林の手放し方」によって、山林所得/事業所得/雑所得と所得の計算方法が変わります。
まず、山林を山ごと譲渡して得た土地の利益は譲渡所得として計算します。また山林を伐採して譲渡した場合や、立木のまま所有する山林を譲渡した場合には、山林所得として所得を計算します。
このほか、山林を取得してから5年以内に伐採または譲渡して得た利益は、山林所得ではなく「事業所得」または「雑所得」とみなされるので覚えておきましょう。
手放し方 | 内容 | 所得の区分 |
---|---|---|
山のまま手放す | 山林を山ごと譲渡して得た土地の利益 | 譲渡所得 |
山林伐採後に譲渡 | 山林を伐採して譲渡した場合の利益 | 山林所得 |
立木のまま譲渡 | 立木のまま所有する山林を譲渡した場合の利益 | 山林所得 |
5年以内の譲渡 | 取得してから5年以内に山林を伐採または譲渡 | 事業所得か雑所得 |
山林所得の計算方法は、次の通りです。
山林所得の計算方法 山林所得の金額 = 総収入金額-必要経費-特別控除額(最高50万円) |
山林所得は、不動産所得のように「他の所得との合算」が認められていません。山林所得の課税額は次の方法で計算します。
山林所得の税額を計算する方法 山林所得の税額 =[山林所得 × ⅕ × 税率]×5 |
税率は本記事前半の[所得税率の早見表]で確認してください。また国税庁のホームページにも税額の早見表が掲載されているので参考にしましょう。
なお山林所得の専従者控除(白色)は、金額が大きいのが特徴です。配偶者の場合は最高86万円、その他の親族が専従者になった場合は最高50万円の特別控除が適用されます。
ただし、上の控除額は固定された条件ではありません。
山林所得の金額を専従者の数に1を加えた数で除した金額とのうち、いずれか低い金額が適用されます。白色申告には、専従者控除は86万円(または50万円)が確定するのではありません。控除を申請する際には、計算を間違えないようにしましょう。
青色申告控除の場合は(事業所得と同じく)給与として支払った給与が経費として計上できます。
専従者の条件は、不動産所得で説明をした「専従者の条件」と同じです。12月31日時点で満15歳以上、年間6カ月以上、申請者の事業所で働いている方、確定申告で白色申告控除を受ける方にのみ「専従者控除」が適用されます。
このほか山林所得については、国税庁のホームページにて詳しく解説しています。山林の指南をお持ちの方は、チェックしておきましょう。
不動産所得は税の知識で納税額が変わる!
不動産所得は「税の知識で納税額が変わる」のをご存じでしょうか?
不動産所得に限らず、事業所得にしても同じです。私たち素人が知らない、税の知識で節税が可能となり、正しい方法で帳簿を付ければ、納税額は大きく変わってくるのです。
不動産所得で上手に節税し、税金を納めたいという方は、信頼できる司法書士や税理士に相談しましょう。依頼費用は経費で計上できる上に、プロにお任せをすることで、納税額の削減が期待できます。
また今まで、個人で納税をしていた方も司法書士や税理士への相談を検討しましょう。プロに相談をすれば(税の見直しで)払いすぎた税金が還ってくる可能性があります。
税金の納め過ぎについては、司法書士や税理士に「還付申告」や構成の請求について相談してください。
まとめ|不動産所得は税理士などの専門家に相談すると安心!
不動産所得では、節税につながる「特別控除」が受けられます。また不動産所得には事業的規模と、それ以外の規模があることが分かりました。最後に、本記事の内容をまとめておきます。
- 年間20万円の不動産所得には、確定申告が必要
- 青色申告控除(最高65万円)には複式簿記が必要
- 青色申告控除は不動産所得にも適用される
- 要件を満たせば、最高65万円の控除が受けられる
- 2020年以降の基礎控除は55万円、e-Taxの電子申告で65万円の控除が適用
- 2020年以降、基礎控除は10万円アップ
- 不動産所得には事業的規模と業務的規模の二種類がある
- 行政書士や税理士への報酬は経費計上できるのでお得!
不動産所得の計算方法は、所得や経費、未収家賃の計上など複雑です。また経費に計上できるかは司法書士や税理士などの専門家でなければ、判断が難しいケースがたくさんあります。
納税で失敗をしないよう、不動産所得の確定申告は信頼できる司法書士や税理士に依頼しましょう。