「ワンルームマンション投資は節税効果がある!」節税対策を検討している中でこのような文句を耳にしたことがあるかもしれません。
しかしワンルームマンション投資による節税対策には様々な注意しなければならないポイントがあります。今回の記事ではワンルームマンション投資による注意点や成功するためのヒント、また失敗しやすいケースなどについても事例を交えてご紹介していきます。
ワンルームマンション投資による節税が失敗しやすい理由
ワンルームマンション投資は比較的手軽に始められる投資として考えられており、節税対策として考えられる場合も多いようです。しかしワンルームマンション投資は数ある節税対策の中でも失敗しやすい節税対策に分類されます。なぜかというと、ワンルームマンションの投資は、
- 大きなキャッシュアウトを伴う
- 将来の経済状況に左右されやすい
- 節税効果を見誤りやすい
といった要素があるからです。それぞれどのような意味があるのか、一つ一つ具体的に解説していきます。
大きなキャッシュアウトを伴う
まず、節税対策としては大きく分けて、キャッシュアウト(現預金が手元から出ていくこと)を伴う節税対策と、そうでないもの(現預金が手元から出ていかないもの)があります。
キャッシュアウトを伴わない節税対策
- 青色申告控除の活用
- 評価損の計上
- 資産の除却
- 資本金額の調整 など
キャッシュアウトを伴う節税対策
- 役員賞与の支払い
- 資産の購入
- 別会社の設立 など
ワンルームマンション投資は大きな現金の減少を伴う節税対策
ワンルームマンション投資はもちろん「キャッシュアウト」を伴うものに分類されます。そして支払う金額としても大きなキャッシュアウトを伴います。
もちろんそれだけ節税効果を発揮した際のインパクトは大きなものとなりますが、手元の現金もそれだけ減少するということも覚えておきましょう。
将来の経済状況に左右されやすい
ワンルームマンションによる投資は将来の経済状況に左右されやすいものとなります。例えば将来の経済状況によってはマンションに「空室」ができる、経済状況を鑑みた「値下げ」による収益低下なども予想されます。
もちろん一括借上により一定の売り上げが保証されるという契約もありますが、経済状況によって毎月の設定額が値引きされるということは容易に発生します。
特にワンルームマンションは不動産の中でも入居者の入れ替わりが頻繁に行われる物件となり、経済状況が反映されやすくなっています。
節税対策という側面で考える場合、その他の節税対策に比べてワンルームマンション投資は将来の経済状況に左右されやすく、非常に計画を立てづらい節税対策となります。
節税効果を見誤りやすい
ワンルームマンション投資による節税対策は先ほどご紹介した将来の経済状況による突然の空室、また収益部分だけでなく突然発生する修繕費なども関係しており、これらの不確定要素によりワンルームマンション投資は節税効果を見誤りやすい対策となります。
それらの不確定要素は節税面だけでなく会社の資金繰りにも影響しますので、会社を経営する上でのリスクも発生することとなります。
ワンルームマンション投資での節税に失敗するケース(事例)
ではワンルームマンション投資での節税に失敗する具体的なケースについて事例を交えてご紹介します。
減少していく節税効果
ワンルームマンションでの節税効果は年々減少していくことをご存知でしたか?
ワンルームマンション投資による節税対策を不動産会社から勧められたAさんは大きな節税効果を期待してワンルームマンションを購入。確かに初年度には大きな節税効果があったものの、年々節税効果は薄れていきあまり期待していたような効果は得られず。大きな支出をした割には節税効果が発揮されませんでした。
なぜAさんは期待していたような節税効果を得られなかったのでしょうか。
これは不動産購入による節税はどうしても購入初期に経費が多く発生し、それ以降支出は少なくなっていくという特徴があるためです。
初期に発生する経費としては
- 不動産登記費用
- 不動産取得税、印紙税
- ローン事務手数料
- 仲介手数料
などです。
これらの経費は不動産購入後も継続的に発生し続けるものではありません。
ワンルームマンションの節税を考える場合には購入初年度だけでなくそれ以降の節税効果にも着目しなければなりません。
ワンルームマンション投資により逆に税金が発生
節税効果を期待してワンルームマンションを購入したBさん、不動産収入も思ったより多く良い投資をしたと大変満足。しかしその矢先、不動産収入部分に対して多額の税金が発生することになります。
節税目的のためにワンルームマンション投資をしたのに、全然期待していたような節税効果が得られなかったと後悔しています。
不動産投資による節税を行う場合、これはあくまでも不動産「投資」ですので、投資後は収益が発生するものとなります。覚えておかなければならないのは、この収益(家賃収入)に対しても税金が発生するということです。
ここで受け取る不動産収入は個人としての投資であれば所得税や住民税が、法人の場合には法人税の課税対象となります。
ワンルームマンション購入後の年間の家賃収入が毎年の減価償却額などの経費を上回るのであれば税金が発生しますし、減価償却額などの経費が家賃収入を上回るのであれば税金は発生しません。
しかしそれでは投資としては良い投資とは言えません。ここが不動産投資の非常に難しい部分なのですが、不動産投資としての投資効果と節税対策としての節税効果を「同時」に受けることは事実上難しいのです。
利回り低下のリスク
投資としての効果も期待してワンルームマンションを購入したCさん。不動産会社から当初紹介されていた利回りはかなり良い条件だったのですが、購入後すぐに経済状況が悪化。空室や値下げ交渉によりあっという間に期待していた利回りを大きく下回ってしまいました。
先ほどご紹介したように、不動産投資はあくまでも投資ですので、「利回り」についても気にする必要があります。しかしこの利回りは経済状況や社会情勢に大きく左右されるので、不動産購入後利回りが低下するというリスクを常に抱えています。
不動産会社から提示された利回りはあくまでも参考として、今後利回りが低下するというリスクも抱えているということを覚えておきましょう。
購入した不動産を売却できず
利回り低下に悩んでいたCさん。節税効果という面では満足していたのですがマンションの修繕費がかさむようになってきたことから売却を検討。しかしいざ売却のために動き始めてもマンションは一向に売れず。その間も固定資産税と修繕費の対応に追われることとなってしまいました。
不動産を購入後、状況が変わり不動産を売却したいと考えることもあるかと思います。しかしいざ売却しようと思っても購入希望者がすぐに現れるというわけではありません。不動産を持ち続けているとそれだけで多額の税金が発生します。
そのため購入の際には駅からの距離や築年数なども考慮し、いざ売却しようとする時にできるだけ売却しやすい条件にあるワンルームマンションを購入するようにしましょう。
膨れ上がる修繕費
先ほどのマンションを手放すことを考えていたCさんはその後、マンション売却のために必要な修繕を行うことにしました。しかし業者から出された見積書の金額に驚きます。不動産を保有していると税金だけでなく、修繕費も大きな出費となります。
もちろん修繕を行わなければそれらの支出を抑えることができますが、そうすると居住者が退去した後になかなか人が入らない、いざ売却しようとした時になかなか売れない、などの問題が発生することとなります。
資産価値をある程度維持し続けるためには不動産を修繕は継続的に行って行かなければなりません。この修繕費に関しては不動産購入から時間が経過するにつれ金額も大きくなっていく傾向があるため、不動産の修繕計画も計画的に立てておきましょう。。
ワンルームマンション投資による節税対策を行う場合の注意点
ワンルームマンション投資による節税を行う場合、税金計算上以下の点に注意しなければなりません。
- 修繕費か減価償却か
- 資産となった場合の税金
- 減価償却費よりもローン返済額が多い
修繕費か減価償却費か
不動産を保有している場合、先ほどご紹介したように修繕による支出はつきものです。ただしこの修繕費に関しては金額や目的によって経費としての計上の仕方が異なりますので注意が必要です。
例えば、その年に修繕費として100万円かかったので「今年は税金の心配もいらないし節税効果が期待できるぞ」と思っていても、その支払い額が資産として計上され100万円まるまる経費計上できないとうこともあります。
修繕費か資産かという判断はその支出が「資本的支出」に該当するかどうかで決まります。
資本的支出とは資産の使用可能期間が延長する、または価値を増加させることを言い、支払い内容により建物や構築物など資産としての科目に処理されます。
資産として計上されたものはそれぞれ定められている耐用年数によって按分され、毎年の経費はその按分額を減価償却費として経費計上していきます。
資産計上された際の税金
資本的支出に該当した場合、資産としての価値が増加しているわけですから固定資産税などの金額も増加することとなります。建物の価値が増加している場合には固定資産税に、構築物として処理された場合には償却資産税の額が増加することとなります。
このように不動産にまつわる税金は所得税や法人税だけでなく、固定資産税、償却資産税なども関係してきますので注意しましょう。
デッドクロスにより資金繰り悪化
ローンを組んで不動産投資を行う場合には「デッドクロス」に注意しなければなりません。デッドクロスとはローンの元金返済額が減価償却費を上回ってしまう状態のことを言います。
デッドクロス=ローンの元金返済額>減価償却費
ローンを組んでいる場合、会計上、経費とすることができるのはローン返済の利息部分のみです。つまりローンの元金返済額は経費となりません。
ローン返済当初は減価償却費があるため、ローンの支払いが多額だったとしてもそれ同等もしくはそれ以上の経費が計上できるのですが、減価償却費として計上することができる金額が減ってくると、会計上では経費は少なくなり、しかしローンの支払いをしているため手元のキャッシュは目減りしている状態が発生します。
このような状態が続くと「黒字倒産」といった状態に陥ってしまうのです。
ワンルームマンション投資による節税を成功させるためのヒント
これまでワンルームマンション投資の失敗事例や注意点についてなどご紹介してきました。
ではワンルームマンション投資による節税を成功させるためにはどのようなことを行うべきなのでしょうか。ここではいくつかのヒントをご紹介したいと思います。
投資効果にも注目
ワンルームマンション投資を行う場合、節税対策だけでなく投資効果についても考えなければなりません。
ワンルームマンションの投資により経費が増え節税ができているという状態は、不動産投資が「赤字の状態」になっているということですので、キャッシュフロー的にも悪化していることが多くあります。税金を支払いたくないという理由から支出を伴う節税対策をたくさんして手元資金も無くなってしまうのであれば本末転倒です。
マンション投資を行う際には節税効果だけでなく投資としての効果にも着目し、例え税金を支払ったとしてもまだ手元にキャッシュが残るという健全な経営を心がけましょう。
相続税の節税も見据えた不動産投資
長期的に見る場合、手元にある現預金を不動産という資産に変換しておくことが大きな節税効果につながることはあります。
例えば相続の際には現預金で保有しているよりも不動産で保有していると、小規模宅地の特例などを使うことにより土地の評価額を50%程度まで下げることもできるのです。
このようにワンルームマンション投資は相続部分で大きな節税効果を発揮するというメリットもあるので、節税対策として総合的に判断する必要があります。
想定されるリスク管理
先ほどご紹介したように、修繕リスクや空室リスクなど、様々なリスクが不動産投資には付きものですが、そのようなリスクに対して事前にきちんと対策をしておくことである程度のリスクはコントロールすることができます。
例えば修繕リスクに関しては定期的なメンテナンスや、事前に長期的な修繕予算を組んでおくことなどである程度リスク管理をすることができます。想定できるリスクに対しては事前に対策を練っておくようにしましょう。
まとめ:ワンルームマンション投資での節税は失敗しやすい?成功するポイントは?
今回の記事ではワンルームマンション投資による節税の失敗事例や注意点、成功するためのポイントについてご紹介してきました。
ワンルームマンション投資は不動産投資という括りの中では比較的手をつけやすいものとなります。不動産業者から節税になるからと勧められることもあるかもしれません。
しかし節税対策としてだけのワンルームマンション投資は大変危険です。長期的に考え、節税だけでなく投資としても良い物件かよく検討し、また想定されるリスクに対してもしっかりと対策を練っておきましょう。
ワンルームマンション投資による節税対策をご検討されている場合は、専門の税理士か節税コンサルティングサービスをご利用ください。