税金を払いたくない中小企業の法人税対策やっていいこと・ダメなこと

税金を払いたくない中小企業の法人税対策やっていいこと・ダメなこと節税対策ノウハウ
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多くの経営者にとって、法人税をはじめとする税金は、なるべく払いたくないというのが本音ではないでしょうか。中小企業の場合、せっかく利益が出ても、約2~3割の税金を支払うとなると、痛手となることもあるでしょう。しかし、税金を払いたくないとはいえ、安易に節税対策を取るのも考え物です。方法によっては脱税となり、ペナルティが課せられるリスクがあるからです。今回はこの記事で、中小企業の法人税対策としてやっていいこと、ダメなことをご紹介します。

税金(法人税)を払わないでいい方法はある?

税金(法人税)を払いたくない気持ちは、多くの個人、法人に共通することでしょう。とはいえ、納税は国民の義務であり、納められた税金も無駄に使われるわけではありません。納めた税金は道路の整備や警察、消防、役所、図書館など、私たちが生活する上で必要なものに活用されています。つまり、個人や法人が納める税金(法人税)は、いわば日本という大きなグループの運営費と考えられ、税金によって私たちの社会も回っているといえるでしょう。

法人税の支払いは法人の義務

納税が国民の義務である以上、法人であっても、法人税の支払いは納める義務があります。利益に対して、2~3割程度の法人税等を支払うことは免れません。

法人税は国を支える税収3つの柱のひとつ

国の一般会計歳入は、租税及び印紙収入が約6割を占め、残りは国債などの発行で成り立っています。さらに、租税及び印紙収入の総税収(国税+地方税)のうち、法人税は20.4%を占めます。これは消費税35.5%、所得税30.4%に次ぐ大きな割合であり、国を支える税収の3本柱のひとつといえます。

税収に占める割合から見ても、法人税は国にとって重要な財源であり、だからこそ法人税を適正に支払わない事業者に対しては、延滞税等の厳しいペナルティが課せられます。現実的に、法人税を払わないで済む方法は存在しません。

法人税を払いたくない事業者がやりがちなこと

経営者によっては、法人税を払いたくないので、どうにか税金を安くできないか考えるかもしれません。しかし、やり方によっては節税ではなく不正な脱税行為になってしまいます。法人税を払いたくない事業者がやりがちな不正行為について見ていきましょう。

売上の過少申告

法人税を払いたくないから事業者がやりがちなこととして、売上を過少申告するケースが挙げられます。売上の過少申告の手口はさまざまですが、下記のような方法で売上の一部を除外したり、意図的に次年度へ売り上げを持ち越す行為が見られます。さらに、除外した売上は隠し金庫や貸金庫を使って、預貯金や現金で保管するケースが多いようです。

  • 売上伝票の一部破棄、レジの不正操作
  • 納品書の日付や帳簿の偽造
  • 遠隔地の売上除外
  • 営業時間のウソをつく行為

ただし、どんなに巧妙な手口で売上を減らしても、税務署は銀行口座の入出金記録や請求書、領収書の欠番、帳簿明細と売上総額のズレなどから必ずほころびを見つけます。たいていのケースでは、不正行為を働いても暴かれることになるでしょう。

現金を抜く

家族経営の小売店や飲食店等では、法人税を払いたくないからと現金を抜くケースが見られます。例えば1日に売上を1万円ずつ除外するなどです。現金を抜くケースでは、1日あたりで見るとわずかな金額で「分からないだろう」という気持ちから常習化することも多いです。結果として、そのわずかな金額が積み重なり、1事業年度で数十万、数百万円単位の現金を抜いたことになる場合もあります。

経費の架空計上(水増し)

少しでも税金を安くするため、経費を架空計上して利益を少なく見せ、法人税を減らそうとすることも、よくあるケースです。いわゆる経費の水増しです。

経費の水増し手口として最も多いといわれているのは、領収書の改ざん・偽装です。
例えば行きつけのお店に協力してもらい、架空の領収書を発行してもらう、3,000円の領収書の「3」に線を書き足して、「8」に見せかけるなどです。

代表的な経費の水増し手口には、代表者の妻を役員にする、子どもを社員として給料を出すなど、実際に働いていない人を働いているように見せるケースもあります。製造業や建設業の場合は、存在しない会社に工事の外注や仕入れを装う手口もよく見られます。

  • 架空の人件費計上
  • 仕入れ費用の偽造、改ざん
  • 旅費交通費の捏造

不正な脱税行為は税務署に必ず見抜かれる

売上を減らしたり経費を水増ししたりと、脱税の手段はさまざまありますが、どのような事情があっても、不正行為を行わないことが一番です。税務署も常に脱税の手口をチェックしており、簡単にごまかすことはできません。さまざまな手法により小さなほころびから、必ず見破られるでしょう。

不審点は徹底的に調査される

税務署は、不審な点がひとつでもあれば、徹底的な調査を行います。現金を抜いている疑いがあれば、調査員が客を装って来店することもありますし、故意に伝票を破棄している恐れがあれば取引先の出荷伝票まで突き合わせて不正がないか調べます。

場合によっては、お金の流れを把握するため、個人口座の入出金記録まで調査されることもあります。今後はマイナンバーカードと預金口座が紐づく予定です。隠し口座を作ったとしても、税務署の網からは逃れられないでしょう。

税務情報は一元管理されている

現在、全国の国税局・税務署は「KSK(国税総合管理システム)」というネットワークを通じ、全国の納税者の申告に関する、すべての税務情報を一元管理しています。以前は、各地の国税局や税務署の税務情報をすべて把握することは困難でしたが、一元管理されるようになってから遠隔地の税務情報も常時チェックできるようになりました。「距離が離れた事業所の取引内容なら、少しぐらい不正を働いても大丈夫だろう」と思っても、システムを使えばすぐに見つかってしまうでしょう。

領収書や記録を偽造しても隠し切れない

領収書を偽造して経費を水増ししても、税務署はインクの種類や筆圧など微妙な差を元に、あとから書き加えたものだと見破ります。仮に口裏を合わせて領収書や記録を偽造しても、
つじつまの合わない部分は生じるものです。日々不正行為と闘っている税務署の調査員にかかると、偽造しても隠し切れないでしょう。

脱税行為の代償は重い

脱税は立派な法律違反です。発覚すれば5年以下の懲役または500万円の罰金が科せられます。脱税とまではいかずとも、不正行為が発覚した場合、手口が悪質と判断されれば、重加算税という重いペナルティも課せられます。さらに、社会的にもイメージダウンは避けられず、仕事の減少から売上の減少など、会社存続の危機に見舞われる可能性もあるでしょう。想像以上のペナルティを食らうことになるリスクを考えれば、不正な脱税行為は絶対しないのがベストです。

法人税を払いたくない中小企業の正しい対処法

罰金や罪に問われるリスクは避けたいところですが、工夫をすることで法人税を節税できる場合があります。いくつかの対処法をご紹介しますので、見直しや導入が図れるか検討してみてはいかがでしょうか。

役員報酬を見直す

経営者としては見落としやすい部分かもしれませんが、納税額に影響を与えるもののひとつに役員報酬があります。会社の経営状況に対し、役員報酬の額が大きい場合は、見直すことで節税できる可能性があります。

ただし、役員報酬が経費に認められなければ税額が高くなる場合もあるので注意が必要です。役員報酬が経費として認められるかどうかは、定額同額給与と事前確定届出給与という基準によって判断されます。定期同額給与とは、毎月決まった時期に同じ額の役員報酬を支給する場合、経費として認められるという仕組みです。一方、事前確定届出給与は、期限までに役員報酬を「誰に、いつ、どれだけ支払うか」を税務署に対して事前に知らせる取り決めをいいます。

適正な役員報酬の金額については、一概にいくらがいいということはありません。会社の状況によって金額が変動することもあるでしょう。報酬の金額や、どちらの基準をもとに支給するかについては、顧問税理士等と相談し決めるのがおすすめです。

減価償却で節税する

節税方法として、減価償却費を活用するのもひとつです。通常、減価償却費は法定耐用年数に応じて経費化し、数年に分けて経費計上します。しかし、中古車であれば経過年数によっては1~2年で全額経費化することもできるため、節税目的で社用車を購入する手段はよく用いられます。社用車が固定資産として残ることもメリットとなるでしょう。中古車以外に、資産価値が高い不動産を購入するケースもあります。

ただ、車にしろ不動産にしろ、節税効果は見込めるものの、ある程度まとまった現金支出を伴うことは注意が必要です。1,000万円の車を購入し、法人税にあたる2~3割程度は節税できても、1,000万円は使うことになるからです。購入の際は慎重に検討する必要があるでしょう。

経費計上の工夫

経費の水増しは不正行為ですが、経費計上を工夫することで節税につながることもあります。経費計上の工夫について、いくつかの方法を見ていきましょう。

出張旅費規程の作成

出張旅費規程の作成です。出張旅費規程の作成により、規定に則った出張日当を支給すれば、業務で使用するお金として必要経費に計上できます。日当の支給額は法律で明確な定めがないため、同業他社と比較し設定することになりますが、上手く活用すれば最終利益を残しやすくなるでしょう。

ただ、出張旅費規程は全社員が対象であり、支給対象を絞ることができません。一般社員の出張が多い場合は、節税額よりキャッシュアウトが増える可能性もあるので、導入の際は検討が必要です。また、旅費規程に則った日当を支給しなければ、課税対象となります。

不良債権や不良在庫の経費計上

回収の見込みがなくなった不良債権や、購入時に比べ著しく価値が下がった不良在庫は決算の時に経費計上することで節税できる場合があります。ただし、それぞれ経費計上するには、一定の要件を満たす必要があります。また、不良在庫については、単純な生産過多による売れ残りについては適用できません。税務調査で調べられることも多いので注意が必要です。

【不良債権を経費計上する条件】

  • 「会社更生法」や「民事再生法」など、法律の規定に基づいて切り捨てられた金額
  • 相手先が死亡、失踪、行方不明などの場合
  • 相手先との取引が亡くなってから1年以上経過した場合

【不良在庫を経費計上する条件】

  • 災害等で著しく損傷した場合
  • 新製品の発売等によって著しく陳腐化した場合
  • 破損や型崩れ、棚晒し、品質変化により、今後通常の方法によって販売できない場合

固定資産の除却

保有する製造設備のうち、使用しなくなった固定資産を廃棄業者に引き取ってもらう(除却)ことで節税につながることもあります。除却により、固定資産を「除却損」として経費計上することができるからです。

法人税を払わない工夫より「適正な法人税を払う工夫」を

「節税のためにお金を使う」のは本末転倒

会社によっては税額が大きく、法人税を払いたくないと考えることもあるでしょう。法人税の支払いを減らそうとすること自体は問題ありませんが、脱税行為は犯罪ですし、税務署は不正行為を必ず見破ります。払わない工夫をするのではなく、節税対策を取りながら適正な法人税を払う工夫をすることに目を向けてみましょう。

とはいえ、節税したいからといってお金をたくさん使うのも考えものです。例えば中古車を購入して経費化する場合、支出が節税額を上回ってしまえば、本末転倒となるでしょう。

会社にお金を残す節税を目指そう

節税方法には、旅費規程の作成のように現金支出を伴わず、節税効果を生み出す方法もあります。お金を使わずに節税できれば、事業運営や投資にも資金を回すことができ、経営の安定化につながることもあるでしょう。節税方法を誤らないためにも、顧問税理士等とも相談しながら、自社に合った効果的な対処法を探りましょう。

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