会社がある程度成長していくと、さらに会社を大きくしていくためには「投資」が必要になるといわれています。実際、事業規模を拡げ、発展した企業は、自社の将来を見据えて投資を行っていることがほとんどでしょう。
とはいえ、投資にはリスクもあり、むやみやたらな投資は資金繰りの悪化や経営危機のリスクにつながる可能性もあります。
今回は、会社を成長させていく上で、適切な投資を行うための基本的な考え方やポイント、注意点をご紹介します。
会社の成長にどんな投資が必要?
会社が成長のために行える投資は、主に以下の4つに分類することができます。
- 設備投資による効率化
- 人材投資による体制強化
- 売上拡大のための先行投資
- 不動産投資や株式投資
設備投資による効率化
既存事業の効率化を図るため、設備投資をすることは会社の成長につながる投資戦略のひとつです。設備投資のよくある例としては、作業効率を上げる目的で、新しいパソコンやシステムを導入するケースがあげられます。
設備の使用期限・耐用年数を意識した資金計画が重要に
ただし、投資する設備には、たいていの場合使用期限があります。例えば使用期間10年の設備を購入するなら、10年後には再び設備投資が必要になるでしょう。最悪、期限内に設備が壊れたら、修理や再購入も必要です。したがって、設備投資を行う際は、いずれ訪れる修理や再購入に向け、資金計画を立ててお金を貯めていくことも大切です。
人材投資による体制強化
人材に対する投資も、会社の成長に効果的な場合があります。例えば製造業の場合、大口受注や、商品の売れ行きがいいなどの理由で、製造に関わる人員が不足することがあります。足りない人手を補うため、新しい人材の雇用を検討するのであれば、人材投資のひとつの形といえるでしょう。
過剰人員は大きなリスク。ビジネス状況の見極めが投資成功のカギ
人材投資をする場合に注意したいのは、過剰人員となるリスクがあることです。先ほどの製造業の例でいえば、大口受注等で人員を増やしても、受注が減れば人件費だけがかかり、投資したお金が無駄になる可能性もあるでしょう。一旦人材を雇用すれば、人件費の支払いは続きます。
安易に人材投資をするのは避け、必要な人員数については慎重に検討しましょう。人材投資を進める際は、人員不足が一時的なものなのか、恒常的に増員が必要なのか、現状のビジネスの状況をよく見極めることが重要です。
売上拡大のための先行投資
会社の成長には、売上を増やすことも必要不可欠です。とはいえ、売上拡大のために、新しい事業や開発を始めるにしても、広告を打ったり、人材や設備を整えたりなど、ある程度の先行投資も必要になるでしょう。
先行投資は会社の将来的な成長への「種まき」
もちろん、新事業や開発がうまくいかない可能性はあります。ですが、会社が将来的に成長を遂げるため、種まきの意味合いで先行投資を行うことは、企業にとって有意義であると考えられます。先行投資が成功し、会社が利益を上げられれば、新たな投資への金銭的余裕も生まれ、さらなる事業拡大にもつながるはずです。
不動産投資や株式投資
会社が行う投資には、会社のお金を事業以外で直接収益に替えていく方法もあります。例えば不動産投資や株式投資であれば、安い価格のときに購入し、売却時に高値で売ることによる売買差益で利益を生み出すことが可能です。ほかにも、保有している固定資産で、購入時より高値がついているものがあれば売却し、売却益出す方法もあるでしょう。
時価の高低が会社の損益に直結する
不動産や株式投資は、一時的に時価が下がっているときに購入できれば、投資として成功する可能性がある方法です。当然ながら、時価が高い時に購入すると損をすることになるので注意が必要ですが、会社の成長につなげる方法として選択肢に入れるのもひとつです。
会社が成長投資を行う意義
ビジネス環境は社会にあわせて変化する
ビジネスを取り巻く環境は、社会状況によって常に変化していくものです。変化に負けず、会社として生き残っていくためにも、将来に向けた投資は意義があるものとなるでしょう。
いまある売上が10年後も続くとは限らない
どんなに経営が順調でも、今ある会社の売上が10年後も続くとは限りません。中小企業の場合、会社を設立して10年後も存続する会社は1割程度という説もあります。
また、新型コロナウィルスの感染拡大で社会が大きく動いたように、予期せぬ事態に巻き込まれ、経営に影響が及ぶ可能性もあるでしょう。経営者として、今の状況はいつか変わるかもしれないという意識を持っておくほうがいいのではないでしょうか。
将来への投資を怠ると、会社はいつかジリ貧に
資金繰りが自転車操業の会社の場合、現状を乗り切ることに精一杯で、投資を行う余裕がないことも多いでしょう。ですが、未来への投資を怠れば、会社もジリ貧になるかもしれません。会社が生き残るためにも、会社の将来に向けた投資を考えることは大切です。
投資を通じて環境変化に対応できる経営体質を作る
会社が成長投資を行うことは、経営体質の改善効果も期待できます。もし、現状は資金繰りの維持が目標であれば、投資まで見据えた目標を設定するよう意識してみてはいかがでしょうか。そうすれば、目標を達成したときに実際に利益を投資へ回せるようになり、さらなる投資へと発展させることもできるはずです。
将来を見据え、投資を積み重ねていけば、会社の成長だけでなく、環境変化にも対応できる経営体質づくりにもつながっていくでしょう。
会社の成長を図る投資を行う際の注意点
投資の前に十分な資金集めを
会社の成長を目的とした投資を行うときに意識したいのは、始める前に具体的な投資金額を決め、必要な資金を集めることです。資金集めの目安は半分程度といわれています。投資金額のすべてを自己資金で賄えればベストですが、全額を準備するのは大変なことだからです。
さらに、銀行融資に頼るにしても、投資金額の全額を融資で準備するのは、実際のところ難しいです。必要な投資金額のうち、半分を自己資金で賄えるよう計画を立て、用意できれば、銀行融資の審査も通りやすくなるでしょう。
事前リサーチで投資成功へ
投資では、事前準備やリサーチが成功を左右することが多いです。そもそも投資は、成功することもあれば、失敗することもあるものです。会社で投資を行う場合も、うまくいって会社が成長する可能性もあれば、失敗して資金繰りを圧迫したり、借金を抱えたりする可能性もあると考えておくほうがよいでしょう。
できるだけ失敗のリスクを減らすためにも、事前のリサーチは念入りに行いましょう。例えばいくら投資金額が必要か、設備投資をする場合はどのくらいの期間設備を使用できるかどんなリスクやリターンの見込みがあるかなどです。
投資によるリスク・リターンのシミュレーション
投資をする上で重要なリサーチですが、投資によるリスク・リターンについては、リサーチに加えシミュレーションも行いましょう。失敗すれば、資金繰りの悪化など会社にとってマイナスになる可能性が高いからです。シミュレーションの結果、儲かる可能性が高いと判断できれば投資する価値があるでしょう。一方、投資額以上にリターンが見込めなければ見送ったほうが賢明です。
投資戦略を間違えると会社の成長にとってマイナス
大きな投資は慎重な判断が必要
どんなに会社の成長のためといっても、やみくもに投資を行うのはおすすめできません。特に、大きな投資をする際は、慎重な判断が必要になるでしょう。
投資額が大きければ大きいほど、ハイリターンを期待することも多くなります。ですが、投資は宝くじを買うのと違って、高いリターンが期待できると見込み、戦略を立てて行うものです。投資内容について、十分な検証や予測をせず、「何となく儲かりそう」という感情だけで動くと、会社に大きな損害を与える危険があるでしょう。投資額以上にリターンを得られるのか、会社の成長につながる投資なのか、理性的に判断することが大切です。
資金回収に時間がかかる投資は避ける
資金回収するまで時間がかかる投資も、その間会社のほかの投資活動が停滞するのであれば、実行を避けたほうが無難です。資金回収の期限は、回収に2年以上かかるかどうかを目安にするのが一般的です。例えば設備投資をしても、投資した金額が数年経っても取り戻せず、会社の利益拡大にもつながらない予測であれば、見送るほうがいいかもしれません。
会社の成長に投資は必要不可欠
リスクとリターンとを把握して戦略的な投資を
会社が成長し、経営を続けていくには、将来に対する投資が必要です。ただ、どんな投資を行うにしても、リターンだけでなくリスクがつきものです。ある程度資金が必要になる以上、戦略を誤れば会社にとって大きな損失となるでしょう。最悪の場合、経営危機に陥るリスクもあります。リスクを避け、適切な投資を行うためにも、しっかりとした投資基準や、シミュレーションを行うことが大切になるでしょう。