無担保無保証で受けられる創業融資制度まとめ

無担保無保証で受けられる創業融資制度まとめ資金繰り・資金調達
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一般的に融資は担保や保証人が必要ですが、創業融資の中には無担保・無保証で借入できるケースもあります。ビジネスが軌道に乗るまでは、資金繰りがスムーズにいかないこともありますし、事業資金の借入も難しいことが多いでしょう。そんなとき創業融資は、起業したばかりの会社にとって役立つはずです。今回は無担保・無保証で借り入れができる融資制度についてご紹介します。

無担保無保証で創業融資を受けられる制度

無担保・無保証の創業融資には、日本政策金融公庫が行う「新創業融資制度」や「中小企業経営力強化資金」があります。どちらも無担保・無保証なので、担保を必要とせず、万が一倒産しても社長個人が返済する必要がない融資制度です。

新創業融資制度

新創業融資制度の対象は新たに事業を始める、または税務申告を2期終えていない会社・個人事業者です。融資限度額は3,000万円(うち運転資金1,500万円)ですが、実質的には支店決裁権である1,000万円が上限額といわれています。新創業融資制度の場合、1,000万円以上の融資審査は本社決裁となりますが、創業2年以内で本社決裁に進むケースはほとんどないからです。

新創業融資制度の条件には、自己資金要件もあり、創業資金総額の10分の1以上を用意する必要があります。ただし自己資金要件は、6年以上の業種経験があれば形式上免除されます。返済期間は設備資金の場合20年以内、運転資金では7年以内となっています。なお、新創業融資制度は単独の融資制度ではなく、「新規開業資金」などを申しこむ際の特例措置として利用できます。

中小企業経営力強化資金

中小企業経営力強化資金は創業する事業者以外に、既存事業者も利用できる融資制度です。形式上は自己資金要件がないため、自己資金があまりない場合でも資金調達できる可能性があります。

中小企業経営力強化資金の融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)ですが、無担保・無保証の利用は2,000万円までとなります。返済期間については、設備資金の場合20年以内、運転資金は7年以内です。

日本政策金融公庫からの融資実績は他金融期間の評価アップにもつながる

日本政策金融公庫の融資審査は2~3週間、申し込みから融資まで1か月~1カ月半とされ、融資まで2~3か月かかる他の金融機関に比べ対応がスピーディなのもメリットです。さらに、一度公庫の融資に通り、返済を完了すれば他の金融機関からの評価も上がるといわれています。公庫での借入・返済実績をつくることは、新たな借入を検討する際に、プラスに働く可能性もあるでしょう。

新創業融資制度と中小企業経営力強化資金との違い

新創業融資制度と中小企業経営力強化資金とは、金利面や条件面で違いがあります。違いをおさえた上で、申し込む際はどちらが自社にとってメリットがあるか検討しましょう。

創業から2期以内かどうかが基本的な目安

新創業融資制度と中小企業経営力強化資金とでは、申し込み条件の面で違いがあります。
新創業融資制度の利用条件にあたる創業から2期以内が基本的な目安となり、これから創業~2期以内の会社なら新創業融資制度、2期以上経営を続けている会社であれば中小企業経営力強化資金に申し込むことになります。

低金利で上限額が高い中小企業経営力強化資金

新創業融資制度や中小企業経営力強化資金は、どちらも金利2%程度となることが多いですが、中小企業経営力強化資金のほうが低金利の傾向があります。タイミングによっては1%台になる可能性もあるでしょう。
さらに、中小企業経営力強化資金は新創業融資制度に比べ、借入限度額が高いのも特徴です。自己資金要件がないのもメリットといえそうです。

中小企業経営力強化資金は認定支援機関の指導・助言が必要

新創業融資制度は条件を満たせば、自分自身で申し込みや審査を受けられます。一方、中小企業経営力強化資金の融資を受けるには、経営革新等支援機関(認定支援機関)による指導及び助言を受けなければなりません。さらに、事業計画書の策定や定期的な経過報告、見直し等の経営指導も条件となります。

日本政策金融公庫の無担保無保証融資を利用する場合の注意点

投資や生活資金目的の融資は受けられない

無担保・無保証の創業融資は、事業目的の設備資金や運転資金を対象としています。資金使途が投資資金や生活資金の場合は融資の対象外となりますので注意しましょう。

正確な利率は都度日本政策金融公庫で確認を

新創業融資制度や中小企業経営力強化資金の金利は2%前後になることが多いですが、金利はその時の経済情勢によって変動します。正確な利率は都度日本政策金融公庫のサイトで確認しましょう。

無担保・無保証の創業融資を受けるポイント

無担保・無保証の創業融資は会社や個人に対して、財産的な担保を必要としない融資制度です。とはいえ、返済能力がない事業主に融資をするわけにはいきません。そこで、担保や保証がないかわりに、実現可能な事業計画を立てているか、経営能力や自己資金があるかどうかを基準に審査・判断されることになります。創業融資の審査を通りやすくするためにも、ポイントを押さえて準備を進めましょう。

自己資金を準備する

融資の審査担当者は、返済能力の高さを判断する基準のひとつに、自己資金の有無をチェックしています。自己資金とは自分が所有する返済不要のお金のことをいい、貯蓄能力や起業に対する覚悟の指標とされています。自己資金が多いほど、借入金の返済確率も高まると考えられ、審査でも有利に働くことが多いです。

自己資金の目安は100万円程度が一般的といわれ、100万円より不足している場合は、準備不足と評される可能性もあります。自己資金が足りない場合は、親類の贈与などの工夫で自己資金を準備するのもひとつです。ただし、借入で自己資金を増やすのは避けたほうが無難です。通帳のチェックで見つかる可能性が高いでしょう。

信用情報の確認

創業融資の審査では、信用情報も確認されます。スムーズな審査通過にはブラックリストに載っていることは当然のことながら、延滞記録がある場合も不利になります。できればクレジットカードローンの残高も完済するほうがよいでしょう。完済が難しい場合は、使用目的や返済計画をきちんと説明できるようにしておくことが大切です。なお、信用情報はCIC(指定信用情報機関)で確認可能です。

CIC

ちなみに、一般的に異動情報が消滅するまでの期間は、3回以上延滞した場合が2年間、61日以上の遅延や債務整理、強制解約などの場合は5年間、自己破産は10年間とされています。

税金や公共料金の滞納をなくす

創業融資は税金を原資とするため、税金の未納がある場合融資を受けるのは困難です。税金の滞納についても、完済しておきましょう。税金以外に水道光熱費や家賃、電話代金等の滞納も審査では不利になります。支払い能力を疑われないようにするためにも、未納分をなくすことが大切です。

説得力ある創業計画書をつくる

事業計画が実現可能であることを示すには、説得力ある創業計画書をつくることも重要です。説得力ある創業計画書を作るには、顧客層のターゲットを絞り、市場調査や競合分析を行い、明確な差別化戦略を組み立てることが必要です。売上予測や返済計画、営業・販売促進方法についても、具体的な数字や方法を示しましょう。

また、創業計画書ではこれから始める事業について、どれだけの事業経験があるかもチェックされます。事業経験の実績が豊富であるほど審査に有利とされるため、勤務経験の中で起業する事業に関わるスキル・実績は十分にアピールしましょう。例えば営業実績や社内表彰など数字で示せる実績は、強みとして活かせるはずです。

資金繰り計画書も添付する

創業計画書を提出する際は、資金繰り計画書も添付しましょう。創業計画書では資金を何に使うかを説明しますが、資金繰り計画書でどうやって返済するかを示すことができます。資金使途と返済原資を明確にすることで、融資審査の担当者への心証をよくすることにもつながるでしょう。

借入の目的は明確に

借入の目的については明確にし、誤解を受けないよう気を付けましょう。創業融資では、融資で借り入れたお金を個人の借金返済や別会社、既存会社の赤字補填などに使おうとするケースが多く、審査担当者も警戒しているからです。

審査の段階で、資金使途が創業以外の目的に使用されるかどうかを判断することは難しいため、少しでも怪しまれると審査が通らない可能性があります。本当に起業する事業に資金が必要だと理解してもらうためにも、創業計画で誤解を生じる点がないよう、資料間の整合性をとりましょう。また、実際の面接では、熱意を伝えるだけでなく、服装や言葉遣いなどマナーを守り、質問には明確で丁寧な回答を心がけましょう。

外部専門家の力を借りるのもひとつ

無担保・無保証の創業融資を受ける際は、顧問税理士や会計事務所など外部専門家の力を借りるのも有効な手段です。創業計画書づくりに的確なアドバイスが得られる場合や、銀行勤務経験がある職員がいる事務所であれば、融資審査で質問されやすいポイントを絞れることもあるからです。認定支援機関の助言、指導が必要な中小企業経営力強化資金の場合は、融資実績がある認定支援機関を選ぶことで公庫の心証がよくなる可能性もあるでしょう。

目的に合わせて無担保・無保証の創業融資の活用を

融資にも無担保・無保証のものがあり、創業融資の場合新創業融資制度や中小企業経営力強化資金が活用できます。

新創業融資制度と中小企業経営力強化資金とは、金利面や条件で異なる点もありますが、それぞれ日本政策金融公庫の融資制度です。申し込みから融資までスピーディな対応が期待でき、活用して返済をすれば、その後ほかの金融機関で融資審査を受ける際もプラスに働く可能性があるでしょう。

どちらの制度を利用するかは、自社の状況や申し込み条件を考慮し、判断することが大切です。場合によっては外部専門家の力を借りるなどして、申し込みを検討してみてはいかがでしょうか。

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