コインランドリー投資の特徴
まず、コインランドリー投資とはどのようなものなのでしょうか。コインランドリー投資は個人や企業が行う投資の一つで、継続的に需要があり、あまり景気に左右されず、無人店舗であるため労務管理の必要もない、などということから注目を集めています。またサラリーマンが副業として始めるようなケースも最近では増えています。
コインランドリー投資の大きな特徴は
- 低額の初期投資費用
- 高利回りへの期待
- 節税効果
にあります。それでは詳しく解説していきます。
不動産投資に比べると少額な初期費用
コインランドリー投資は、不動産投資に比べると少額の初期投資で始めることができます。不動産投資であれば5,000万円程度から行われるようなものが多いですが、コインランドリー投資はおおよそ2,000万円~の初期投資で行うことができます。
修繕費も少額で予想がつきやすい
また修繕に関しても、不動産投資などの場合には入居者が出入りするたびに大きな修繕費が発生しますが、コインランドリーを経営する上での修繕費は主に乾燥機の内側にたまるホコリやゴミなどを原因とする「洗濯乾燥機の故障」に対する修繕がメインとなり、少額の修繕費で済むケースが多くなります。
これらの修繕も人が居住しているわけではないので劣化に関してもある程度周期予想のつきやすいものとなります。
不動産投資 | コインランドリー投資 | |
---|---|---|
必要な初期費用 | 5,000万円~ | 2,000万円~ |
修繕費用 |
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コインランドリーの利回り
コインランドリーの利回りは、立地などの条件よっては不動産投資よりも高い利回りを期待することができます。不動産投資の利回りではなかなか10%を超えるようなケースを目にすることはありませんが、コインランドリーの場合には10%を上回るケースもあります。
もちろんコインランドリー経営をされている方の中には赤字を計上し、経営に苦しんでいる方もいます。立地やその月の天候、併設施設でのイベントなど様々な要因が収益の増減には含まれているため、一概に全てコインランドリーの利回りが高いとは言い切れませんが、経営方法によっては「高利回り」を期待することもできます。
コインランドリー投資で注目される節税効果
コインランドリー投資で最も注目されているのは「節税」に関する部分です。
その他の不動産投資に比べ、今のところ非常に大きな税制面での優遇を受けることができます。
具体的には、「中小企業経営強化税制」を活用して即時償却を行うことで、支出をしたその年度に大きな経費を作ることができます。
大きな支出を一度に経費計上するのは難しい
一般的に企業や個人が大きな支出をしたとしてもその全額を一度に経費計上することは難しく、それらの支出は一度「資産」として計上し、そこから減価償却費として耐用年数で按分したものを経費としていきます。
例えば5,000万円の支出があったとしても丸々5,000万円をその期の経費とすることはできず、耐用年数が20年である場合、250万円を減価償却費として20年間で按分し経費計上します。※定額法で減価償却を行った場合
中小企業経営強化税制により節税が可能に
ここでいう中小企業経営強化税制は、中小企業が「経営力向上計画」」を提出し、認定を受けることで即時償却や各種金融支援を受けることができる制度です。認定を受けた中小企業が設備投資を行い、企業力の強化や生産性を向上させることを目的としています。
中小企業経営強化税制では、
- 生産性向上設備(A類型)
- 収益力強化設備(B類型)
- デジタル化設備(C類型)
が対象となります。
コインランドリーやコイン式洗濯乾燥機も事業計画書などを作成し、こちらのB類型で収益力強化設備として申請することができます。
中小企業経営強化法を受けるための条件
ではこの中小企業経営強化法を受けるためにはどのような条件をクリアしていなければならないのでしょうか。
中小企業経営強化法を受けられる期間
この中小企業経営強化税制を活用するためには、平成29年4月1日から令和3年3月31日までの期間内に新品の特定経営力向上設備等を取得または制作もしくは建設して事業の用に供する必要があります。
青色申告書を提出する中小企業
この中小企業経営強化法を受けることのできる企業は、青色申告書を提出する中小企業社等が該当し、規模としては
- 資本金もしくは出資金が1億円以下の法人
- 資本金もしくは出資金を有しない法人のうち常時使用者数が1,000人以下の法人または、常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
- 協同組合 等
が対象となっています。
また申請には中小企業等経営強化法の認定を受けた「経営力向上計画」というものが必要になります。
即時償却か税額控除の選択適用
中小企業経営強化税制では「即時償却」あるいは「税額控除」のどちらかを選択して適用することができます。設備投資を複数行った場合は、設備単位でいずれかを使い分けることも可能です。
即時償却とは
即時償却とは、取得に要した金額を全額、その取得した年度で減価償却ができるというものです。この即時償却を行うことにより、その年度に大きな経費を作ることができます。
ただし、その後減価償却としての経費計上はされないため、コインランドリー経営により収益をその後発生させた場合には、減価償却費として計上する経費が残っていませんので、収益が発生したその分の税金が発生する形になります。
即時償却はあくまでも、将来の経費を前もって計上するというものであるため、トータルでの経費合計額は変わりません。
税額控除とは
税額控除は、「節税投資した金額のうち、10%の法人税を減額できる」というものです。
通常の減価償却を行う他、一定率の税額控除が認められています。ただし、その年の所得税額の20%までと上限が設定されています。
その事業年度において税額控除限度額の全部を控除しきれなかった場合には、その控除しきれなかった金額について1年間の繰越が認められています。
退職金を絡めた節税対策
このコインランドリー投資を活用した節税対策は、退職金を絡めることでより節税効果を発揮します。
ある程度年数が経過すると、「帳簿上」の資産価値が少なくなってきます。その際に退職金代わりに個人に対して現物支給することで所得税をかけずに資産を個人へ移行することもできるのです。
相続での節税効果
これまで法人税、所得税の対策としてご紹介してきましたが、個人が持っている資産を現金ではなくコインランドリーという資産に変換しておくことで、相続税を低く抑えるための小規模宅地等の特例を使うことができます。
この小規模宅地等の特例を使えば、相続税計算を行うための基準となる資産の評価額を50%から80%減少させることができます。
固定資産税が軽減される特例も
個人や企業が支払う税金にはその他に「固定資産税(償却資産税)」というものがあります。この固定資産税に関しても特例を受けることで減額、または免除される場合があります。
経営力向上設備に係る課税標準の特例について
経営力向上設備に係る課税標準の特例は、平成31(2019)年3月31日までに取得した資産が対象となり、課税されるための標準額を2分の1にすることができるという特例です。
機械及び装置に関しては、中小事業者等が平成28年7月1日以降に取得した、経営力向上計画に記載のある経営力向上設備に該当する機械及び装置について、取得から3年間課税標準額が2分の1になり、建物付属設備・工具、器具及び備品に関しては中小事業者等が平成29年4月1日以降に取得した、経営力向上計画に記載のある経営力向上設備に該当する建物附属設備・工具、器具及び備品について、取得から3年間課税標準額が2分の1になります。
これらの特例を受けるためには償却資産申告書とともに以下の書類を提出する必要があります。
- 固定資産税・都市計画税の課税標準の特例に係る届出書
- 課税標準の特例(経営力向上設備)に係る届出書提出用チェックシート
- 経営力向上計画に係る認定申請書(写)
- 経営力向上計画認定書(写)
- 工業会等による生産性向上に係る要件を満たすことの証明書(写)
生産性向上特別措置法に係る課税標準の特例について
東京都23区内では、各特別区から認定を受けた先端設備等導入計画に基づき取得した設備について、一定の要件を満たす場合、固定資産税を3年間ゼロとする特例措置を受けることができます。
この特例は、平成30年6月6日から令和3年3月31日までの間に、特別区から認定を受けた先端設備等導入計画に基づき取得をした一定の設備が対象となります。
対象設備の要件としては以下の3つがあります。
- 要件1:生産性向上に資するものの指標が旧モデルと比較して年平均1%以上向上しているもの
- 要件2:生産、販売活動等に直接使用する設備であること
- 要件3:中古資産でないこと
コインランドリー投資における節税を行う際には、法人税や相続税だけでなく、これらの固定資産税も節税できる場合がありますので、各自治体での特例を確認しておきましょう。
コインランドリー経営の注意点
コインランドリー経営をする上で、いくつか注意しなければならない点もあります。高利回りや節税効果などのメリットだけではなく注意点もあるため、事前に確認しておきましょう。
天候に左右される経営
まず、コインランドリー経営は「天候」に大きく左右される業種です。雨の日には収益が上がり、晴れの日には収益が下がる形態となっています。もし晴れの日が続くのであればその月の収入も減少するため、赤字が発生する可能性もあります。その他の不動産投資とは異なり、経営要因に「天候」も含まれているということを覚えておきましょう。
販売業者から紹介される利回りシミュレーションに関しても、不動産投資に比べると比較するための物件が少ないため、予想通りの利回りを本当に得られるかどうか慎重に判断しましょう。
クレームやトラブル対応
コインランドリー経営は基本的に無人店舗で経営することがほとんどです。機械の故障などが起こった場合に連絡が来るというようなスタイルになっています。この連絡先がオーナーになるような場合には日々のクレームやトラブルに対する対応もしなければなりません。
そのようなクレームが直接オーナーに来ないように、利用者とオーナーとの間にコールセンターや専門の業者を入れておくこともできます。このようなクレームやトラブルへの対応もどのような形態を取っておくのが良いか事前に決めておきましょう。
節税における注意点
先ほどご紹介した「即時償却」に関しては、長期に渡って計上する費用を一度にまとめて計上しているだけなので、長い目で見た納税額は変わりません。
一方、「税額控除」を選択した場合、通常の減価償却に加えて税額控除が認められます。つまり税額控除の分だけ得をすることになるのです。ただし、「投資資金の回収」という側面から考えた場合には即時償却の方が有利になりますので、節税だけでなく投資額の回収という側面も考慮する必要があります。
期限付きである
この即時償却や税額控除については期限付きです。現時点でこの特例を利用できるのは令和3年3月31日までとなります。今後延長などの措置がある場合もありますが、期限が過ぎてからの購入では特例を受けられない場合もありますので、期限間際での購入を考えている場合には注意しましょう。
コインランドリー投資を成功させるためのヒント
ではどのようにしたらコインランドリー投資を成功させることができるのでしょうか。コインランドリー成功の要因は大きく、収入を増やすことと支出を減らすことに分けられます。収入を増やすための要因としては「立地」が重要な要因となり、支出を減らすための要因は「節税」が鍵となります。
コインランドリー成功要因は立地
コインランドリー経営やサービスなどで差別化させることは難しいため、先ほどの「天候」という要素と、あとは「立地」に大きく左右されます。商業施設などと併設されていることや、駐車場の有無によっても利回りは異なってきます。コインランドリー投資の成功要因はほとんど立地によって左右されますので、どこでコインランドリー経営を行うのかは慎重に判断しましょう。
長期的な税額シミュレーション
支出の中でも大きな割合を占める「税金」をいかに節税できるかがコインランドリー投資成功の鍵となります。特例を使い節税することはもちろんですが、即時償却を行った方が良いのか、税額控除を行った方が良いのか長期的な税額シミュレーションを立てる必要があります。どちらの方が税金面で有利になるのか、そしてどのタイミングで資金回収できるのかも考慮しましょう。
まとめ
今回の記事ではコインランドリー経営に投資して即時償却で節税する方法や注意点についてご紹介してきました。コインランドリー投資では中小企業経営強化税制を使い税制面での優遇を受けることができます。ただし、この特例は期限つきのものですので注意しましょう。また企業によって即時償却を利用した方が良いのか税額控除を利用した方が良いのかは異なるため、コインランドリー投資による節税をお考えの場合、専門の税理士か節税コンサルティングサービスをご利用ください。