海外出張旅費規程で宿泊費や日当を支給して節税する方法

海外出張旅費規程で宿泊費や日当を支給して節税する方法節税対策ノウハウ
この記事は約8分で読めます。

海外出張がある会社の節税対策には、海外出張旅費規程を作成し、宿泊費や日当を定める方法があります。
国内用の出張旅費規程を作成する会社は多くありますが、国内用とは別に海外出張用を作成することで、さらに節税効果を見込めるでしょう。
今回は海外出張旅費規程で宿泊費や日当を支給することで、どのようなメリットがあるのか、作成時のポイントなどについてご紹介します。

海外出張旅費規程を設定して宿泊費や日当で節税

海外出張の機会がある会社では、出張費用を実費精算するより、海外出張旅費規程を定めるほうが、節税効果を期待できます。出張旅費規程で宿泊費や日当などを定めれば、全額経費計上できるようになり、法人税の節税や社会保険料の軽減につながるからです。

出張した本人にとっても、支給される日当等は非課税対象になります。さらに、出張旅費規程により精算処理が簡素化できるようになり、経理担当者の事務処理を効率化することも可能です。

国内用と別に海外出張用の規定を準備する

海外出張に対する宿泊費や日当を出すには、国内用とは別に、海外出張旅費規程の作成が必要です。国内用の出張旅費規程を、海外出張に当てはめることはできません。すでに国内用の出張旅費規程を作成している場合も、海外出張用の旅費規程を改めて用意するようにしましょう。

海外出張旅費規程作成のポイント

海外出張旅費規程は、国内用の出張旅費規程と同じく、交通費や宿泊費、日当などを定めます。それぞれ、作成時のポイントを押さえておきましょう。

海外出張の交通費は実費精算が一般的

国内出張では交通費を定額支給することが多いですが、海外出張の場合は実費精算とするのが一般的です。海外への飛行機代は定額支給すると、実費との差が出やすいからです。
なお、役員と社員とで飛行機の利用クラスを分けてもかまいません。例えば役員はビジネスクラス、その他社員はエコノミークラスとするなどです。

宿泊費、日当は定額で支給する

海外出張の宿泊費や日当は、定額支給を定めるのが一般的です。例えば海外での宿泊費は15,000円と定め、一律で決まった額を会社から支給するようにします。

宿泊費は機内泊分を除いて支給

宿泊費で気を付けたいのは、機内泊分は除外して考えることです。機内泊はホテル代を支払って宿泊するわけではないので、会社から宿泊費として定額支給することはできません。
海外出張は、船で行く場合もあるかもしれませんが、飛行機で移動することがほとんどと考えられます。出張先が遠方で、機内泊を伴う場合は、宿泊代から機内泊分を除外して支給するようにしましょう。

自分以外が負担したホテル代も支給対象外

海外出張では、機内泊分以外に、誰かほかの人にホテル代を支払ってもらった場合も、宿泊費の支給はできません。海外出張の宿泊費は、自分が実際にお金を支払い、宿泊した場合だけ定額支給の対象となります。

日当の対象期間は出張初日から帰国日まで

日当の定額支給については、出張初日から帰国日までを対象期間にしましょう。
例えば、10月1日に日本を出発し、10月5日に帰国する場合は、5日分の日当を支給することになります。

支給金額は出張先のエリアで区分する

宿泊費や日当を定額支給する際は、海外出張先の国やエリアによって、支給金額を分けるとよいでしょう。出張先によって距離や物価は異なるためです。

例えば、アジアやヨーロッパ、アメリカ圏の3つに分けるなどした場合、アメリカやヨーロッパ圏への出張は、アジア圏への出張より、宿泊費や日当を多少高めに設定しても問題ありません。一般的には1.5~2倍ほど高めに設定することが多いようです。

ただし、あまり高く設定しすぎると、税務調査で理由を追及される可能性が高いです。
たとえ質問されても、きちんとした理由を説明できるような金額に設定することが大切です。

海外出張支度金は適正な額を設定する

海外出張に際し、アイマスクやエアークッション、耳栓、世界対応のコンセントなどを購入することはよくあるでしょう。
海外出張旅費規程では、海外出張にかかる準備費用を「支度金」として、会社から別途支給することが認められています。
支度金は国内用の出張旅費規程にはない項目なので、海外出張旅費規程の特徴のひとつといえます。

支度金の項目を設けるか否かは各企業に任されていますが、海外出張には何かと準備するものがあることから、別途支給する会社が多いようです。

支度金は高くても10万円以内、税務調査で指摘されない程度の金額に

支度金の金額設定についても、明確な決まりはありません。ただ、税務調査で指摘されない程度の、社会通念上問題ない範囲の金額に設定しましょう。目安としては、高くても10万円以内が妥当とされています。

旅費精算書を作成する

海外出張旅費規程では、旅費精算書も作成しましょう。宿泊費や日当の支給に必要ですし、旅費精算書を提出することで、出張に行ったことの証明にもなります。

海外出張旅費規程の宿泊費・日当の相場

海外出張旅費規程の宿泊費や日当は、それぞれの会社で支給額を決められますが、一般的な相場を知りたい経営者も多いのではないでしょうか。今回は、産労総合研究所が2年ごとに調査している『国内・海外出張旅費に関する調査』から、相場の目安をご紹介します。

海外出張日当の費用相場

北米エリアの日当は平均5,000~7,500円

2017年度の『国内・海外出張旅費に関する調査』では、代表的な北米エリアへの出張の場合、日当の相場は役員が7,500円台、部長クラスは6,000円台、一般社員が5,000円台となっています。データがすべてではないものの、平均5,000~7,500円程度が相場と考えられます。

海外出張日当の平均支給額(円建て企業)
エリア役員(平取締役)部長クラス一般社員
北米7,546円6,189円5,080円
欧州7,608円6,227円5,121円
中国6,927円5,604円4,603円
東南アジア7,026円5,710円4,677円

参考:産労総合研究所「2017年度 国内・海外出張旅費に関する調査【表10:地域別、役職別にみた日当・宿泊料(円建て企業)】」

海外出張宿泊費の費用相場

北米エリアの宿泊費は平均14,000~18,000円

宿泊費の相場は、北米エリアの場合役員が18,000円台、部長クラスで15,000円台、一般社員で14,000円台となっています。エリアによって差があるものの、平均14,000~18,000円程度が相場のようです。

海外出張宿泊費の平均支給額(円建て企業)
エリア役員(平取締役)部長クラス一般社員
北米18,331円15,950円14,170円
欧州18,258円15,947円14,165円
中国16,353円13,780円12,259円
東南アジア16,654円14,404円12,760円

参考:産労総合研究所「2017年度 国内・海外出張旅費に関する調査【表10:地域別、役職別にみた日当・宿泊料(円建て企業)】」

海外出張支度金の費用相場

海外出張支度金は平均80,000円

支度金の相場は、産労総合研究所の2011年の同調査によると、平均支給額が下記の通りとなっています。エリアによって異なるものの、役員の場合80,000円程度が平均といえそうです。
なお、同データでは支度金を支給すると答えた企業が73.3%となっており、多くの企業で支給されていることがうかがえます。

海外出張支度金の平均支給額(円建て企業)
エリア役員(平取締役)課長クラス一般社員
北米85,732円61,265円54,080円
中国75,244円55,245円49,265円
東南アジア14,404円 12,760円

参考:産労総合研究所「2011年度 企業の国内・海外出張旅費調査 【(1)海外出張の支度料」】

海外出張旅費規程作成時の注意点

ビジネス目的である証拠や領収書を残す

海外出張旅費規程を適用するには、業務の一環で出張した証拠を残す必要があります。出張精算書や日程表、航空券、宿泊したホテルの明細やタクシーの領収書など、証拠になるものは保管しておきましょう。出張した場所の簡単なメモや、視察の写真を取っておくことも有効です。

プライベートの旅行や空出張と誤解され、税務調査で否認されるのを防ぐためにも、ビジネス目的だという証拠をきちんと残すことが大切です。

宿泊費は個人の財布から支払う

海外出張の宿泊費は定額支給が一般的なので、ホテル代は個人のお金から支払うようにしましょう。会社のお金から宿泊費を出すことで、実費精算になるのを避けるためです。

長期出張の場合は支給額を調整する

出張の目的によっては、長期の海外出張になる場合もあるでしょう。1週間や10日以上などの長期出張だと、出張日当や宿泊費等が高額になります。支給額が高額になれば、経費化できる金額が大きくなり、節税効果は高まります。ただ、その分税務調査では目をつけられやすくなるのがデメリットです。

対策としては、「一定日数以上の出張の場合は、宿泊費や日当の支給額を減額する」と定め、調整するのが効果的です。例えば「7日以上の海外出張の場合は、日当や宿泊費の支給額を20%減額する」などと設定しておけば、税務調査で質問を受けた際も、説明しやすくなるでしょう。

支度金の支給も条件を設ける

支度金についても、2回目以降は減額にするなど調整が必要です。海外出張の準備にかかる費用に対する支給なので、何度も支給するのは不適切とされるからです。初出張時のみに支給する、あるいは年1回のみ支給するなどの条件を設けるようにしましょう。

海外出張旅費規程は有効な節税対策手段

宿泊費や日当を活用して効果的な節税を

海外出張旅費規程があると、法人税などの節税効果が見込めることから、海外出張がある会社では、作成するだけのメリットがある規定といえます。宿泊費や日当を定額支給することにすれば、事務処理効率も上げられるでしょう。今は海外出張の機会がない会社でも、今後役立つ可能性を考え、今のうちに作成しておくのもひとつです。

ただ、海外出張は宿泊費や日当、交通費等が高額になるケースもあります。税務調査で余計な疑いを持たれないためにも、支給額の設定は条件付きにするなどの注意が必要になるでしょう。ご紹介した相場のデータはあくまで目安ですので、同業他社の支給額も参考にしながら、妥当と思われる支給金額を設定しましょう。

タイトルとURLをコピーしました