合同会社が役員報酬で節税するためには

合同会社が役員報酬で節税するためには法人化で節税する
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合同会社が役員報酬で節税するためにはどのような手順で行えばよいのでしょうか?
近年増加し注目を集めている合同会社。今回の記事では特に合同会社での役員報酬を使った節税方法や注意しなければならない点についてご紹介します。

合同会社と株式会社の違い

まず合同会社と株式会社では何が違うのでしょうか。
設立手続きが簡便という背景もあり、近年では合同会社を設立するケースも多く見られるようになってきました。またGoogle、Apple、Amazonなどの大手法人も株式会社から合同会社へ移行してきています。

合同会社が近年注目を集め増加している背景は様々ですが、この株式会社から合同会社への移行の背景にはアメリカにある親会社がパススルー課税(法人や組合などには課税せずに構成員に対して課税する制度)という税務上のメリットを享受できるというものがあります。

株式会社とは

まず株式会社とはどういった法人のことを言うのでしょうか。
株式会社は「株式」を発行して広く資金を集め、そのお金を元にものやサービスを提供する会社のことをいいます。
この株式を保有している人のことを株主といい、株主と会社の代表取締役はイコールというわけではありません。
株主が選出した取締役の中から代表取締役が選ばれ、株主はあくまでも間接的に会社の経営に携わっており、直接的な経営は会社の代表取締役が行っています。

株式会社の持ち主はあくまで株主

株式会社では「所有」と「経営」が分離されている状態となっています。
株式会社の所有者はあくまでも株主ですので、株式会社の重要な意思決定は株主総会で行われます。
もちろん中小企業の場合、株主=代表取締役となっているケースや、株主は全て代表取締役とその家族となっているケースも多々あります。このような同族会社の場合、広く株式を発行し資金を集めるわけではないので、株式会社としてのメリットを存分に享受しているとは言えません。

合同会社とは

合同会社は出資者=経営者

一方、合同会社は株式会社と違い株式がなく、出資者=経営者となります。
株式会社と比べ容易に法人を設立することができ、設立にかかる費用も安く済みます。株式会社の場合法人設立にかかる法定費用が約25万円、合同会社の場合には約10万円で済んでしまいます。

法人設立後も

  • 決算公告が不要
  • 役員の任期がない

など、株式会社のように様々な決まりがないということも1つの特徴です。また株式会社の場合の利益分配は株主の出資金の額によって按分されますが、合同会社には株がありませんので利益を自由に分配することができます。

出資者=経営者のため敏速な意思決定が可能

合同会社は出資者自身が経営者なので、重要な意思決定を敏速に行うことも可能となります。
日本にある多くの中小企業は同族会社ですので、株式会社ではなく合同会社としても問題はなさそうですが、融資や取引を開始する際の企業としての信頼という部分ではまだまだ株式会社の方が良い印象を与えています。

合同会社設立のケースは、これまで個人事業主として活動していた方が「税金対策」などの関係で法人成りするような場合が多いようです。
理由としては

  • 一人社長で出資者=経営者であること
  • 株式を広く発行する必要がないこと
  • 設立費用を安く抑えたいこと

などが考えられます。
またそのような背景から現在設立される法人の2割は合同会社であると言われています。

合同会社の役員とは

合同会社は株式会社と違い、取締役や監査役といった役員は存在しません。合同会社で税務上「役員」扱いされるのは

  • 代表社員
  • 業務執行役員

となります。

代表社員とは株式会社でいう代表取締役のことを言います。
業務執行役員は代表社員がいない場合の経営に関する最高責任者となり、定款に特に定めがない限り、経営に関する意思決定には業務執行役員の過半数の同意が必要となります。合同会社の場合、これら役員に対する支払いを「役員報酬」として扱います。
また代表社員に関しては複数人設置することも可能で、事業ごと、地域ごとに代表社員を設置しておくことなどもできます。

代表社員や業務執行役員という肩書がないからといって、役員報酬として扱われないかというとそうではありません。税法上「みなし役員」判断され役員報酬扱いされる場合もありますので注意しましょう。税務署としてはその社員の働き方の実態で役員報酬が適切か、給与としての扱いが適切かを判断します。

役員報酬で節税するための方法

合同会社でも株式会社でも役員報酬が損金(税金計算上の経費)として認められるためには下記の給与に該当していなければなりません。

  • 定期同額給与
  • 事前確定届出給与
  • 利益連動給与

役員報酬の額を変動させることで容易に法人の利益調整ができることから、役員報酬は給与と異なり、損金として参入させるためにこれらの条件が設けられています。それぞれの給与には以下に特徴があります。

定期同額給与

毎月同じ額を給与として損金計上するもの。

事前確定届出給与

事前に税務署に提出した金額のみ損金計上するもの。

利益連動給与

利益の状況や株式の市場価格の状況を示す客観的な指標によって決められた金額を損金計上できるもの。

決められた3つの給与以外の役員報酬は損金として認められない

基本的にこれらの給与以外の役員報酬は損金として認められません。もちろんこれらの方法で支給せずに会社としては経費扱いすることは可能ですが、税務署としてはその支払い部分に関しては経費として認めてくれません。役員報酬として税務上経費とするためには上記の定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与のいずれかでなければなりません。

合同会社で役員報酬を経費とする際の必要書類

役員報酬を経費とするためにはどういった書類を準備しなければならないのでしょうか。役員報酬を経費として支給するためには必要な手順を踏み、必要書類も準備しておかなければなりません。

通常、株式会社が定期同額給与を支給する際、「株主総会」を開催し、その証拠として株主総会の議事録を作成しておく必要があります。

合同会社はその性質上、本来総会の開催や議事録作成の義務はありません。しかし税法上役員報酬を経費とするためには、「同意書」などの記録を作成して役員報酬の決定や変更の証拠を残しておくことが必要となります。

合同会社で役員報酬を決定、変更するためにはまず臨時社員総会を開催し、同意書(または決定書)を記録として作成しておきます。合同会社だからといって議事録などの作成義務を怠らないように注意しましょう。

同意書の記載事項

同意書には以下の事柄を記載します。

  • 決定した日付
  • 役員報酬決定(変更)対象者の氏名
  • 報酬決定額と開始時期
  • 出席者の署名捺印(代表者は会社印)

これらを記載した同意書は税務署に特に提出する必要はありませんが、税務調査などで税務署からの提示を求められた際には必要となる書類となるため法人にて大切に保管しておく必要があります。

合同会社の役員報酬の変更

合同会社の役員報酬は変更できる時期が決まっている

合同会社の役員報酬の変更時期は、定期同額給与の場合事業開始から3ヶ月以内、事前確定届出給与の場合には、総会決定の日から1ヶ月と決算から4ヶ月のいずれか早い方までとされています。
利益連動給与に関して同族会社は対象とされていないため多くの中小企業は使用することができません。

役員報酬を使い節税対策をする場合、期の前半で報酬額を決定しなければならないため、決算直前の節税対策として役員報酬を活用することはあまり有効ではありません。
業種や業界によってはなかなか期の前半で決算までの利益予測することが難しいこともあり、そのような業種では役員報酬を活用して節税対策することはできません。

合同会社の役員報酬を変更する際の提出書類

では合同会社が役員報酬を変更するという場合にはどこに、何を提出しなければならないのでしょうか。
まず定期同額給与に関しては何も提出する必要はなく、先ほどの同意書を保存することで良いとされています。税務署などへの提出書類は特にありません。

しかし、事前確定届出給与に関しては「事前確定届出給与に関する届出書」を税務署に提出しておく必要があります。この事前確定届出給与の支払い期限が先ほどご紹介した、

  • 総会決定の日から1ヶ月
  • 決算から4ヶ月

のどちらか早い方までとなります。こちらの書類には事前確定届出給与の対象となる職務の執行を開始する日(定時株主総会の開催日など)と職務執行期間(定時株主総会の開催日から次の定時株主総会の開催日までの期間など)も記入する必要があります。つまり1年分の役員報酬をここで決定し、税務署に提出することになります。

合同会社の役員に賞与を出したい場合

合同会社の役員に賞与を出すことはできるのでしょうか。合同会社の役員でも賞与を出すことはできます。先ほどご紹介した事前確定届出給与の関する届出書を使い、あらかじめ定めて置いた時期に、税務署に提出しておいた金額を賞与として支払うことができます。そして支払った金額は損金として計上することができます。
代表社員などに関しても税法上は「役員」扱いされますので、賞与を出す際にはそのような手続きを事前に行なっていなければなりません。

合同会社が役員報酬で節税する際の注意点

合同会社として役員報酬で節税する場合、いくつか注意しなければならない点もあります。

社会保険料の負担が大きくなる

まず、個人から合同会社になったような場合、合同会社などの法人事業主は従業員の人数にかかわらず、社会保険の強制適用事業所となり、社会保険に加入する義務が発生しています。

個人事業の場合、社会保険の加入義務は5人以上の従業員を雇用していること、法律に定められた適用業種であることなどが定められていますが、法人の場合には規模や業種にかかわらず全て加入義務がありますので覚えておきましょう。

経費を作るために役員報酬を高額に設定する場合、法人税は節税することができますが個人として負担する社会保険料は大きな負担となるため注意しなければなりません。社会保険料の率は近年増加傾向にあり、健康保険料率9.9%、厚生年金保険料率18.3%と報酬に対し合計28.2%の負担が課せられています。

もちろんそのうちの半分は法人負担となりますが、役員報酬を使って節税する場合にはそれだけのキャッシュアウトが発生します。

法人税の税率と所得税率を比較

法人税の税率は近年減少傾向にあるため、役員報酬を高額に設定し節税対策を行うことが必ずしも有効でないケースもあります。

年度別・法人税率の推移
年度26年度27年度28年度30年度

税制改正の適用 

(改革前)(27年度改正)

(28年度改正)

法人税率25.50%23.90%23.40%23.20%
大法人向け法人事業税所得割
*地方法人特別税を含む
*年800万円超所得分の標準税率
7.20%6.00%3.60%3.60%
国・地方の法人実効税率34.62%32.11%29.97%29.74%

役員報酬に対してはもちろん所得税が課税されます。(その翌年には住民税も課せられます。)
この所得税は超過累進課税を採用しているため所得に応じて税率も高くなり、最高で45%の税率にもなります。

法人税の税率は近年国の施策により下げられており、法人税率と所得税率を比べても所得税率の方が高くなるというケースもあります。
その場合、所得税としてではなく法人税として支払った方がまだ税金は安くすみます。

まとめ:合同会社が役員報酬で節税する方法

今回の記事では合同会社が役員報酬で節税する方法についてご紹介しました。

合同会社の役員である代表社員や業務執行役員への支払いを損金とするためには報酬を定期同額給与、事前確定届出給与とする必要があります。それぞれ、役員報酬の変更時期にはそれぞれ縛りがあるので注意しましょう。

また役員報酬を使った節税対策では社会保険料の額が高騰すること、報酬額によっては法人税よりも税率が高くなることに注意しましょう。個別のご相談は専門の税理士や節税コンサルティングサービスをご利用ください。

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