「節税」のことも考えて中古マンション投資をお考えですか?中古マンション投資は節税効果を発揮する場合もありますが、注意しなければならない点もいくつかあります。今回の記事では節税を視野に入れて中古マンション投資をお考えの方のために、中古マンション投資を成功させるためのヒントや注意点などを解説していきます。
中古マンション投資で節税するメリット
不動産会社の営業マンなどから「中古マンション投資が節税になる」と聞いたことがあるかもしれません。ではなぜ中古マンション投資が節税につながるのでしょうか。その仕組みや中古マンション投資によるメリットについて解説していきます。中古マンション投資が節税になる理由としては大きく分けて、
- 中古物件の耐用年数
- 課税の繰延が可能
という点があります。
中古物件の耐用年数
まず中古物件の耐用年数についてです。不動産を購入した場合、それぞれ用途や構造によって「耐用年数」というものが定められています。購入した不動産はこの耐用年数によって按分し、毎年減価償却費として按分したものを経費として参入させることができます。
中古物件の場合、この耐用年数を新築のものと比べてより短くすることができると定められているのです。耐用年数が短いと、1年間で経費に入れることにできる金額は多くなります。
- 耐用年数:長→1年間の経費参入:少
- 耐用年数:短→1年間の経費参入:多
中古物件の耐用年数の計算方法
中古資産の耐用年数は、「その事業の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数」によることができますが、見積もりが困難である時は下記の簡便法により算定した年数によることもできます。
1.法定耐用年数の全部を経過した資産
その法定耐用年数の20%に相当する年数
2.法定耐用年数の一部を経過した資産
その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数
例えば、法定耐用年数が30年で、経過耐用年数が10年の中古資産の場合、
- 30年(法定耐用年数)−10年(経過耐用年数)=20年
- 10年(経過耐用年数)×20%=2年
- 20年+2年=22年
(No.5404 中古資産の耐用年数|国税庁)
この場合、10年が経過した資産の耐用年数は22年となります。
中古でなかった場合30年で按分しなければいけないものが、中古であることから22年で按分することができるようになります。耐用年数が短くなるので、毎年の減価償却費として計上する額も増加させることができます。
課税の繰延が可能
中古マンションの一つのメリットは「下がりづらい資産価値」という部分にあります。新築マンションの場合には購入した時点で価値が大幅に下落すると言われており、不動産の資産価値は築年数の前半に大幅に下落していきます。
しかし、そのような資産価値の下落がある程度落ち着いている中古マンションを購入した場合にはその後の資産価値の減少は緩やかなものとなります。場合によっては購入価格とほぼ同額で売却することができるケースもあります。
資産価値が変わらないものを購入、売却することができるのであれば、節税という観点からすると課税の繰延が可能となります。つまり課税される期間を選ぶことができるのです。
例えば、本来今年支払わなければならなかった税金を、売却の時期をずらすことでもう少し後に伸ばすことが可能になるのです。
中古マンション投資で想定すべきリスク
では続いて、中古マンション投資で想定しておかなければならないリスクについて解説していきます。
老朽化により将来売却できなくなることも
中古マンション投資による最も大きなリスクは、老朽化により将来マンションを売却できなくなることです。投資マンションを購入したとしても、将来様々な理由から売却を考えることもあるかと思います。売りたい時に直ぐに購入者が見つかれば良いのですが、なかなかそうとも限りません。
中古マンションは購入した時点である程度の築年数が経過したものとなっています。そのため注意しなければならないのはマンションの「老朽化」です。そのため購入するマンションの管理が行き届いているか、しっかりと確認しておく必要があります。
空室も目立ち、管理費の回収をできていないようなマンションであれば将来的に老朽化により入居者を集めることができず、また売却もできなくなってしまう可能性もあります。資産は持っているだけでも維持費が毎年発生するものですので注意しましょう。
中古物件は修繕費が多く発生
また不動産維持のためにかかる費用として大きな割合を占めるのが「修繕費」となります。この修繕費に関しては築年数に比例してかかる費用も大きくなりますので、中古物件の修繕費は必然的に高く発生する傾向があります。中古マンション投資による計画を立てる上では必ずこの修繕費も支出として発生することを頭に入れておきましょう。
この修繕費に関しては管理費とは基本的に異なり、管理費はマンションのいわゆる「共用部分」に関しての毎月の費用となります。中古マンションを購入する際にはこの将来発生する修繕費部分に対しての積み立ても行っておくことが望ましいです。
特に一度空室が発生した際には、次の入居者を入れるための修繕費としての支出が預かっている敷金だけでは賄えない場合もあるということを覚えておきましょう。
黒字が発生した際には税金が課税
不動産投資に関してはそもそも、家賃収入が発生するものとなります。購入時など費用が多額に発生した年に関しては赤字となり税金の還付も期待できますが、その後は毎年家賃収入が発生し続けますので、その収入が減価償却などの経費を上回る場合には所得として税金が課税されてしまいます。所得に対して課税される税金は法人の場合には法人税等、個人の場合には所得税と住民税が課税されます。
投資物件として良い物件であれば毎年収益を生み出すはずですので、節税対策として購入した中古マンションが逆に税金を生み出すということも大いにあり得ます。
売却時に発生する税金
中古物件の購入時には様々な支払いを経費にすることができ、その年の税金額は大きく抑えることができるかもしれません。しかしそれと同様に、中古マンションを売却する際には売却時に発生した所得に対して税金が課税されます。この税率は資産を保有していた時期によって異なり、保有期間が短ければ短期譲渡に、長ければ長期譲渡に該当しそれぞれの税率がかけられることになります。
中古マンションの売却時に発生する税金に関しては「分離課税」の対象となり、そのほかの所得とは分離して考えられ課税されます。つまり給与や事業収入などと合算されずに、売却時の所得単体で課税されることになります。
瑕疵担保責任の保証
不動産を購入した後に住宅の欠陥や不具合が見つかることがあります。これを瑕疵と言います。この瑕疵に対する保証責任を瑕疵担保責任と言います。
中古物件の場合、この瑕疵担保責任を負う期間は数ヶ月から1年程度ととても短く、その後はオーナー自身が修繕などの負担を負わなければなりません。中古マンションを購入する際にはこのような瑕疵がないかどうか、また瑕疵担保責任については何年保証されているのかをしっかりと確認しておきましょう。将来修繕責任を負うことにもなりかねません。
中古マンション投資の減価償却における注意点
中古マンション投資で節税をお考えの場合、「減価償却」に関していくつか注意しなければならない点があります。
土地代は減価償却できない
先ほどご紹介した中古マンションによる節税面での肝となる「減価償却費」に関してですが、中古マンションを購入する際には大きく分けて
- 土地代
- 建物代
- 税金
を支払うことになり、減価償却を行う対象となるのはこのうちの「建物代」にあたる部分となります。つまり中古マンションの大部分を占める土地代に関しては減価償却費として経費に入れることができないのです。
土地に関しては資産価値が下がらないという理由から減価償却は行わないこととされています。中古マンションを購入する際には契約書に記載されている支払い内容の内訳にも気をつけましょう。
もし契約書に土地と建物の割合が記載されていない場合には、土地に対して消費税は発生していませんので消費税から逆算して建物部分の価格を算定する方法や固定資産税評価額で案分するなどして建物部分の価格を把握する必要があります。
中古マンションを購入する場合には多くの場合、建物部分の価値は下がっていることが多いため、経費として計上できる割合が低いこともありますので注意しましょう。
マンションの減価償却の特徴
建物の法定耐用年数といってもその年数の幅は広く、簡易的なものであれば20年程度ですが、鉄筋コンクリート造りなどのしっかりしたものであれば耐用年数は47年とされています。多くのマンションは鉄筋コンクリート造であるため耐用年数は後者の47年と定められており、耐用年数が長いため毎年按分することができる減価償却費の額は少額になる可能性が高くなります。
もちろん中古物件ですとそこから更に耐用年数を先ほどの計算により短くしていくことができますが、元となる耐用年数は47年と非常に長いものであることを覚えておきましょう。
中古マンション投資で失敗しないためのポイント
ではここからは、中古マンション投資による節税を成功させるポイントについて解説していきます。中古マンション投資を成功させるためのポイントは大きく分けて
- 築年数を考慮した物件選び
- 売却も視野に入れたエリア選び
- 空室リスクを最小限に
- ローン条件の見極め
という部分になります。
築年数を考慮した物件選び
中古マンションを購入する際に重要となるのは「築年数」となります。
マンションは新築から築10年にかけて資産価値が大幅に下落していきます。その後、築11年〜20年にかけて資産価値の減少はやや緩やかになり、築21年〜30年以降にかけて資産価値の減少は更に緩やかになります。しかし築年数がある程度経過した物件になると今度は修繕費の支払額が増加するようになってきます。
中古マンションを購入する際にはこの資産価値の減少と修繕費の発生のバランスを考慮した物件選びをする必要があります。
売却も視野に入れたエリア選び
中古マンション購入の1番のリスクは売却できなくなることです。立地が悪く不便なところにある中古マンションなどはなかなか売却できず、マンション全体の入居者が少なくなってしまうと修繕に必要な管理費も集められなくなってしまいます。一度そのような状態に陥ってしまうと悪循環が始まりますので、よほど大きなテコ入れを行わない限り再びマンションに入居者が集まることは難しくなります。
空室リスクを最小限に
中古マンション投資はあくまでも投資ですので、投資としての価値に重きを置かなければなりません。
不動産投資で注意しなければならないのは空室リスクです。マンションに空室ができてしまうと、新たな入居者が決まるまでの間収入が無くなりますし、その間も固定資産税や諸々経費は発生し続けます。
空室リスクを最小限に抑えるためには、物件選びをする際にファミリー向けよりも、ワンルームの方が良いと言われています。ファミリー向けは一度入居してしまえば、入居期間は一般的に長くなるのですが、なかなか新規の入居者を見つけづらい層と言えます。
ワンルームであれば学生や単身赴任など様々な理由で移り変わりがある層が対象となりますので、空室リスクを比較的抑えることができます。もちろん空室リスクについて考える場合には立地における利便性も考慮する必要も出てきます。
ワンルームマンションでの投資について、詳しくは下記の記事で解説しています。
ローン条件の見極め
ローンを組んで中古マンション投資を行う場合、返済期間や金利条件を見誤ると後々苦労することがあります。空室ができた際の家賃保証などが条件としてある契約もありますが、その場合には金利が非常に高くなっている場合もあります。この金利によって毎月のローン返済額は数万円程度変わることもありますので、ローンはできるだけ好条件で受けられるように努力しましょう。
まとめ:中古マンション投資における節税のポイント
今回の記事では中古マンション投資における節税のポイントについて解説しました。
中古マンション投資は減価償却の耐用年数が新築のものと比べ短いため節税効果がると言われています。また資産価値が下がりづらい物件であれば課税の繰延も可能です。
ただし中古であるが故の空室リスクやかさむ修繕費など、様々なリスクや注意点もあります。
中古マンション投資による節税をお考えの場合には専門の税理士や節税コンサルティングサービスをご利用ください。